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【判例】 損害賠償請求(借家の明渡) 東京簡裁 平成18年3月24日判決

2008年05月09日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介


 原告が本件貸室を明け渡したのは被告の強制・強要によるものか,原告の意思に基づくものかが争われた事案

平成18年03月24日東京簡易裁判所
東京簡易裁判所平成17年(ハ)第12242号損害賠償請求事件


判     決
主     文

原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

 第1請求
 被告は,原告に対し,140万円を支払え。

 第2 事案の概要
 1 請求原因の要旨

 (1)  原告は,平成16年12月30日,被告から,東京都中野区ab-c-de号室(以下「本件貸室」という。)を,賃料月額5万2500円,管理費月額2500円,毎月末日限り翌月分を支払うとの約定で賃借(以下「本件賃貸借契約」という。)し,居住していた。

 (2)  原告は,平成17年5月迄の賃料等はきちんと納めていたが,平成17年6月に入り賃料の支払いが1週間遅れていたものの,その理由については5月20日ころには被告に話し,理解してくれていたと思っていたところ,同年6月7日の早朝,突然,被告が本件貸室に来て,鍵と契約書を渡せ,直ちに荷物を整理して出て行けと怒鳴り散らした。

 (3)  原告は,被告の余りにも激しい態度に抵抗ができず,夜の10時ころまで荷物の整理にあたったが,今後の生活に不安を抱き,被告方を訪ね,部屋を貸して欲しいと申し出たが,被告の妻から,被告は寝てしまった旨言われ,会わせてもらえないまま,本件貸室から追い出された。

 (4)  原告は,前記強制的に被告から追い出されたことによる債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償として,下記アからオまでの合計140万円の支払を被告に求める。

  ア 精神的苦痛に対する慰謝料として5万円

  イ 路上生活を余儀なくされ,夜の寒さによる風邪と疲れらから内臓疾患となったことの治療費として5万円

  ウ 路上生活において,深夜両足を極度に冷やしたため末梢神経を痛めたための治療費として10万円
  エ 追い出しにより,テレビ,冷蔵庫,電子レンジ,衣類などの生活用物品を失った被害弁償として10万円,パソコン,製図用具,専門書籍などの仕事用物品を失ったことによる被害弁償として10万円

  オ 路上生活に陥り,体調をくずし,予定していた仕事にも赴くことができなかったことによる生活保障として25万円の4ヶ月分100万円


 2 被告の主張の要旨

 平成17年4月30日,原告から,本件賃貸借契約を解約し,5月10日に明渡すとの解約通知を受け,5月分の賃料と敷金を相殺し,残りの管理費2500円だけを支払うとの合意に基づき管理費2500円を支払ってもらった。

 本件賃貸借契約は,前記合意に基づき平成17年5月末日をもって合意解約により終了したが,原告がその後も立ち退かないので,6月7日に被告に対し明け渡すよう言いに行ったが,強制的なことは何もしていない。解約及び移転は,原告の意思に基づきなされたものである。なお,被告は現在88歳の病気持ちで怒鳴り散らすといったようなことができる状態にない。


 3 争点
 原告が本件貸室を明け渡したのは被告の強制・強要によるものか,原告の意思に基づくものか。

 第3 当裁判所の判断

 1 証拠(乙第1号証ないし乙第3号証,原告本人,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば次の事実を認めることができる。

 (1)  原告は,平成16年12月,被告との間で賃貸借契約を締結し,本件貸室に居住していたが,勤めていた会社からAでの現場監督の仕事を指示されたことから,本件貸室から引っ越すこととし,平成17年4月30日,本件賃貸借契約を解約し,翌月5月10日には明け渡す旨の解約通知書を自ら作成し,被告に提出した。

 (2)  これを受けて被告は,同年5月2日ころ,5月分の賃料5万2500円については預入敷金5万2500円と相殺するので,5月分の管理費2500円だけは支払ってくれと原告に申し出たところ,原告は,これを承諾し5月分管理費2500円を支払った。

 (3)  その後,原告は,明渡予定日の5月10日を前にして,勤め先から,現場監督の仕事が延期になるとの連絡を受けたことから,連絡を受ける都度,移転が5日延びる,10日延びるということを被告に伝え,被告の了解を受けたが,5月20日ころになって勤め先から,さらに仕事が延びそうだと言われたことから,5月24日ころ,さらに明け渡しが延びることを被告に伝えた。

