ようやく羽化の撮影に成功しました。 もちろん、校内放送で全校の児童に見せましたよ。 さなぎから蝶が出てきた瞬間、どの教室からも大きな歓声と拍手が聞こえてきました。 命の営みの神秘を子どもたちと共有した一瞬でした。
さて、今日は幼虫の写真ばかりです。 最後にまとめて載せますので、苦手な方は見ないでくださいね。 いや、でも、見て欲しい。 とてもかわいいんですよ。 いもむしのイメージが変わるかも。
成虫になったオオムラサキは、7月から8月にかけて交尾し卵を産みます。 卵は1?くらいかな? 肉眼ではっきり見えます。 薄緑色で手まりのように緑の筋が入って、とてもきれいです。 残念ながら写真がありません。
有精卵の卵は2週間くらいで孵化します。 だんだん色が茶色っぽくなってくるので、生きていることがわかるのですよ。 幸運にも孵化は2回見ることができました。 孵化したばかりの幼虫は、マッチ棒の先みたいに頭だけが大きくて体は透き通るようにはかなげです。
でもすぐに緑色の体になって葉っぱと一体化してしまいます。
11月、エノキが落葉する頃になると、体は枯れた榎の葉っぱの色になります。 冬眠させるため、子どもたちと落ち葉を一枚一枚はぐって探したことがありますが、見事な保護色で、うっかりすると見逃してしまいます。
越冬に成功すれば、3月末には再びエノキに登ってきて、木のこぶのようにへばりついて新芽の出るのを待っています。 そして、エノキの葉っぱをもりもり食べて体長5センチくらいになるまで成長するのです。そして6月にはさなぎになって6月中旬から7月上旬に次々と羽化します。 オスの羽化のほうが少し早く、メスは遅れて出てきます。それまでオスを生かしておかなければ産卵は望めません。
飼育のなかで一番難しかったのは越冬でした。 1年目に孵化した幼虫は、管理が悪くすべて死んでしまいました。 4年目に再び越冬に挑戦しました。 できるだけ自然に近い状態ならうまくいくかと思い、腐葉土を入れた鉢に大量のエノキの葉っぱを敷き詰めて、置き場所も何カ所かに分けて、万全の体制で臨んだはずなのですが、生き残ったのは数匹だったようです。(わたしはこの結果を見ずに転勤しましたのでー) 市販の腐葉土が殺菌されていたからか、もらったエノキの葉に殺虫剤がついていたからか、水分管理がうまくいかなかったのか、原因となることはいくつか考えられましたが、検証しないままでわたしのオオムラサキ飼育は終わりました。
冷蔵庫で温度管理をすればうまくいくようです。 でも、学校という時間も場所も限られたところで、子どもたちにもできる形で飼育する体制を確立したかったので、あえて戸外で越冬させる方法をとりました。
全滅した幼虫の代わりはどうしたかー。 2年目、3年目は、どこかで無事に越冬した幼虫をいただきました。 それは県の職員の方の世話で、どこか県外から手に入れているようでした。
さて、オオムラサキを飼い始めたのは、ゆくゆくは放蝶して、野生のオオムラサキを増やしていこうというねらいからでした。 しかし、それには大きな問題がありました。 県外のオオムラサキと石鎚山系のオオムラサキとではDNAが違うという問題です。 学芸員の方からそれを指摘され、 わたしたちは安易な放蝶が本来の自然を攪乱することを知りました。 飼育方法を確立させ、石鎚山系から採取した幼虫を保護するのであればよいのですが、ただでさえ少ないオオムラサキをいい加減に飼育するのは許されません。 多分、K小学校ではもう飼育していないと思います。
先日、新聞に、安易な魚の放流や放蝶、放鳥を警告する記事が載っていました。 これも多分本来の生態系を乱すおそれがあるからだと思います。 オオムラサキの飼育も放蝶に至らないでよかったのだと思っています。 ですから、
自然は、こわしてしまえば元通りにするのは本当に難しいということを考えさせられます。 簡単に人工的に増やしてのに放てばいいというわけではないのです。 まずはこわさないこと、これが一番大切だと思います。 生き物ばかりでなく植物でも、安易に外来種を野に蒔いたり、逆にきれいだ、珍しいということで採取しすぎたりしないことです。 せめて、こんな小さなことからでも実行していきたい、そう思います。
では、幼虫の写真をどうぞ。
夏ー孵化したばかりの幼虫。 葉っぱの先にいます。
秋ー冬眠前の幼虫。 枯れ葉にとけ込んでいます。
春、 エノキの葉っぱを食べる幼虫。 枝をしっかりつかんで、葉っぱもつかんで・・・・かわいいでしょう?
背中を見るとこんなのです。 とげとげがあって強そうです。 アゲハの幼虫などと比べても、あまりグロテスクではありません。