題の前に「日本人が知らない!」とあり、「異色の予備校講師が、タブーなしに語り合う」という惹句もある。そして腰巻に「なぜ日本文明は、独自性を保てたのか?」と著者の写真が載っている。装丁を見ると学術書ではなく「軽い読み物」の方に少し傾いた本だという予感がしたが、読んでみると確かにそうだった。「世界史の原理」とあるが、「原理」を辞書で引くと、「物事の根本にあって、それを成り立たせる理論・法則」とある。世界史にそんなものがあるのかと思って、「おわりに」を読むと、「危機の時代においてわれわれの祖先がいかに対応し、死に物狂いで独立を保ってきたか。諸外国との比較の中でそれを知れば、この国を守っていこうという気持ちになり、あなたの明日からの生き方も変わってくるでしょう」とあった。先日、自民党の総裁選挙の決選投票で敗れた女性候補が言いそうなせりふである。まあこれが本書のスタンスである。
本書のエピソードは大体知っていたが、初見のものもあった。それは第二章の中の『「先住民」の世界史』で、アイヌは日本の先住民族ではなく、鎌倉時代に渡来してきた少数民族であるというものだ。アイヌはシベリア起源の北方民族と縄文系擦文文化人との混血だということをミトコンドリアのDNAを持ち出して結論づけている。あいにく証拠となる染色体の議論の詳しい出典が明示されていないので、ほんとかいなと思った読者も多かったのではないか。中でも私がおや?と思ったのは次の記述だ。『今日、人工的あるいは政治的都合でカテゴライズされた「アイヌ民族」は日本に約1万3000人いるとされます。こうした人工的「アイヌ民族」が自治権や自治区の獲得に向けて、今後、政治闘争を仕掛けてくることも予想されます』。(宇山)「仕掛けてくる」の主語は書かれていないが、いずれにせよ少し悪意を感じた。著者は知里真志保や姉の知里幸恵のことを思い浮かべただろうか。『知里真志保の生涯』(藤本英夫 新潮選書 1982年)を読んでみてほしい。アイヌの苦闘の歴史を知って共感をする立場に立てば、もう少し別の言い方ができたかもしれない。
「アイヌ先住民説」を科学的に根拠が乏しいと一蹴しする一方、「アイヌの持つ文化を日本文化の民族的多様性を示す貴重な文化財として守っていくべきだと私もおもいます」(茂木)とバランスをとる発言をしている。しかし、2008年の「アイヌ先住民決議」について、この時の内閣総理大臣は福田康夫だと指摘したうえで、「これによって北海道を中心に莫大な公金投入が行われ、さまざまなハコモノが建てられ、様々な利権団体に公金がバラ撒かれました。同じことはLGBT理解増進法(2023)でも言えるでしょう」(宇山)「官僚・政治家が歴史を知らなこういうことになるのです」(茂木)と自民党右派もさもありぬべしという発言をしている。
本書の最後に日中戦争が中国共産党の策略によって拡大し、結局共産党が日本軍と国民党に勝利して、中華人民共和国が成立したというエピソードが載っているが、そう直線的に言えるものではない。さらなる研究が必要だ。私としては今度の衆院選での自民党の議席数に本書がどれくらい寄与するのか注目している。まあ50万部売れたら、影響するかもしれないが、1~2万部では厳しいだろう。中身の評価は分かれるだろうが、気楽な読み物として割り切れば、まあまあ面白い本であった。ものを知るということは世界を広げるということを改めて実感させてもらった。まだまだ勉強すべきことは多い。
本書のエピソードは大体知っていたが、初見のものもあった。それは第二章の中の『「先住民」の世界史』で、アイヌは日本の先住民族ではなく、鎌倉時代に渡来してきた少数民族であるというものだ。アイヌはシベリア起源の北方民族と縄文系擦文文化人との混血だということをミトコンドリアのDNAを持ち出して結論づけている。あいにく証拠となる染色体の議論の詳しい出典が明示されていないので、ほんとかいなと思った読者も多かったのではないか。中でも私がおや?と思ったのは次の記述だ。『今日、人工的あるいは政治的都合でカテゴライズされた「アイヌ民族」は日本に約1万3000人いるとされます。こうした人工的「アイヌ民族」が自治権や自治区の獲得に向けて、今後、政治闘争を仕掛けてくることも予想されます』。(宇山)「仕掛けてくる」の主語は書かれていないが、いずれにせよ少し悪意を感じた。著者は知里真志保や姉の知里幸恵のことを思い浮かべただろうか。『知里真志保の生涯』(藤本英夫 新潮選書 1982年)を読んでみてほしい。アイヌの苦闘の歴史を知って共感をする立場に立てば、もう少し別の言い方ができたかもしれない。
「アイヌ先住民説」を科学的に根拠が乏しいと一蹴しする一方、「アイヌの持つ文化を日本文化の民族的多様性を示す貴重な文化財として守っていくべきだと私もおもいます」(茂木)とバランスをとる発言をしている。しかし、2008年の「アイヌ先住民決議」について、この時の内閣総理大臣は福田康夫だと指摘したうえで、「これによって北海道を中心に莫大な公金投入が行われ、さまざまなハコモノが建てられ、様々な利権団体に公金がバラ撒かれました。同じことはLGBT理解増進法(2023)でも言えるでしょう」(宇山)「官僚・政治家が歴史を知らなこういうことになるのです」(茂木)と自民党右派もさもありぬべしという発言をしている。
本書の最後に日中戦争が中国共産党の策略によって拡大し、結局共産党が日本軍と国民党に勝利して、中華人民共和国が成立したというエピソードが載っているが、そう直線的に言えるものではない。さらなる研究が必要だ。私としては今度の衆院選での自民党の議席数に本書がどれくらい寄与するのか注目している。まあ50万部売れたら、影響するかもしれないが、1~2万部では厳しいだろう。中身の評価は分かれるだろうが、気楽な読み物として割り切れば、まあまあ面白い本であった。ものを知るということは世界を広げるということを改めて実感させてもらった。まだまだ勉強すべきことは多い。