成長と分配の関係を理解しよう:2
前回、付加価値は生産に参加した労働と資本に分配され、付加価値の中の労働への分配つまり人件費の割合が「労働分配率」であるという所まで来ました。
「現在の分配が将来の成長を決める」というのがこの分析のテーマですから、まず問題は「労働分配率と経済成長(企業成長)との関係」という事になります。
この問題は概念的には比較的簡単で「労働分配率と経済成長率は反比例関係にある」というものです。
例えば、労働分配率100%と仮定すれば、資本は増えません。ところが、経済成長というのは、第1次産業革命から最近の第4次産業革命へという形で連続して起こる技術革新によって可能になります。
ですから資本(蓄積)が増えなければ、企業も経済も成長しません。今も運搬手段は馬車で、着るものは紡績業発達以前のホームメイドの布製という事になります。
一方、労働分配率が低ければその分、資本蓄積が進みますから、技術革新も起きや少なり、経済成長率は加速されるという理屈です。
現実問題でも、中世でも労働分配率ゼロはありませんから(農奴や作男などは「現物支給(食事・衣服)」が労働分配率に当たるでしょう。
現に資本主義の初期には「賃金基金説」などというのがあって、賃金は一定のファンドを決めておいて、あとは全部資本家や事業主の儲け(資本費)などという考え方もかなり一般的だったようです。マルクス主義が生まれたのも当然かもしれません。
しかし、資本主義は十分柔軟性を持っていたようで、社会主義の良い所を取り入れ、労働組合運動も認め、福祉社会の概念も取り入れるようになっています。
所で、技術革新も、資本がやるのではありません、「人間」がやるのです。人間が考えて初めてできます。人間への投資は決定的に重要で、これは人件費に分類されるのです。そのほかに研究者や生産者が使う設備投資が必要です
こうして、労働分配率をどう決めるかというのは、労働経済学の最大の課題という事になっているようです。
「適正」労働分配率を検討するには、環境条件についての労使の一致した理解が必須で、その上に、企業成長についての目標も共有される必要があります。将来の成長目標に違いがあれば、より多くの設備などが必要になり、それは現状の労働分配率の数字に影響を与えるはずです。
つまり、原則はこうなのです。技術革新を速め、より高い成長を求めるのであれば、より大きな資本が必要になりますから、労働分配率は低めでなければならないでしょう。あえて高成長を求めないのであれば、労働分配率は高めでも許容されるでしょう。
労働分配率と成長関係は、基本的には以上のようなものです。しかしこれは理論であって、現実は多様です。たとえばJDIは自分では資本蓄積の能力はありませんが、海外の資本を入れて成長を達成しようとしているのでしょう。
しかし、そうした外部資本は、その後の成長でうまく付加価値が増えて、元利返済か株主配当の増額などの方策でお返しができなければなりまあせん。 経済には只の昼飯はないのです。
労働分配率の問題は、付加価値総額を労使でどう分けるかという分配問題ですが、もう一つ問題になる分配問題があります。これは人件費とか資本費の、それぞれの分配問題です。資本費ですと、配当と内部留保にどう分けるか、モノ言う株主は通常強い主張を持っています。
人件費、賃金の分配は社長の給料から新入社員の初任給、非正規労働者の時給まで、分配の中身が問題です。
そしてこれは国の税制とも関係ありますが、「格差社会」という問題と直接につながり、社会システムとか経営スタイル、能力評価の問題などとも絡んで、人間心理、社会心理の側面から経済や企業の成長、ひいては国際関係までに大きく影響します。
次回、格差という視点から分配と成長の関係を見てみましょう。
前回、付加価値は生産に参加した労働と資本に分配され、付加価値の中の労働への分配つまり人件費の割合が「労働分配率」であるという所まで来ました。
「現在の分配が将来の成長を決める」というのがこの分析のテーマですから、まず問題は「労働分配率と経済成長(企業成長)との関係」という事になります。
この問題は概念的には比較的簡単で「労働分配率と経済成長率は反比例関係にある」というものです。
例えば、労働分配率100%と仮定すれば、資本は増えません。ところが、経済成長というのは、第1次産業革命から最近の第4次産業革命へという形で連続して起こる技術革新によって可能になります。
ですから資本(蓄積)が増えなければ、企業も経済も成長しません。今も運搬手段は馬車で、着るものは紡績業発達以前のホームメイドの布製という事になります。
一方、労働分配率が低ければその分、資本蓄積が進みますから、技術革新も起きや少なり、経済成長率は加速されるという理屈です。
現実問題でも、中世でも労働分配率ゼロはありませんから(農奴や作男などは「現物支給(食事・衣服)」が労働分配率に当たるでしょう。
現に資本主義の初期には「賃金基金説」などというのがあって、賃金は一定のファンドを決めておいて、あとは全部資本家や事業主の儲け(資本費)などという考え方もかなり一般的だったようです。マルクス主義が生まれたのも当然かもしれません。
しかし、資本主義は十分柔軟性を持っていたようで、社会主義の良い所を取り入れ、労働組合運動も認め、福祉社会の概念も取り入れるようになっています。
所で、技術革新も、資本がやるのではありません、「人間」がやるのです。人間が考えて初めてできます。人間への投資は決定的に重要で、これは人件費に分類されるのです。そのほかに研究者や生産者が使う設備投資が必要です
こうして、労働分配率をどう決めるかというのは、労働経済学の最大の課題という事になっているようです。
「適正」労働分配率を検討するには、環境条件についての労使の一致した理解が必須で、その上に、企業成長についての目標も共有される必要があります。将来の成長目標に違いがあれば、より多くの設備などが必要になり、それは現状の労働分配率の数字に影響を与えるはずです。
つまり、原則はこうなのです。技術革新を速め、より高い成長を求めるのであれば、より大きな資本が必要になりますから、労働分配率は低めでなければならないでしょう。あえて高成長を求めないのであれば、労働分配率は高めでも許容されるでしょう。
労働分配率と成長関係は、基本的には以上のようなものです。しかしこれは理論であって、現実は多様です。たとえばJDIは自分では資本蓄積の能力はありませんが、海外の資本を入れて成長を達成しようとしているのでしょう。
しかし、そうした外部資本は、その後の成長でうまく付加価値が増えて、元利返済か株主配当の増額などの方策でお返しができなければなりまあせん。 経済には只の昼飯はないのです。
労働分配率の問題は、付加価値総額を労使でどう分けるかという分配問題ですが、もう一つ問題になる分配問題があります。これは人件費とか資本費の、それぞれの分配問題です。資本費ですと、配当と内部留保にどう分けるか、モノ言う株主は通常強い主張を持っています。
人件費、賃金の分配は社長の給料から新入社員の初任給、非正規労働者の時給まで、分配の中身が問題です。
そしてこれは国の税制とも関係ありますが、「格差社会」という問題と直接につながり、社会システムとか経営スタイル、能力評価の問題などとも絡んで、人間心理、社会心理の側面から経済や企業の成長、ひいては国際関係までに大きく影響します。
次回、格差という視点から分配と成長の関係を見てみましょう。