豆の育種のマメな話

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飲むサラダ「マテ茶」の作法

2012-01-20 17:50:40 | 南米で暮らす<歴史・文化・自然>

南米の生活の中で,マテ茶は極めて重要である。朝起きて夫婦でまず一服,仕事始めに仲間で回し飲み,車で走れば助手席に座った人間が運転手に振る舞う。いつも,マテ(瓢箪で造った容器),ボンビージャ(先端に茶漉しの細かい穴が空いた金属製のストロー),ポットを持ち歩いている。ポットの中身は,アルゼンチンやウルグアイでは熱いお湯であるが,気温が高いパラグアイでは氷が入った冷水の場合が多い。冷水に薬草やハーブを入れて飲むマテ茶を,パラグアイではテレレ(Tereré)と呼ぶ。

 

マテ茶は,南米原産のジェルバ・マテYerba matéIlex paraguariensis,モチノキ科モチノキ属に分類される常緑樹)の葉や小枝を乾燥させた茶葉に,お湯や冷水を注ぎ成分を浸出させて飲むお茶で,特殊な道具を使って飲用する。苦みが強い。ビタミンやミネラルの含有量が極めて高く,飲むサラダともいわれる。野菜を食べる習慣がなかった南米の地域では,重要な栄養摂取源でもある。

 

 容器は,瓢箪をくりぬいたマテ,木や牛の角で作ったグアンパと呼ばれるものがあり,座りを良くする台座を着け,外側に銀細工の装飾を施したものが多い。アルゼンチン,ウルグアイ,ブラジル南部では瓢箪のマテが良いと聞いたが,パラグアイではパラサントなど木製のものが多かった。

 

一組の茶器を使い複数人が回し飲む習慣が一般的である。ホスト役がマテ茶を入れ,仲間に順次振る舞う。その作法は,次のようになる。

 

 ①ホスト役は茶器に1/23/4ほどジェルバ・マテを入れ,ボンビージャを立て,お湯を注いで,一煎目は自分で飲む。お湯の熱さ加減,茶の濃さ加減,うまく吸えるかなどの試飲である。

 ②二煎目は隣の客に渡す。受けた者はボンビージャで飲み干して,ホストに返す(飲み干してホストに返すのが手法で,客から客に渡さない)。

 ③ホストはお湯を注ぎ,次の客に渡す。飲み干してホストに返す。この繰り返しで,各人が満足するまで延々と続けられる。ホストは,お湯を注ぎ,時折ボンビージャの位置を変えたり茶葉を加えたりして味を調え,次の客に渡す(客はかってにボンビージャを動かしたりしない)。

 ④茶器をホストに返すとき「グラシャスGracias(ありがとう)」といえば,もう満足しましたということで,次からはサービスされない。

 

大抵の場合は,ポットのお湯がなくなるまで続けられる。人数が多ければ,お湯を沸かしながら続けることになる。朝の作業前,このテイセレモニー(おしゃべり時間)のために優に30分は必要になる。日本人が最初に出会うカルチャーショック。だが,慣れてくると,これがまた良い。「何をあくせくするの?アスタ・マニヤーナ,明日があるさ」ということになる

 

パラグアイではテレレに入れる薬草やハーブを街角で売っている。路上や野原で摘んできて売り歩く裸足の子供もいる。薬草の種類は非常に多い。「これは腹痛に良い」「下痢にはこれ」「二日酔いには・・・」と使い分けている。小さい臼のような容器に入れて突き潰してから,冷水に浸して使用する。薬草の知恵は原住民ガラニーから受け継いでいて,野原や路傍で摘んでくることもある。私たちは夏に,薄荷やレモンを入れて飲んだが,暑さを忘れさせてくれた。

 

日本でも最近,元気が出る「マテ茶」の愛好者が増えている。

 

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