tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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毎月勤労統計:その後の賃金総額の動きを見る

2019年11月28日 23時37分26秒 | 労働
毎月勤労統計:その後の賃金総額の動きを見る
 伝統ある日本の官庁統計の信頼を揺るがせた毎月勤労統計の集計ミスからそれなりの月日がたち、去る10月に、その後あった大阪府での不適切な処理の修正も終わったという事で(厚労省報告)、このあたりで賃金の動きを一度確認し置こうと、久しぶりに毎月勤労統計を見てみました。

 この3、4年、日本経済はいわば高原状態で、ここにきて、国際情勢の混乱から多少の後退の様相を見せていますが、賃金給与の動きの方も、何か殆ど目立つ動きがないようです。
 昨年春、このブログで賃金動向の 変調に気づいたのですが 、それは集計ミスとその修正によるものと分かり、国会でも思惑を交えた騒動になりましたが、一応修正ができてからの動きで見れば、この所の日本の賃金動向は異常といえるぐらいの定常状態のようです。

毎月勤労統計で、時系列の賃金の動きを見るのに使われる賃金指数、ここでは、賃金総額(ボーナス、残業代含む)と所定内の実質値の賃金指数を見ていますが、2015年を100として、
2016年108
2017年106
2018年108
という状態で、最近の月別の動きを見ますと下図のような動きです。

最近の賃金の推移(厚労省:毎月勤労統計、実質賃金指数)

 賃金総額(青色)はボーナス月は多くなりますが、所定内(茶色)はほとんど安定状態、昨年9月が84.0、今年の9月が84.2です。
 賃金総額はボーナス月が多くなりますからその分が高くなっているという事です。

 所で、この間の実質経済成長率は平均1%程度ありますから、実質賃金ももう少し上がってもいいかなという感じはしますが、増加が目立つのは企業の内部留保というのが現状のようです。

 その増加の行き先は、海外企業のM&A が多いようで、国内ではJDIの資金調達もままならないようです。何かちぐはぐな様子に見えてしまうのですが、企業にしてみれば、「いつ何が起きるか解らない」という恐怖感があるのでしょうか。

 日本の賃金制度は「定期昇給」を内蔵していますので、定常状態の中でも若い人たち(正社員)の賃金は、定期昇給分だけは毎年上がっていくのです。
 春闘の賃上げ集計にはこの分も「賃上げ」として入ってくるので、若い人たちの賃金は定常状態の中でも毎年上がるということが、こうした状態と関係あるのかもしれません。

 かつてのように、春闘で労使が、ぎりぎりの所まで経済論議、賃金論議を戦わすといった雰囲気は、このところ余り見られませんが、来春闘あたりでは、もう少し、本格的論争があってもいいような気もするところです。