とだ九条の会blog

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憲法から見る「後期高齢者医療制度」(3)--「後期高齢者医療制度」がつくられた目的は

2008年01月26日 | 国際・政治
昨日に引き続き「後期高齢者医療制度」について「医療と憲法」を考えてみたいと思います。

政府は、75歳以上を他の世代と区切って「後期高齢者医療制度」をつくる理由として、これらの高齢者が「心身の機能が低下し、入院も増える」ことなどをあげています。しかし、歳をとれば健康を害する場合も多くなることは誰も同じで当然です。「医療費がかかる」といって高齢者を追い出す姿勢は「姥捨て山」と同じ発想だと批判されても仕方ありません。

こうした理不尽な制度改悪を強く求めてきたのは誰かというと、それは財界・大企業です。公的医療保険は、国民(保険料と窓口負担)と事業主(企業の保険料)と公費(国と地方)で運営されていますが、特に財界は「企業の税・保険料負担を減らすため、社会保障給付費を切り縮めよ」と政府に迫り、①高齢者医療を現役世代から分離すること、②高齢者の医療費負担を抜本的に増やすこと、③診療報酬を「包括払い」にかえ、保険給付を制限すること--などを要求していました。2020年頃には大量に退職した団塊世代が75歳以上になる頃です。そうなっても国の財政負担と大企業の保険料負担が増えない仕組みを今のうちから作っておこうというのが、政府と財界の狙いなのです。

政府・財界は「社会保障給付費を抑制しないと、財界や経済が大変なことになる」と言って医療・介護・年金・福祉など社会保障のあらゆる分野で、国民に負担増と給付削減を押しつけてきました。「後期高齢者医療制度」もその一環です。
「財政難だから仕方がない」--本当にそうでしょうか。日本の社会保障給付費はGDP(国内総生産)の17.4%と、イギリス(22.4%)、フランス(28.5%)、ドイツ(28.8%)と比較しても大きく立ち遅れた状況であり、日本の経済全体から見れば、社会保障を充実させていく力は十分にあるわけです。
日本企業の税・保険料負担は、これらヨーロッパ諸国の6~7割に過ぎません。自公政権が推し進めてきた大企業の法人税の大幅軽減や所得税の最高税率の引き下げ、株取得への優遇税制など、大企業への減税をあらため、10年前の水準に戻せば、7兆円の財源が生まれ、さらに聖域としている軍事費や大型公共事業へのムダ遣いをあらためれば財源は十分あると言われています。
また逆に、社会保障を充実させることによって、雇用も増やせられれば、経済の安定成長も図られるでしょう。
政府は、こうした将来的な財源確保のために、福祉目的税として「消費税」の大増税を企んでいますが、低所得者ほど重くのしかかる消費税増税などとんでもないことです。
(つづく)


【参考】(1)『10問10答 とことんわかる後期高齢者医療制度』(日本共産党中央委員会出版局刊、95円+税)
(2)『月刊憲法運動2007年12月号』(憲法会議刊、381円+税)の「医療と憲法」(全日本民主医療機関連合会副会長・原和人著)より

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憲法から見る「後期高齢者医療制度」(2)--「後期高齢者医療制度」が導入されるとどうなるか

2008年01月25日 | 国際・政治
昨日に引き続き「後期高齢者医療制度」について「医療と憲法」を考えてみたいと思います。

「後期高齢者医療制度」が導入されるとどうなるか--それは、前述したように今まで保険料を直接支払っていなかった扶養家族であった人も含めて、全ての「後期高齢者」が否応なしに保険料を徴収され、それも多くが年金から自動的(強制的)に天引きされるということ。そして受けることのできる医療も今まで通りとはいかないで、制限されるということですが、その他に、次のようなことが予想されてます。

まず第一に、保険料が将来に渡って値上げが行われるていくということ。「後期高齢者医療保険料」は2年ごとの改定が決まっていて、医療給付額の増加と「後期高齢者」の人口増にもとづいて保険料が値上げされる仕組みになっているため、たとえ医療給付額が増えなかったとしても保険料は増額される見通しです。日本の高齢化が進む限り、際限なく保険料が引き上げられる制度になっています。

