豆の育種のマメな話

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世界の食用マメ(インゲンマメ,ヒヨコマメ,キマメ,ルーピン・・)

2014-02-05 11:54:04 | 北海道の豆<豆の育種のマメな話>

人類は多くのマメ類を食用にしてきた。私たち日本人にとって「」といえば,ダイズ,アズキ,インゲンマメ,ラッカセイ,エンドウなどであろうか。特にダイズは,豆腐や納豆として毎日のように食膳に上がり,味噌や醤油の原料ともなるので身近な存在だし,アズキやインゲンマメも和菓子材料として欠かせない。

一方,世界に目を向けると,私たちが名前を聞いたこともないマメ類が出回っていることに驚くだろう。「豆の王国」と称されるインドおよびその周辺では,マメ類が穀類とならび主食の位置を占めていると言っても過言ではない。マメ類は蛋白供給源として大切な食材であって,各国の料理法にも工夫が凝らされている。

 

◆栽培面積の多いマメは何だ?

現在,地球上で栽培されているマメ類を収穫面積順に拾ってみよう(FAOSTAT2011)。

 

1位(ダイズ):103,604,514ha

2位(インゲンマメ):30,411,204ha

3位(ラッカセイ):24,637,175ha

4位(ヒヨコマメ):13,180,508ha

5位(ササゲ):10,639,936ha

6位(エンドウ):6,140,528ha

7位(キマメ):5,862,653ha

 

以下,ヒラマメ:4,172,135ha,ソラマメ:2,412,154ha,サヤエンドウ:2,245,136ha,サヤインゲン:1,526,663ha,ルーピン:959,917haなどである。

 

ダイズ(大豆,Soybeans)の栽培面積が圧倒的に多いが,多くは食用油の原料作物としての生産である。日本の国土面積(耕地面積でない)が377,930km2であるから,地球上におけるダイズ栽培面積は日本国土の2.7倍に匹敵するほど広大で,今なお世界各地で栽培が拡大している。主要生産国は(FAOSTAT2012),アメリカ30,798,530ha,ブラジル24,937,814ha,アルゼンチン19,350,000ha,中国6,750,000ha,インド10,800,000ha,パラグアイ3,000,000haなどで,南北アメリカ大陸と中国及びインドで生産量の大半を占める。ちなみに,日本の栽培面積は140,000ha(世界全体の0.1%)に過ぎない。

 

◆インゲンマメは世界に通じる食用マメ

インゲンマメ(菜豆,Beans)の栽培が予想を超えて多いのに驚かれるだろう。乾燥子実の生産を目的に30,411,204ha,野菜用に1,526,663haの栽培がある。これは,日本国土面積のおよそ8085%に匹敵する。日本では餡,甘納豆,甘煮惣菜が主体で栽培面積は40,800haに過ぎないが,海外では煮込み料理など主材料としての利用が多いため作付けは多い。主要生産国は,インド9,100,000ha,ミャンマー2,845,662ha,ブラジル2,726,932ha,メキシコ1,558,992ha,ウガンダ1,060,000haなどである。東南アジア,中南米での生産が多いが,アフリカへと栽培が広まっている。主食である穀類やイモ類と並ぶ作物であることが伺える。

 

◆マメ類主要生産国

ラッカセイ(落花生,Groundnut):インド5,310,000ha,中国4,581,000ha,ナイジェリア2,342,810ha,スーダン1,698,480haなどである。

 

ヒヨコマメ(ガルバンソ,Chick peas):インド9,190,000ha,パキスタン1,063,800ha,オーストラリア653,142ha,イラン562,375ha,トルコ446,413ha。草丈4050cm,乾燥,冷涼な気候を好む。利用が多いのはインドで重要な蛋白源,ダル(水に浸して種皮を覗き乾燥させる)にしてスープやカレーに入れ,時には混ぜご飯にして食べる。地域や国によっては,粉に味を点け油で揚げたスナック菓子,きな粉や豆腐,生のまま枝豆のように食べ,また茎葉を野菜として利用することもある。

 

ササゲ(豇豆,Cow peas):ニジェール4,644,771ha,ナイジェリア3,189,980,ブルキナ・ファン938,330ha。アフリカ大陸のサハラ南部のサバンナ地帯を起源とし,アフリカなどの乾燥熱帯地域で長期にわたり重要な蛋白源として利用されてきた。耐乾性が強く,根粒の窒素固定能も高いという。

 

エンドウ(豌豆,Peas):ロシア1,110,800ha,カナダ914,200ha,中国872,400ha,インド727,200ha

 

キマメ(樹豆,Pigeon peas):インド4,420,000ha,ミャンマー643,120ha,タンザニア288,161,マラウイ196,552ha,ケニヤ138,708ha。インドではヒヨコマメに次ぐ食用マメとして多く生産され,ダルにしてカレーなどの料理に使われる。茎は木化して草丈は23mにもなり,直根性の大きな根系をもち耐乾性に優れ,痩せ地でも良く生育するため,熱帯各地に栽培が広がっている。

 

ヒラマメ(レンズマメ,扁豆,Lentils):インド1,597,400ha,カナダ998,400ha,オーストラリア218,763ha,トルコ214,847ha,ネパール207,591ha。南西アジアで生まれた歴史の古いマメの一つといわれる。皮が柔らかく,豆も薄くて火が通りやすいため,煮えるのが早い。

 

ソラマメ(Broad beans, Horse beans):中国615,000ha,インド218,352ha,タイ170,594ha,インドネシア129,565ha

 

ルーピン(Lupins):オーストラリア755,848ha,ポーランド52,508ha,ウクライナ26,600ha,チリ23,257ha,ドイツ21,500ha。日本では,ノボリフジ(ルピナス)と呼び,様々な色の目立つ花を咲かせることから観賞用とされる。世界では緑肥や飼料用に栽培されている(根粒の窒素固定能も高い)。子実に苦味成分(アルカロイド)の少ない食用の種類(タルウイLupinus mutabilis,アンデス地方で古くから食べられていた,蛋白・脂肪含有率がダイズに匹敵しアミノ酸組成も優れる)もある。苦み成分の除去,収量性の向上など改良が試みられていると聞くが,将来は第二のダイズになるかも知れない。興味ある作物だ。

タルウイの種子が入手できたら「試作してみたい」と思った

 

参照 1) FAOSTATfaostat.fao.org) 2) 前田和美「マメと人間,その一万年の歴史」古今書院1987 3) 吉田よし子「マメな豆の話」平凡社新書2000

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