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恵庭の彫像-8,恵庭市総合体育館の壁画彫刻 (竹中敏洋「躍動と天然の美」)

2014-10-13 13:00:51 | 恵庭散歩<記念碑・野外彫像・神社仏閣・歴史>

恵庭市総合体育館(恵庭市黄金中央5丁目)のロビーに巨大な壁画彫刻がある。この壁画彫刻は,昭和60年(1985)体育館の建設に合わせて制作されたもので,縦3m,横12mほどはあろうか(測定値ではない)。作者は,恵庭市盤尻で創作活動を続けた竹中敏洋である。

 

◆竹中敏洋作品「躍動と天然の美」

サイズが大きいので,少し離れて全体を眺める。灰色とモスグリーンの画面の中に,中央から四隅に伸びる赤い線が印象的だ。よく見れば,四人の若者がボールを抱えて競い合いながら走っている図柄である。ラグビーなのかアメリカンフットボールなのか,若者の肉体が躍っている。手足は長く躍動しながら伸び,草原を流れる川のようにも見える。空間(草原)には鹿を追う原始の人々が小さく描きこまれている。ラグビーで疾走する姿に見えた四人の若者は,実は原野で鹿を追っているのかも知れない。狩猟がスポーツのルーツであることを意識しながら,作者はこの壁画彫刻を創作したのだろう。

「躍動と天然の美」と題されたプレートには,「スポーツのルーツである狩猟時代と現代の球技を原野を流れる河によって描き,躍動と神秘の景観が見る角度で変化する立体表現となっていて,この一枚のキャンバスに原始に息づく数万年の歴史が秘められています。1985年4月,創作者竹中敏洋,漁川上流に住む作者が,氷のフアンタジーの研究から創造した液体硬化による新しい造形です」とある。体育館にふさわしい壁画である。

この壁画の躍動感はどこから来るのか。近寄って詳細に観察してみよう。躍動感の印象は,図柄もさることながら,液体硬化と呼ばれる技法(樹脂の化学変化を活かした造形)が醸し出す立体感にあるのではないだろうか。画面細部の造形は,火山の噴火口のようにも見えるが,不規則で複雑な形と色彩が織りなすファンタジーの世界だ。見る人に衝撃を与える。赤い狩人たちがメルヘンの世界へ誘う。これが,竹中敏弘芸術の世界と言うものだろう。

恵庭に数ある芸術作品の中でも圧巻の一つだ。

 

作者「竹中敏洋」の経歴については,本ブログ(恵庭の彫像-4,恵庭開拓公園にある竹中敏洋「拓望の像」)で紹介したので詳細は省くが,北海道を中心に活躍した彫刻家,造形作家である。芸術の神髄を一途に追い求め続け,さらには造形樹氷による氷と光の芸術,液体硬化による新鮮な造形技法などに取り組むなど,あくなき探究心を途絶えさせることは無かった。恵庭開拓公園にある「拓望の像」とこの壁画彫刻を比べてみれば,その差異に驚かれるだろう。

平成14年(2002)盤尻の自宅で逝去したが,テレビドラマ「ダンプかあちゃん」の逸話は心に残り,彼が発案し制作に関わった氷瀑(氷濤)まつりは今なお盛大に続いている。そして,シャクシャインの像(静内町真歌公園),永遠の像(月寒公園),THE SKY(札幌アステイ45外壁),青年の像躍進(大雪青少年交流の家),北辺開拓の礎(静内御殿山),市民の像(千歳),拓魂碑(深川)など多数の作品は,今も見る人の心を揺さぶって止まない。

 

◆鈴木吾郎作品「こぶし」「もみじ」

恵庭市総合体育館を訪れたとき,壁画彫刻の両脇に2体の塑像が置かれていることに気づいた。どこかで見た感じがする。彫像の台には,「こぶし」「もみじ」,作・寄贈鈴木吾郎」とある。恵庭大橋の季節の広場を飾る鈴木吾郎の作品「こぶし」「もみじ」の原型であろうか。

この場所に,鈴木吾郎作の塑像があることを知らなかった。一見の価値がある。

 

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