tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ジョブ型雇用の二大分野、三番目、四番目も?

2022年08月30日 21時53分29秒 | 労働問題
大きな掛け声で始まった「働き方改革」も最近はあまり言われなくなりました。

しかし人材育成に長い時間やコストをかけたくない企業もあるのでしょうか、「即戦力」への要求は結構強いようですし、即戦力が獲得できれば、「働き方改革」の中の目玉でもある「ジョブ型雇用・賃金」というのも可能性が出て来るのでしょう。

所で「即戦力」と言っても、始めから即戦力という人はいないので、どこかで経験を積んで初めて即戦力になるのですから、いわば、他所が時間もコストもかけた成果を、引き抜いて来るという事になります。

今の日本の労働市場では、それはそう簡単ではないでしょう。だからこそ、政府がいくら否定しても、新卒一括採用という「就活」の世界は無くならないのです。

ところで、日本でもジョブ型賃金が一般的という労働市場は疾うに存在しています。それは非正規従業員の世界です。

この世界は基本的には企業別にジョブとしての差の少ない単純作業から始まったものですが、最近ではかなり高度な熟練を要するものまで広がって来ているようです。
そのせいで、非正規従業員が4割近くになっているのでしょうが、基幹職として期待される従業員となりますと、そう単純ではありません。

所が今日の現実の状況を見てみますと、企業内で徹底した教育訓練を受け、一専多能など高度専門能力を身につけ、会社の必須の人材として活躍してきた、まさに企業内育成の立派な成果と言えるような多くの高度人材の処遇に、とんだ間違いを犯している企業が結構あるのではないかという気がしています。

もうお気づきの方も多いともいますが、ベテラン基幹社員の定年という問題です。

従来の年功的色の残る賃金制度と定年制の組み合わせの中では、この問題は結構深刻です。
企業にとっても深刻かもしれませんが、育成した結果の従業員にとっても深刻なようです。

本来年功賃金は、独身から結婚、子育てという従業員の生活の保障をベースにしたもので、仕事とは直接の関係はないのです。その結果、若い時は仕事の価値より低い賃金、年齢が高くなると仕事の価値より高い賃金で定年という設計です。

定年の時が一番高い賃金で、55歳定年、平均余命はもう長くないから、それは退職一時金
で、すべてOKという筈だったのですが、平均寿命80歳の今日では定年後が長すぎます。
60歳、65歳、70歳まで元気で働けるのですが、55歳まで上がってきた賃金では、割高で雇えないとなります。

結果は、定年後は一律3割カットの賃金で如何でしょうという様な事です。再雇用の場合は正社員ではありません。仕事も楽な仕事に変えることも良くあります。

しかし、定年再雇用の人は、実は企業が時間とコストをかけて育成した高度人材なのです。こういう制度にしておくと、中国や韓国の企業から高給でスカウトされて、優秀な「即戦力」が来てくれたと外国を喜ばせ、日本経済の衰退を招く結果になるようです。

日本企業は人材育成には熱心ですが、人材の活用は大変下手だったと言えそうです。

こうした失敗を続けないためにも、定年再雇用の人材は、「賃金一律何割下げ」などという合理性のない事ではなく、まさに高度人材用のジョブ型賃金をきちんと設計し、企業として、育成にかけたコストは確り収穫するようにすべきではないでしょうか。

雇用ポートフォリオの中の「定年再雇用者」は、「ジョブ型賃金」適用の重要な第二分野です。第三、第四の分野も出てきそうですね。