第二に、この制度に便乗して「前期高齢者(65歳~74歳)」の国保料(税)も「年金天引き」とする動きもあるということです。そうなれば、ただでさえ国保料(税)が値上げされて支払えずに苦しんでいる人々にとっては分納相談もできず、高齢者の生存権を脅かしかねない状況になります。

第三に、保険料を1年以上滞納した場合、「悪質滞納者」とされて保険証を取り上げられ、代わりに「資格証明書」が発行されることになりますが、そうなると受診した病院の窓口で医療費を一旦全額(十割)支払わなければなりません。現在75歳以上の高齢者は、老人保健制度の対象者として国が医療に責任を持つことになっているため、国の公費負担医療を受けている被爆者や結核患者などと同じく保険証の取り上げが禁止されています。しかし、老人保健制度が廃止され「後期高齢者医療制度」が導入されると75歳以上の高齢者からも保険証の取り上げが行われることになるわけです。現在でも保険証を取り上げられたために病院にもかかれずに重症化し、場合によっては死亡するという事件も多発していますが、こうした事態が一層進むことが予測されます。

このように「後期高齢者医療制度」の導入は、国が本来果たすべき責任を高齢者の「自己責任」に転嫁して、全ての人に必要な医療を保険で給付するという「国民皆保険」を根底から掘り崩すものとなるだけに、絶対に阻止しなければなりません。(つづく)

【参考】(1)『10問10答 とことんわかる後期高齢者医療制度』(日本共産党中央委員会出版局刊、95円+税)
(2)『月刊憲法運動2007年12月号』(憲法会議刊、381円+税)の「医療と憲法」(全日本民主医療機関連合会副会長・原和人著)より


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憲法から見る「後期高齢者医療制度」(1)--「後期高齢者医療制度」とは

2008年01月24日 | 国際・政治
2008年4月から「後期高齢者医療制度」が導入されようとしています。
この「後期高齢者医療制度」は、2006年、自民・公明両党が強行した「医療改革」法で導入が決められたもの。
「後期高齢者」とは75歳以上の高齢者のことで、全国に1300万人いると言われています。これらの人々は、現在、生活状況や所得に応じて様々な医療保険に加入しています。たとえば、①年金生活者の多くは、「国民健康保険(国保)」、②低所得のために、サラリーマンや公務員の「扶養家族」として「組合健保」や「政管健保」などの被用者保険に入っている人、③自営業や農業を営んでいる人は「国保」、高齢者でも企業に雇用されている場合は「健保」…、といった具合です。
しかし、「後期高齢者医療制度」が導入されると、75歳以上の高齢者は、それまで加入していた「国保」や「健保」を脱退させられ、新たにできる「後期高齢者だけの医療保険」に組み入れられることになります。

現行制度との大きな違いは、大きく2つ指摘できます。
第一に、保険料が年金から「天引き」されるというもの。年金額が月1万5千円以上の人は、「年金天引き」となります。保険料は都道府県ごとに決められるので、全国同一ではないのですが、政府は全国平均で年7万4千4百円、月6千2百円と説明してきました。既に介護保険料が天引きされており、これは全国平均月4千90円ですから、政府がいう平均でも合わせて1万円強が「天引き」となり、年金額は大幅に減少する格好です。そればかりか、各都道府県毎の発表ではこの政府試算額よりも高額となっていて東京都で年10万円を超えるというのです。同時に、新制度ではこれまで家族に扶養されていた低所得の高齢者も含め、全ての「後期高齢者」から保険料を徴収できるシステムだということです。

