大豆生産量のビッグテンに,新しい国が登場した。
1980年代から21世紀初頭にかけて,ブラジル,アルゼンチン,パラグアイ等南米諸国における大豆熱が世界の注目を集めた。そして南米大豆生産量は世界の過半を超え,アメリカ合衆国と共に世界の大豆相場を左右するまでになったのである。さらに,南米の大豆生産量は後発のボリビア,ウルグアイを加えて,今なお増加を続けている。
そこへ新たに,ウクライナとロシアが大豆輸出国の名乗りを上げている。この先,どのような大豆生産を展開するか(GMOに依存するのか,否定するのかを含め)注目した方が良い。
◆大豆生産量上位国
先ず,2012年産大豆の生産量を見てみよう(FAOSTAT2012)。世界全体の生産量は253,137,072トンで,需要の堅調に裏打ちされ漸増傾向が続いている。
1位(アメリカ):82,054,800トン
2位(ブラジル):65,700,605トン
3位(アルゼンチン):51,500,000トン
4位(中国):12,800,000トン
5位(インド):11,500,000トン
6位(パラグアイ):8,350,000トン
7位(カナダ):4,870,160トン
8位(ウルグアイ):3,000,000トン
9位(ウクライナ):2,410,200トン
10位(ボリビア):2,400,000トン
なお,11位(ロシア)1,806,203トン,12位(インドネシア)851,647トン。ちなみに,日本の生産量は235,900トン。世界全体の1%にも満たない(0.09%)。
◆大豆生産量の伸びが著しい国
ここ10年間(2002~2012年)で大豆生産量が増加した国の順位を増加率で示すと,
1位(ウルグアイ):4,225%(42倍)
2位(ウクライナ):1,933%(19倍)
3位(ロシア):427%(4倍)
次いで,パラグアイ(253%),インド(247%),カナダ(209%),ボリビア(193%)の伸びが2倍程度と大きかった。一方,生産大国アメリカは足踏みし,ブラジル及びアルゼンチンの伸びも1.5倍程度に止まっている。中国の生産に至っては減少傾向にさえある(輸入に依存)。
直近の5年間ではどうか?
1位(ウルグアイ):368%(3.7倍)
2位(ウクライナ):334%(3.3倍)
3位(ロシア):278%(2.8倍)
生産大国,アメリカ,ブラジル,アルゼンチン,中国,インド,パラグアイの伸びは,限界に近づいているように見える。その要因として,耕地面積の拡大がこれ以上困難である,大豆偏重の栽培が幾多の障害を引き起こすと危惧される(前兆がみられる)ことなどが考えられる。背景には,森林減少やGMO大豆の席巻など環境問題や社会問題にかかわる事象が現れており,ブレーキがかかってきたと想像される。
ボリビアとウルグアイは大豆導入後進国であったが故に伸び代があり,近年増加が著しい。ただ,ボリビアは耕地としての基盤が劣悪であるため,飛躍的な増加は望めない。ウルグアイは,ウルグアイ川を挟んでアルゼンチンに近い南西部の州で放牧地を転換してGMO大豆を導入したため,生産量拡大は比較的容易であったが,この増加にも一定の限界はあるだろう。
◆ウクライナの大豆
ウクライナは,かつて「欧州の穀倉」と呼ばれた肥沃な地帯を有する農業国。南は黒海に面し,北にはチエルノブリイがあることで知られる。ソ連崩壊後の混乱,生産技術や構造改革が遅れたため農業生産は停滞したが回復基調にあり,農産物の輸出に力を注いでいる。
2011年のFAO統計によれば,農作物の作付面積は1位(小麦)1,412,400ha,2位(向日葵)4,716,600ha,3位(大麦)3,684,200ha,4位(玉蜀黍)3,543,700ha,5位(馬鈴薯)1,443,000ha,6位(大豆)1,110,300ha,7位(菜種)832,700ha,8位(甜菜)515,800ha,9位(蕎麦)285,700ha,10位(燕麦)279,900haとなっている。
僅か0.3%の企業体農場(旧集団農場であった)が耕地の78%を占有する農業形態,及び前記の作物構成から推察できるとおり,大型機械を使った農業が進められている。農産物の輸出先はロシアを初め旧ソ連諸国,欧州が主体であるが,日本も玉蜀黍や麦類を輸入している。
大豆の単収は1.7~2.0t/haで必ずしも高くない。農林水産省HPの「主要ウクライナ産大豆の品種特性」に3.0~4.0t/haの記載があるが,あくまで特性調査の数値と捉えるべきで,現場の生産技術(品種・栽培法)は改善の余地が残されていると考えられる。さらに,ウクライナにおいては大豆も輸出品目と捉えられるので,生産体系は油糧作物栽培としての位置づけにある。なお,大豆の産地は国内中部の諸州である。
近年,この国に対して中国の膨大な経済協力が行われているようなので,大豆生産(技術改良も含め)への関わりも深まっているかも知れない。
Non-GMOを求めるわが国とすれば,どのようなアプローチが考えられるだろうか?
参照:FAOSTAT(faostat.fao.org),農林水産省HP「ウクライナ農業の概要」(www.maff.go.jp),在ウルグアイ日本国大使館HP「ウクライナ概観」(www.ua.emb-japan.go.jp)
添付:「ダイズ生産量上位国における生産の伸び」
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