 (4)  その後同年6月7日,朝7時過ぎころ,被告が原告方を訪ね,原告に対し,鍵と契約書を返還して直ぐに出て行くようにと求めた。これに対し,原告は,その後も住んでいていいと被告は言ったではないかとか,6月分家賃は6月10日には払うと言ったではないか等と言ったのに対し,被告は,お金を払わずに居座ろうとしているのではないか等とのやり取りが30分程あった後,被告は,原告から鍵の返還を受け,片付けが済んだら連絡するよう原告に告げて帰ったが,その間互いに手をあげるようなことは全くなく,また,被告が荷物の搬出に着手する態度を示したこともなかった。
  なお,前記6月7日当時,原告は、○○歳,被告は××歳であった。

 (5)  その後,原告は,すぐ出ることになったことについて悩んでいたが,お昼頃から明け渡しのための片付けを始めたが,荷物の処分等で時間がかかったことから,夕方6時ころ,被告方を訪れ,片付けにもう少しかかる旨告げた後,部屋に戻り片付けを続け,夜10時頃にはこれを終えた。

 (6)  その後,原告は,片付けが済んだことを伝えるために被告方を訪れ,応対した被告の妻に,片付けが済んだことを伝えるともに,もう一度貸してもらうことをお願いしようと考え,被告との面会を求めたが,被告の妻から被告はもう寝ていると言われ応じる態度を示さなかったことから,被告に出てくるよう大きな声をあげたところ,被告の妻は,どうしよう,どうしようと言ってこれに動揺し,被告も恐怖心を覚え出て行かなかった。

 2 以上の認定したところによれば,被告は,平成17年4月30日,原告から明渡し日を5月10日とする旨の解約通知を受けた後,5月2日ころには,原告との間で,5月分の賃料を敷金をもって充当することで本件賃貸借契約を5月末をもって終了することで当事者間において合意していたものと認められるところ,原告は,その後,仕事が延びることになったとの連絡を受ける都度,被告に対し明渡日が延びることを伝えていたことが認められる。

  この点原告は,明け渡しの時期が2,3ヶ月延びることを伝え被告も了解していた旨供述するが,前記認定したところと弁論の全趣旨を総合すれば,被告は,原告から仕事の都合で明け渡し日が5日延びる,10日延びるということを聞かされ,さらに5月24日ころにも延びるという話を聞かされたことから,5月末を若干過ぎることになることについては,やむを得ないものと考えていたことがうかがえるものの,原告が主張するような2,3か月の猶予期間を与えたとか,6月以後の賃料の支払いを合意し,新ためて原告との間で賃貸借契約を締結したことを示す証拠はなく,この点の原告の主張は採用しえない。

 3 原告は,6月7日早朝,突然,被告が原告方を訪れ,直ぐに出るよう怒鳴り散らし,原告の言い分に一切耳を貸さず無理矢理追い出された旨供述する。確かに,被告が同日早朝,原告方を訪れ,直ぐに荷物を片付けて出るよう強い口調で述べたことはうかがえるが,前記認定した事実のほか,弁論の全趣旨を総合すれば,被告は,原告からの解約通知を受け,5月分賃料は既に敷金をもって充当精算していたところ,原告から仕事の都合で明渡日が延びるとの連絡を何回か受け,5月末日を過ぎることについてはやむを得ないものと考えていたものの,その後約1週間たっても明け渡しがなかったことから6月7日に至り原告方を訪れ,原告に対し,強い口調で荷物を片付けて出るよう求めたことが認められるが,原告は,その後鍵を被告に渡した後,昼ころから片付けを始め,夕方6時ころには,片付けはもう少しかかることを被告方を訪れ告げていること,その後,片付けを終え,夜10時頃には,片付けが終わったことを告げるために被告方を訪れていることからしても,結局,原告は,6月7日においてその後の居住継続の猶予を願い出たものの,被告に応じてもらえなかったことから,自ら荷物を片付け明け渡したもので,被告において原告の占有を侵害したとか,それに値する程の強要行為があったとまでは認められない。

 4 以上によれば,その余の点を判断するまでもなく原告の請求は理由がないので,主文のとおり判決する。


    東京簡易裁判所民事第2室

             裁判官  福本 智公

 

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