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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

会社の継続と代表者の選定を証する書面の押印

2019-09-09 20:26:18 | 会社法(改正商法等)
 清算株式会社が会社継続をすることを決議し,同時に代表取締役を選定する場合に関しての取扱いであるが・・。

 取締役会設置会社を選択する場合には,会社継続が効力を生じた後,取締役会決議によって,代表取締役を選定することになるので,商業登記規則第61条第6項第3号の適用があり,取締役会議事録には,出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑につき,市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。

 この場合,文理解釈としては,同項ただし書の適用はないが,いわゆる善解理論によれば,当該印鑑と従前の代表清算人が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでないと取り扱って差し支えないと考えるべきであろう。

 取締役会設置会社でない株式会社を選択する場合に,取締役の互選によって代表取締役を定めたときも同様である。

 ところで,取締役会設置会社でない株式会社を選択する場合に,株主総会又は種類株主総会の決議によって代表取締役を定めたときは,如何。

 この場合・・・会社法施行の際の手当漏れである。商業登記規則の改正もなく,通達にも何の言及もない。

 商業登記規則第61条第6項第1号を素直に読めば,この場合に直接適用がないことは明らかである。

 代表取締役を選定したことを証する書面の真正担保の要請から同号の類推適用の余地はあろうと思われるが,そうであれば,もちろん同項ただし書の類推適用も認め,代表清算人の登記所届出印が押印されていればこの限りでないとされるべきであろう。

 そもそも,昭和40年代に,商業登記規則第61条第6項の規定が設けられた理由は,不実の登記の防止のためであったからであり,代表清算人の登記所届出印の押印があれば,真正は担保されるからである。

 しかしながら,一部の登記所においては,代表取締役の選定を証する株主総会議事録に代表清算人の登記所届出印が押印されているにもかかわらず,補正(個人の実印を押印して印鑑証明書を添付せよ)という不条理な取扱いをしているようである。

 商業登記制度の原理原則を理解せず,規則の字面に拘泥しているようで,何とも・・・。

 また,同号には「議長」とあることから,議長が存しないと,議長の押印がないので,代表取締役を選定したことを証する書面としては不適格とされている云々。

 ??????

 まったくの「新説」発見である。


 商業登記の実務においては,不実の登記を防止するために,数々の真正担保の策が講じられているのであるが,本件は,甚だ不可解至極である。

 法令の不備で,添付書面に関する手当が漏れているのであれば,原則として求めることはしないのが登記実務であるし,仮に求める場合であっても,ユーザー・フレンドリーに,過度な負担は求めないのが登記実務であったはずである。

 商業登記規則第61条第6項の立案の趣旨からすれば,会社継続の場合においても,代表取締役の選定を証する書面に代表清算人の届出印の押印があれば,同項ただし書の類推適用を認めるべきであろう。

 登記実務に関して,全ての事項について網羅的に,民事局長通達なり,商事課長通知なりが発出されているわけではなく,担当者自ら常識的な判断をすることが求められる場合も少なくないのだが,いやはや何とも・・・。


 商業登記事務の集中化による大量かつ迅速処理の要請もあり,思考停止に陥っているのかもしれないが,合理的で,社会通念上相当であると認められる取扱いが望まれる。
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1 コメント

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Unknown (toorisugari)
2023-01-20 20:47:52
2年半ほど前の記事ですが、ずっと気になっていたので、遅まきながら、コメントさせていただきます。

内藤先生の御意見ももっともだと思う反面、次のような理由から、会社継続の際の代表取締役の選定に係る議事録について、商登規61条6項ただし書を適用することは難しいのではないかと考えています。

商登規61条6項ただし書は、御承知のとおり、変更前の代表取締役が新代表取締役の選定に係る議事録に登記所届出印を押印することにより、選定手続に関与していることが明らかとなり、議事録の真正が担保されるというものです。
このことは、商登規61条6項又は同項ただし書の適用による選定に係る議事録の真正担保の連鎖が続いていくことを前提としているのではないかと考えています。
一方で、御承知のとおり、清算人・代表清算人の選任・選定に係る議事録については、商登規61条6項は適用されないとされています(S43.2.16民事甲第303号民事局長通達)。ですので、この時点で、真正担保の連鎖が途切れてしまったことになり、その後、会社継続において代表取締役を選定する際には、原則どおり、商登規61条6項本文を適用せざるを得なくなる、ということになってしまうと考えています。
もちろん、多くの会社では、代表取締役がそのまま代表清算人となる場合が多く、また、法定清算人・代表清算人である場合には、実質的にはこの連鎖が継続していると解することもできるのではないかとも思います。しかしながら、継続の登記を審査する登記官としては、登記記録及び登記申請書・添付書面に基づいて審査するため、真正担保の連鎖がいったん途切れている以上、商登規61条6項ただし書の適用があると取り扱うことは難しいのではないでしょうか。
この問題を解決するには、清算人・代表清算人の選定に係る議事録についても、商登規61条6項の適用があるとする通達変更をし、真正担保の連鎖をつなげる必要があるのではないでしょうか。

以上です。長くなり申し訳ありません。
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