◆今年の1月,岩見沢を中心に局地的な大雪があった(札幌管区気象台によると,岩見沢の1月の降雪は平年対比58%増の337cm,冬期間トータルでは平年を18%下回る)。また,今年の冬は雪の事故が多かったこと,公の除雪対策や除雪費用など,豪雪に関わる話題が多かった。雪のマイナス面が強調されたが,一方雪を活用する試みは近年急速に進んでいる。
◆「北農」第40巻2号(昭48)に,松山龍彦氏ら北農試・雪の研究班が取りまとめた特集記事「雪の研究―農業と雪―」が掲載されている。積雪期の農業実態,融雪促進の手法と効果(融雪促進剤・作業方法と経済性・雪上施肥),除雪作業(除雪方法・除雪機)について解説し,最後に「貯雪」について触れている。その中で,「現実には貯雪は行われていない。したがって需要はない。しかし,雪には水資源としての活用面,融雪現象を活用する冷凍剤的利用がある。今後,雪の利用について追求する必要がある」と述べている。
◆それから38年,雪の活用は拡大している。スノーフェステイバルのような観光資源としての活用,和寒町の越冬キャベツや沼田町の雪中米等が良く知られている。さらに近年,新エネ法施行(平成9年施行,平成14年改正)により雪氷熱エネルギーが新エネルギーとして位置づけられたこともあり,雪氷を施設の冷房,食材の貯蔵などに活用する事例が増えている。雪氷熱エネルギー活用事例集4(経済産業省,平成20年)には,120を超える事例が紹介されている。
◆松山氏らは論文の中で,農業研究が生産手段に偏った狭い範囲に限定されていると危惧し,広い角度で第一次産業研究者としてのアプローチが必要ではないのかと述べているが,総合的な研究は次第に実を結びつつある。農業・食品産業技術総合研究機構や北海道立総合研究機構など組織の再編が進み,分野を横断した研究は加速している。
◆陽だまりの雪どけに春を感じる。農業試験場の春季,それは成果の公表時である。今年も新たな研究成果が数多く世に送り出された。1月17~21日の北海道農業試験会議(成績会議)を経て,普及奨励9,普及推進18,指導参考204,研究参考7課題が新技術として決定・公表された。これらの中から,本号では「新品種の成績概要」と「平成22年度の発生に鑑み注意すべき病害虫」の情報を紹介したが,その他についても順次掲載する予定である。
◆雪解けが始まった3月11日,東北地方太平洋沖地震の激震と津波が甚大な被害をもたらした。自然のエネルギーに驚愕,茫然自失。被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
参照:土屋武彦2011「編集後記」北農78,244