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恵庭の彫像-7,ユカンボシ川河畔公園彫刻広場 (山本正道,丸山隆,山谷圭司の作品)

2014-10-11 13:43:42 | 恵庭散歩<記念碑・野外彫像・神社仏閣・歴史>

前回の佐藤忠良,渡辺行夫,植松奎二作品に引き続き,ユカンボシ川河畔公園彫刻広場の3作品を紹介する。

4.山本正道作品「時をみつめて」

佐藤忠良の作品の奥,散策路の左手にコップを伏せたような,或いはコンポスト容器のようなオブジェが置かれている。枯枝が載っていたので,そっと取り除いて写真を撮った。作者によれば,「メサ」(スペイン語で台地)をイメージしているとのこと。台地と言えば,ケープタウンのテーブル・マウンテンやギアナ高地を思い出すが,この作品もよく見れば台地と思えてくる。

作者は,「森の奥から湧き出た水は,やがて小さな支流となって池となる。そこに架けられた“小さな石橋”と,小径でむすばれた“台地を模したブロンズのかたち”により,公園の自然をさらに豊かな姿に見せるよう努めた(案内板から)」と,制作意図を語っている。

そうか,あの石橋と一体構成の作品なのだ。アングル位置を探して写真に収めた。メサはブロンズ製で高さ126cm,石橋は茨城県花崗岩。山本正道の作品は「風景彫刻」と呼ばれるが,ユカンボシ河畔の自然の中にあって日本画の風情だ。具象彫刻を進化させた新しい表現空間の世界でもある。

 

作者「山本正道」は,昭和16年(1941)京都府生まれ,東京芸術大学美術部彫刻科卒業(大学院修了),イタリア政府給費留学生としてローマ美術学校で学ぶ。新制作協会会員,フルブライト交換研究員。イタリアやアメリカでの生活体験が,彼の作品に影響を与えているのかも知れない。東京芸術大学教授。平櫛田中賞,中原悌二郎優秀賞,京都国立近代美術館賞,神奈川県近代美術館賞,倉吉緑の彫刻賞,紫綬褒章など受賞。「赤い靴の像」(横浜山下公園),「風の音」(仙台市野草園)など多数。

5.丸山隆作品「Cube」

彫刻広場を奥に進むと水辺の小さな空間に,花崗岩を磨き,或いはビシャン仕上げの椅子やテーブルが,木漏れ日の中にあった。丸山隆の「Cube」という作品である。高さ145cm,全体の幅343cm×241cm。

作者の言によれば,「宇宙の摂理だとか,人間の認識の事だのを悶々と考えてCUBEという作品を造りました。でも,私がそう思って造ったからといって,そう見なければならない理由はもちろん一切ありません。ユカンボシの恵まれた空間の中で,私の彫刻をくぐったり,座ったり,お弁当を食べて欲しいと思っています。そしてふと振り返った瞬間に,空間の不思議さに思いを馳せてもらえたらこんな嬉しいことは在りません(案内板から)」とある。

この作品は,複数の椅子が無造作に,無秩序に置いてある。子供がおもちゃ箱をひっくり返したようでもある。この無秩序,形の歪みが発する緊張感が丸山隆の特徴なのだろう。この緊張感は目には見えない何かを感じさせる源泉である。

 

作者「丸山隆」は,昭和29年(1954)長野県生まれ,東京芸術大学美術学部彫刻科卒業(同大学院修了),昭和60年(1985)北海道教育大学札幌校に赴任し,活躍した。丸山の来札を機に北海道の彫刻が大きく変わったと指摘する識者もいる。北海道美術協会賞,北海道新聞社賞など。「残留応力」(洞爺湖ぐるっと彫刻公園),「原風景」(山鼻サンタウン広場)。「石山緑地基本設計・制作」,「循環する形」(恵庭市)など道内に31作品があると言う。道展会員。平成14年(2002)腎臓ガンにより47歳の若さで世を去った。

6.山谷圭司作品「にぎやかな遡行」

この作品が何処にあるか,最初は分からなかった。彫刻公園の一番奥,民家と渓流の間の狭い坂道に置かれた一群のオブジェが,山谷圭司の作品だと気付くのにしばしの時間が必要だった。それは,民家の庭から渓流に下りてくる小路のように見えた。まさに,「散策路の階段部分の造形」である。素材は上富良野産の安山岩であると言う。

作者は,「ユカンボシをはじめて訪れた時,私に提示された場所に立ち,ここでは単体の作品はそぐわないだろうという思いを持った。渓流と民家の間の狭いな坂道に彫刻を置くというより,そのまま彫刻化してしまおうという構想になったが,結局,これはかなり大変な作業をともなうことになった。この坂を登り下りする来訪者たちが「作品」に踏み入ったことも気づかず,何故かその歩みを味わい,楽しめる仕掛けであってくれればと思っている(案内板から)」と述べている。

「来訪者と一体化して,ふと気づく」山谷圭司が意図するところだ。それは,私たちが日本庭園を散策するときに感じる気持ちと同じものでないのか。

 

 

作者「山谷圭司」は,1955旭川生れ,武蔵野美術大学彫刻科卒業,ミュンヘン美術大学卒業。岩石等を組み合わせた独創的な作風が特徴である。上富良野にアトリエをもち,旭川,札幌を中心に多方面の活動を続けている。「賽の石組」(旭川忠別公園),「3つの柱,2つの門,1つの場」(旭川),「星の舟-先ずは今ここに来たりて」(米子市立図書館),「三本足の石塔」(富良野),「終わらない螺旋階段」(東神楽)など多数。「石山緑地基本設計・製作」に関わる。

 

ユカンボシ川河畔公園彫刻広場は,基本設計に基づき6作品が配置されたと考えられ,これ以上新たに作品を加える余裕はない。いわば,完結した彫刻広場である。一人渓流を散策しながら作品に触れる,或いはベンチに座る一人の女性姿が似合うような広場だ。静寂の中での鑑賞こそがユカンボシ彫刻広場の目指すところだろう。この広場に,多くの人が訪れる雑踏は要らない。

また,「手つかずの自然を尊重しよう」とのコンセプトが各作者のコメントにも表れているが,木々が繁茂したとき作品は自然に埋もれないのか,管理はどうするのかと気にかかる。

いずれにせよ,作品が四季折々にどんな顔を見せるか,この先も見届けたい彫刻広場である。

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