第二に、「後期高齢者」の受ける医療が大幅に制限されるということです。これが実施されると、75歳以上の人はそれ以下の人と比べて、受ける医療の内容も制限され“差別”されるようになるというものです。なぜかというと、75歳以上の人に対する医療と、それ以下の人に対する医療の診療報酬(医療の値段)が「別建て」となっているからです。「後期高齢者」の診療報酬は「包括払い(定額制)」とされ、保健医療に上限がつけられるのです。つまり「○○病の治療費は○○円」「入院○○日は○○円」などと保険のきく医療に上限が設定され、それ以上の治療を行う病院は赤字になってしまうことから、「後期高齢者」の検査・投薬・手術などの制限や入院日数の短縮および早期退院を促進して医療費を削ろうというわけです。
このように「後期高齢者医療制度」とは、75歳以上の人を他の医療保険から切り離し、保険料の取り立ては強化しながら、医療内容には格差を付けることを狙った全くひどいものです。(つづく)

【参考】(1)『10問10答 とことんわかる後期高齢者医療制度』(日本共産党中央委員会出版局刊、95円+税)
(2)『月刊憲法運動2007年12月号』(憲法会議刊、381円+税)の「医療と憲法」(全日本民主医療機関連合会副会長・原和人著)より


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小沢民主代表の「派兵恒久法」についての根本的な問題

2008年01月23日 | 国際・政治
参院で否決された「新テロ特措法」が衆院で3分の2の多数で再議決された時、民主党の対応に不可解なことが起こりました。民主党の小沢一郎代表が採決直前に姿を消し、棄権したことが世論の批判を受けていますが、同時に民主党が「対案」として提出した「アフガン復興支援特措法案」で与党案よりも危険な自衛隊の海外への「派兵恒久法」の整備を掲げ、与党に“助け舟”の余地を残したことです。
広島市立大学広島平和研究所長の浅井基文氏は、このことに関し、「民主党案で根本的に問題なのは、国連の安保理決議さえあれば、それに自衛隊を参加させる事はいっさい問題がない」としている点であると批判しています。
「国連が容認する軍事行動ならば、日本国憲法が禁じる国権の行使としての武力行使ではなく、違憲ではない」--そんな論理の出発点自体がそもそも間違っていると指摘しています。
その上、アフガニスタンで展開されている「国際治安支援部隊(ISAF)」は、実際NATO(北大西洋条約機構)が派兵の用意があるからと安保理に要請決議を出したらどうかと誘い水を出して、安保理がそれに乗ったもので、「国連軍」でも何でもありません。
浅井氏は「小沢氏の議論は、ある意味、自民党以上に日本の主権を考えないもの」であり、「たとえ国連安保理決議に基づく行動であっても、9条は国際紛争を解決する手段として武力行使は許していない。9条を生かした外交こそ今必要」と語っています。


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「君が代」不起立者氏名収集は“不適”と答申--神奈川県個人情報保護審で

2008年01月22日 | 国際・政治
「君が代」斉唱時に教職員が起立しなかったとして県教委が憲法に反して教職員の氏名を調査するなど、各地で起こっている事件について、神奈川でも動きがありましたのでご紹介します。

神奈川県下の高等学校や養護学校など県立学校での入学式などで、「君が代」斉唱時に起立しなかった教職員の氏名を県教育委員会が収集しているという問題について、神奈川県個人情報保護審議会(兼子仁会長)が1月17日の審議で答申をまとめ、収集を行うことは「不適」との見解を示しました。
この問題については、2007年10月24日に、高校の教職員からの異議申し立てを受けた神奈川県個人情報保護審査会(矢口俊昭会長)が、県教委が収集した情報は県個人情報保護条例で原則取り扱い禁止とされている思想信条に該当するとの判断を示す答申を出しましたが、今回の審議会答申はこれに続くものです。
神奈川県個人情報保護審の答申では、不起立について、憲法19条に定める「思想及び良心の自由」の保障と深く関係していると指摘。「(氏名収集の)正当性及び必要性を積極的に認め、諮問内容を適当とする答申を行うことはなしがたい」と結論付けました。しかし、同時に「最終的にいかなる職権行使をするかは、実施機関である県教委に条例上委ねられている」ともしています。
神奈川県教委は、氏名情報の収集を正当化するため、県個人情報保護条例第6条のただし書きなどを根拠に同審議会に諮問していましたが、認められなかったとのことです。


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