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『戦争と性~韓国で「慰安婦」と向き合う~』を読んで(2)

2008年03月09日 | 国際・政治
昨日に引き続き、『戦争と性~韓国で「慰安婦」と向き合う~』の感想を記します。

同書の特徴である「戦場の兵士のセクシュアリティ(性と生)」や「戦前の『性』状況」についての解明は、一つは高校での授業の様子を紹介することで、試みられていると感じました。「事実を知ると、生徒は本質を見ぬくものです」--生徒たちのこの“事実”を知ったときの素直な感想の数々はそれだけで読む者の心に迫るものがありますが、高校授業で、この問題を取り上げたということに、まず感動しました。さらに授業のねらいが、「長い間、隠されてきた『慰安婦』制度という日本の戦争犯罪の事実を明らかにして、侵略戦争の本質と女性の性が人権であるということを学びとること」と述べ、次のように語る教師の姿勢には敬服するばかりです。
……「家族や故郷から引き離され、生きて帰るあてもない戦場に人を殺すために放たれた兵士たちが、人間性を喪失していく姿。それをなだめすかすためにあてがわれた『性的奴隷』としての女性たちの姿。戦争の中にあらわれた『性』の野蛮な暴力的姿。これはたんに兵士の性は暴力的な強姦の性だと告発するだけではすまない。人間の性をこのように歪め野蛮にした国家の構造に迫らなければ、ほんものの学習にならないと思ったのです。この授業の大事なところは、『戦争をしてはいけない』とか『レイプはいけない』とかの結論だけを教える授業ではなく、なぜ日本軍が『慰安婦』制度をつくったのか、なぜ植民地女性の性をここまで残忍に道具にできたのか、戦争体制に国民の『性』がどのように利用されていったか、その構造を学ぶところにあると思います。そしてそういう構造にとって都合のよい性の二重基準(ダブルスタンダード)--男の性とは、女の性とは……は、いまも根強く残っているのではないか、ということを生徒たちとともに考えたいと思うのです」と。

「戦場の兵士のセクシュアリティ(性と生)」や「戦前の『性』状況」について言及したい二つ目は、第3章の「文学にみる“戦争と性”」で「田村泰次郎が描いた日本軍『慰安婦』」についての解明(高柳氏)と、第4章での「『慰安婦』問題と『冬ソナ』『ディープ・ラブ』『愛ルケ』現象」という現代の小説やドラマなど文化面についての解明(岩本氏)が“圧巻”だと思ったことです。

田村泰次郎の『蝗(いなご)』の一節では、田村泰次郎の「慰安婦」の存在を掘り下げきれてはいない限界は指摘しつつも、「戦後まもない時期に、日本兵と『慰安婦』のかかわりを題材に『戦争と性』を活写し、日本帝国軍隊の実態を赤裸々に描いた、希有な作家」として評価しながら、主人公・原田軍曹をとおして描いた「戦場の兵士のセクシュアリティ(性と生)」は、現存する資料が消却され隠滅されている中で、大変リアルに考えさせられる紹介となっています。
また、「『慰安婦』問題と『冬ソナ』『ディープ・ラブ』『愛ルケ』現象」という現代の小説やドラマなど文化面についての解明では、『「冬のソナタ」から見えてくるもの』で、「韓流ブームでも『慰安婦』問題と結びつけて語られることがないのはなぜなのか」というテーマに迫ったことに言及しつつ、岩本氏は、その要因の一つが「日本社会の歴史認識」の問題であり、二つ目が「日本社会における『性』の後進性」とした点は大変示唆に富んだ指摘だと感じました。
(つづく)


【出典】『戦争と性~韓国で「慰安婦」と向き合う~』(高柳美知子・岩本正光:編著、企画:日朝協会・“人間と性”教育研究所、かもがわ出版刊、1500円+税)

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