それはいつからだったろうか。
おそらく時計では1990年代後半からチラホラ販売価格の〝ASK〟表記が目立ってきた感がある。
基本的にこの〝ASK〟表記=〝ボッタくり〟表記と考えて間違いはない。
考えなくても、仕入れ価格、運転経費など、その中古時計を取り巻く環境はすでに決済しているのだから。
まさか、海外から仕入れて客に随時販売している現行品もあるが、急激な為替変動は織り込み済みで店頭価格を決める。
だから、私はあえて販売価格の〝ASK〟表記の店ではぜったいにアンティーク時計は買わない。
これから値上がりしそうな人気商品、たとえば3700/1Jだとかにしても仕入れが750万円ならば販売価格は〝ASK〟にせずとも
900万円~950万円の間に落ち着くはずだ。
ここでショップは値決めをして客に開示できる。
いくらウンチク好きなパテックの専門店であっても〝ASK〟商品ばかりであれば〝足元を見る〟経営者から家宝となりうる時計なんぞ買う気
も起らない。
またそういうせいぜい三人程度でやりくりしている小規模な店はぜったいに無金利ローンなんてやらない。というかできない。
信販会社に信用がないからだ。
ちなみに〝ASK〟商品ばかり売っていた1990年代の時計屋はほとんどが仲間割れで廃業した理由もここにある。
私には客との取引でいちいち〝ASK〟しなければいけないこと自体うっとおしい。
商品経済とはそういうものではない。
世の中の嗜好品がほとんど〝ASK〟商品なら購買意欲はおこらない。
それはボッタくりの闇市と何も変わりはないのだから。