コメント欄に質問あり。
Q.「社内弁護士」というのは近年よく耳にしますが,「社内司法書士」というのは,法令上または司法書士会の制度上、可能なのでしょうか。もし可能だとすると,どのような点に留意する必要があるのでしょうか。
A.
司法書士の兼業に関しては,法律上明文の禁止規定はない。ただし,「司法書士は,その業務を公正・迅速・誠実に行い,かつ,品位及び秘密の保持を担保し得る限りにおいては,兼業を禁止されていない。」とされている。
cf. 平成17年5月17日付「司法書士の兼業規制」
そして,司法書士が企業に雇用されるケースに関しては,いわゆる非司法書士の取締り(「司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない」(司法書士法第73条第1項))の観点もあり,原則として,登録を認めない取扱いであるようである。
参考になる公権解釈としては,規制改革会議「全国規模の規制改革要望に対する各省庁からの再回答について(平成19年8月15日)」における法務省再回答がある。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/accept/200706/0815/0815_1_09.xls
※ NO.5044001
「会社員(法務関連部門)を続けながら司法書士登録をし司法書士業を兼業したい」という方からの要望に関して,法務省の再回答は,次のとおりである。
「登録審査は,基準に適合しているか日本司法書士会連合会が審査するものであり,日本司法書士会連合会の審査は法務省の解釈に拘束されるものではないが,司法書士と会社員の兼業を認めた場合,当該司法書士は会社での勤務中は依頼に応ずることができず,司法書士業務で知り得た依頼人の情報が会社での業務に利用にされかねないなど,依頼に応ずる義務(司法書士法第21条),秘密保持の義務(同第24条)等の司法書士法上,司法書士に課せられている義務が遵守されなくなるおそれがあるなどの事情があるようなケースでは,司法書士と会社員の兼業を認めることが適切ではないものと考える。
いずれにしても,登録を求める者の置かれた状況は,各人ごとに千差万別であり,登録審査は,個々の事案を考慮しつつ,個別に日本司法書士会連合会において適合性を判断するほかないと考える」
私は,例えば,企業の法務部員のような形で「司法書士登録はするが、司法書士業務を行わない」タイプの司法書士を容認してもよいのではないかと考えるが,司法書士法第16条第1項1号が,「引き続き2年以上業務を行わないとき」は,日本司法書士会連合会は,その登録を取り消すことができると規定していることもあり,現行法上は,容易ではない。
cf. 平成20年6月20日付「第70回日司連定時総会終了」
というわけで,認められる例がないわけではないが,現時においては,個別具体的事情に鑑みて判断される問題であり,上記法務省再回答を斟酌いただくしかない,です。
Q.「社内弁護士」というのは近年よく耳にしますが,「社内司法書士」というのは,法令上または司法書士会の制度上、可能なのでしょうか。もし可能だとすると,どのような点に留意する必要があるのでしょうか。
A.
司法書士の兼業に関しては,法律上明文の禁止規定はない。ただし,「司法書士は,その業務を公正・迅速・誠実に行い,かつ,品位及び秘密の保持を担保し得る限りにおいては,兼業を禁止されていない。」とされている。
cf. 平成17年5月17日付「司法書士の兼業規制」
そして,司法書士が企業に雇用されるケースに関しては,いわゆる非司法書士の取締り(「司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない」(司法書士法第73条第1項))の観点もあり,原則として,登録を認めない取扱いであるようである。
参考になる公権解釈としては,規制改革会議「全国規模の規制改革要望に対する各省庁からの再回答について(平成19年8月15日)」における法務省再回答がある。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/accept/200706/0815/0815_1_09.xls
※ NO.5044001
「会社員(法務関連部門)を続けながら司法書士登録をし司法書士業を兼業したい」という方からの要望に関して,法務省の再回答は,次のとおりである。
「登録審査は,基準に適合しているか日本司法書士会連合会が審査するものであり,日本司法書士会連合会の審査は法務省の解釈に拘束されるものではないが,司法書士と会社員の兼業を認めた場合,当該司法書士は会社での勤務中は依頼に応ずることができず,司法書士業務で知り得た依頼人の情報が会社での業務に利用にされかねないなど,依頼に応ずる義務(司法書士法第21条),秘密保持の義務(同第24条)等の司法書士法上,司法書士に課せられている義務が遵守されなくなるおそれがあるなどの事情があるようなケースでは,司法書士と会社員の兼業を認めることが適切ではないものと考える。
いずれにしても,登録を求める者の置かれた状況は,各人ごとに千差万別であり,登録審査は,個々の事案を考慮しつつ,個別に日本司法書士会連合会において適合性を判断するほかないと考える」
私は,例えば,企業の法務部員のような形で「司法書士登録はするが、司法書士業務を行わない」タイプの司法書士を容認してもよいのではないかと考えるが,司法書士法第16条第1項1号が,「引き続き2年以上業務を行わないとき」は,日本司法書士会連合会は,その登録を取り消すことができると規定していることもあり,現行法上は,容易ではない。
cf. 平成20年6月20日付「第70回日司連定時総会終了」
というわけで,認められる例がないわけではないが,現時においては,個別具体的事情に鑑みて判断される問題であり,上記法務省再回答を斟酌いただくしかない,です。
しかし、司法書士は登記の依頼は拒絶できないから、中立性を確保できない勤務司法書士は認められない。
と考えます。
上記の法務省再回答のうち少なくとも秘密保持義務については、弁護士も司法書士も同様(弁護士法第23条、司法書士法第24条)だと考えられるところ、企業内弁護士は現実に認められていることから、結局は、みうらさんのコメントのとおり「依頼に応ずる義務」がポイントなのですね。
企業法務に携わる者としては、司法書士試験合格に向けた勉強そのものが日頃の実務や自らのスキルアップに結果として大変役に立ちましたので、たとえ司法書士と名乗れなくともそれらが無駄になることはありませんが、企業内司法書士という存在が公に認められれば、もう一段上のステージで今の仕事ができるかもしれない…という期待も持ち合わせています。
要は,企業の指揮命令下にあって,司法書士業務を行うことになるのか否か,ということだと思います。そのような可能性がないのであれば,登録は認められ得るでしょう。
「依頼に応ずる義務」というのは,本来,資格者の趣味嗜好により依頼を拒むことは相当でないために課せられているものであり,これを厳格に解し過ぎると,事務輻輳により断ることもできなくなってしまいます(依頼に応じられる体制を常時整えていないことが義務違反となってしまう。)。
金融機関や不動産会社であれば,否定的に捉えられると思いますが,その他の業種の事業会社であれば,企業の法務部員として,一般的な司法書士業務を行わないのであれば,登録が認められる余地はあると思います。