(写真は新潟県中越地震によるマンホールの浮き上がり)
今回の東日本大震災で津波の陰に隠れてあまり話題に乗りませんでしたが、砂の液状化による被害も大きかった。砂の液状化は地震の振動で砂地盤がドロドロの液体状態になることで、まさに砂上の楼閣のようにその上の構造物が倒壊したり破壊されたり、またマンホールなどの地下構造物が地上に浮き上がったりして大きな被害が発生します。
昨年の11月議会の一般質問で松阪市内の砂の液状化の可能性について質問をしましたが、市内においても発生の可能性の地域があるということでした。特に海岸に近い地域では発生の可能性が大きいのではないかと思います。
◆砂の液状化は1964年の新潟地震から注目
砂の液状化は1964年6月に発生した新潟地震以降注目されるようになりました。もちろんそれまでの地震においても発生はしていたはずですが、あまり話題にはならなかったということです。新潟地震では液状化により県営アパートが倒壊したり、完成したばかりの昭和大橋が落橋して話題になりました。その後発生した1995年の阪神・淡路大震災、2003年の十勝沖地震、や2004年新潟県中越地震でも液状化による大きな被害が出ています。
◆砂の液状化の発生条件
砂の液状化はいくつかの条件が重なった時に発生します。その要因は次のようなものです。
① 地下水位以深の地層で発生する
液状化は地下水位より下の地層で発生し、地下水位より上の地層では発生しない。
② 深度20mより上の層で発生する
地下水位より下の地層であっても、深度20m以深の層では発生しない。
③ 砂質土で発生する
砂の液状化といわれるように砂質土を中心として発生する。粒子の小さい粘性土分の混入が多くなるほど、また逆に粒子の大きい礫分の混入が多くなるほど発生がしにくくなる。
④ 緩い地盤で発生する
緩い地層で発生して、地層が締まっていくほど発生がしにくくなってくる。
⑤ 地震の振動により発生する
地震の震動は、大きい方が発生の可能性が高くなる。
◆砂の液状化の発生のメカニズム
砂の液状化の発生のメカニズムの説明は難しいのですが、弁当箱のような底が平らな容器に砂を数センチ入れ、水を砂の表面付近まで入れた時、手のひらで砂を押しても、手のひらは砂の中に埋没しません。この容器を横に激しく揺すると砂と水が混じってドロドロの液体の状態になります。液状化のイメージはこんな状態ではないかと思います。
飽和状態(水で満たされている)の緩い砂地盤に地震の震動が加わると、間隙水圧(砂の粒子間の水の圧力)の上昇が起き、砂の粒子が水に浮いた状態になります。これが液状化です。この時、砂礫など粒子間の隙間が大きい土質では隙間を通って水が逃げるので、間隙水圧の上昇が起きません。
◆液状化でなぜマンホールが浮き上がるのか
液状化が発生すると、液状化を想定して造られた杭基礎などの構造物は別として、上部に造られている構造物は液体の上に造られている状態ですから、倒壊したり、破壊されたりして大きな被害が発生します。
液状化ではよくマンホールや貯水槽が地上に浮き上がります。あんないに重いものがなぜ浮き上がるのかということです。水の比重は1.0でそれより比重の小さい木切れや発泡スチロールは水に浮きます。これと同じように液状化した砂の比重は約2.0(1.8~2.0位)ですから、これより比重の小さい物質は液状化した砂に浮くことになります。コンクリートの比重は2.3(鉄筋コンクリートの比重は2.4)ですので液状化砂より高く、コンクリートの塊であれば浮き上がらず逆に沈むことになります。マンホールや貯水槽の場合、中が空洞もしくは水が入っているので、それらを含めた全体の比重(見かけの比重という)は2.0より低くなり、液状化砂に浮くことになります。
◆液状化の対策は
液状化が予想される場合の対策は、地盤をセメントなどで固める方法や、地中に礫の柱を造って間隙水圧が上昇する時水を逃げやすくする方法、また地下水をポンプで絶えず汲み上げ地下水位を下げる方法などありますが、いずれも大掛かりな工事となります。