恵み野で最も身近な散歩コースは,恵み野中央公園であろう。総面積が11万m2を超える総合公園で,市街の中央部を帯状に横切っている。公園の中央部に位置する池と水路が特徴で,新緑や紅葉の季節には水辺や遊歩道沿いに拡がる木々の美しさが際立つ。日本庭園,野外音楽堂,冒険公園から成るが,野球場,多目的グラウンド,テニスコート等も配置され,南緑地帯・北緑地帯とも繋がっている。
いつも,「水路が効果的に配置されているな」と感心しながら遊歩道を散策するが,他の公園によくあるようなモニュメントを目にしない。そこで,「さてさて・・・」と探してみたら,ありました。日本庭園の池を背に図書館方向を向いて,「ふえ」と題された少女像が立っている。さらに,恵庭市立図書館には,鈴木吾郎,山名常人,中村矢一の芸術性高い作品が置かれている。散歩の途中に鑑賞されると良いだろう。今回は鈴木吾郎作品を紹介する(山名常人,中村矢一については次回)。
◆鈴木吾郎作品「ふえ」
笛を吹く少女の像。縦笛を吹く少女の顔はあどけなく,少女の懸命さが感じられる作品である。高さ1m40cmほどのブロンズ。恵庭ニュータウン「恵み野」開発事業完成記念として,平成2年(1990)11月に建立された(株式会社恵庭新都市開発公社寄贈)。日本庭園を背にして図書館方向を向き立っているので,注意しないと見つけにくいかもしれない。像を囲むようにある生垣があり,それら木々との調和が美しい作品なので,植樹管理に細心の注意を払いたい。
◆鈴木吾郎作品「YUKA 17」
自然体の姿勢で立つ由佳像。恵庭市立図書館の庭に,後ろ手にした等身大の若い女性像(YUKA)が,降り注ぐ陽光を全身に浴びている。左足を少し前にした寛ぎの肉体が眩しい。鈴木吾郎の作品「YUKA 17」ブロンズ製である。平成4年(1992)8月製作。恵庭市が図書館の完成に合わせて同年10月建立した。
◆鈴木吾郎作品「YUKA」
緊張した趣の由佳像。恵庭市立図書館エントランスの左側柱(駐車場側)に寄り添い,訪れる人々を迎えるように,若い女性像(YUKA)が置かれている。両手を後ろ手に組んだ姿は庭のYUKA像と同じであるが,こちらは脚を揃えて立ち,やや前傾した姿勢に緊張感が伝わる。鈴木吾郎の作品「YUKA」である。平成4年(1992)9月5日製作,約1m大のブロンズ。台座に刻まれた署名から,YUKAとは由佳であることが分かる。
◆鈴木吾郎作品「女・風髪」
風になびく黒髪を気にする女性像。エントランスホールの右奥,公衆電話の横に,風になびく黒髪を気にする女性像がある。鈴木五郎作品の「女・風髪」である。平成4年(1992)1月製作,約60cm大のブロンズ。
なお,作者の鈴木吾郎は昭和14年(1939)芦別生まれ,北海道学芸大学で藤川叢三に師事,教職に携わる傍ら,昭和35年(1960)から道展を主舞台に活躍。佐藤忠良に繋がる,健康的で柔和な表情の女性像の作品が多い。日本人の心を追及しているのだろうか,女性の何気ないしぐさに情感が漂う。全道に50点を超えるモニュメントがある。新境地を拓いたと言われる「素焼き作品」も近年評価が高まっている。北海道を代表する作家の一人と言えよう。野外彫刻の数は,本郷新、佐藤忠良、安田侃に次いで多い。