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【判例】 適正地代を争った事例 (名古屋簡裁 平成19年3月30日判決)

2008年04月28日 | 地代の減額(増額)

 判例紹介


 原被告の各先代が締結した賃貸借契約に基づく原被告間の土地の賃料について,原告が被告に対し,平成16年1月からは月額金1万4000円を金4,5万円(その後月額金1万9510円に減縮)に,平成18年8月1日からは金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)にそれぞれ改定する旨の意思表示をしたのに対し,被告が値上げ幅が多過ぎるとしてその適正賃料を争った事案


      名 古 屋 簡 易 裁 判 所 平成19年3月30日判決言渡し


      平成18年(ハ)第4095号 賃料確認等請求事件

 


主       文

 

1 原告と被告との間で,別紙一物件目録記載の土地についての賃貸借契約における賃料は,平成16年1月1日から平成18年7月31日までは月額金1万8000円, 同年8月1日以降は月額金2万0000円であることを確認する。

2 被告は,原告に対し,金16万0000円及びその内金である別紙二未払賃料一覧表左欄記載の各金員に対し,それぞれ対応する右欄記載の各期日から支払済みまで年10パーセントの割合による各金員を支払え。

3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

4 訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の,その余を被告の負担とする。

5 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。


事 実 及 び 理 由

第1 請求
1 原告と被告との間で,原告が被告に賃貸している別紙一物件目録記載の土地の賃料は,平成16年1月1日から平成18年7月31日までは月額金1万9510円,同年8月1日以降は月額金2万2024円であることを確認する。 

2 被告は,原告に対し,金21万8954円及び別紙三未払賃料損害金一覧表記載の各未払賃料に対する各起算日から支払済みまで年10パーセントの割合による各金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は,原被告の各先代が締結した賃貸借契約に基づく原被告間の土地の賃料について,原告が被告に対し,平成16年1月からは月額金1万4000円を金4,5万円(その後月額金1万9510円に減縮)に,平成18年8月1日からは金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)にそれぞれ改定する旨の意思表示をしたのに対し,被告が値上げ幅が多過ぎるとしてその適正賃料を争った事案である。


2 争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨で認められる事実
(1 ) 訴外亡Aは,訴外亡Bとの間で,昭和38年10月1日,別紙一物件目録記載の土地を木造建物所有の目的で,期間の定めなく,賃料月額金2200円(当初賃料はその後逐次改定,翌月分を当月30日払いの約定は,その後当月分を当月払い状態が続いたが,約定は当初のとおり。 )で賃貸借契約を締結し,同日,同Bに対し上記土地を引き渡した。

(2 ) 訴外亡Aは昭和53年3月14日死亡し,原告は相続により上記土地所有権を取得し,賃貸人の地位を承継した。他方,訴外亡Bは平成15年5月23日死亡し,被告は相続により上記建物所有権を取得し,本件土地の賃借権を承継取得した。

(3 ) 本件土地の賃料は,平成15年10月当時,月額金1万4000円であったが,長年低額に据え置かれ,租税等の増加や地価の上昇等近隣地代との均衡を欠き不相当となったことから,原告は被告に対し,平成15年10月16日,口頭で本件土地の賃料を平成16年1月1日から月額金4万円ないし5万円に増額 (その後月額金1万9510円に減縮) するとの意思表示をし,更に,平成18年7月29日到達の書面で本件土地の賃料を平成18年8月1日から月額金4万円(その後月額金2万2024円に減縮)に増額するとの意思表示をした。

(4 ) 被告は,原告との話合いでは賃料値上げ額に合意できず,平成16年1月以降,引続き従前の賃料月額金1万4000円を現実に提供し,原告は賃料内金として受領していたが,同年12月末頃,原告に賃料持参の際,領収書交付を求めたことから原告と諍いとなり,被告は同年12月分賃料から以後
毎月,月額金1万4000円を弁済供託し,本件土地を賃借している。


3  争点

 平成16年1月1日から平成18年7月31日まで及び同年8月1日以降の本件土地の適正な改定継続賃料はいくらか。


第3  争点に関する判断
本件土地の適正な賃料額

(1 )  改定継続賃料の算定法式としては,差額配分法,利回り法,スライド法,賃貸事例比較法が存するところ,鑑定の結果によれば,本件土地の賃料について,差額配分法,利回り法及びスライド法の3方式を併用し,各方式による平成16年1月1日時点での試算賃料(差額配分法月額2万2449円,利回り法月額1万3272円,スライド法月額1万3994円)及び平成18年8月1日時点の試算賃料(差額配分法月額2万6016円,利回り法月額1万3839円,スライド法月額1万4240円)を比較考量し,3方式の長所短所を考慮し諸要因による調整として4:1:1の加重平均により算出すると,平成16年1月1日時点の適正な改定継続賃料は月額金1万9510円,平成18年8月1日時点の適正な改訂継続賃料は月額金2万2024円が相当と結論付けており,鑑定内容における各資料の数値の採用や計算結果も適正なものと認められ,各試算資料の数値調整としての加重平均方式も, 諸要因の調整割合の評価は別として合理的なものと認めることができる。

(2 )  被告は, 本件鑑定結果が 賃貸人側に有利な差額配分法を過度に重視して,差額配分法,利回り法,スライド法の3方式による各試算資料の加重平均を4:1:1で改定継続賃料を算出するのは不合理であり,仮に不合理でないとしても,本件事案の和解案として裁判所から提示された平成16年1月1日時点で月額金1万7400円,平成18年8月1日時点で月額1万9500円の金額と比較しても増加額が大きく,合理的とみなされる複数の適正地代に関する意見があればその結果等を平均調整するのが相当であり,被告が来年以降,定年退職による収入減で家族を扶養する経済環境にあることも斟酌されたいと主張するが,本件審理中の和解案との比較は,和解提示額が根拠に基づく計算結果であったとしても鑑定結果と平均調整することは相当でなく,被告の今後の経済状況の斟酌も事情として理解はできても,本件の適正改定継続賃料を算定する要因として考慮するのは相当でない。

(3 )  本件で,適正な改定継続賃料を算定するには,鑑定の結果も踏まえ,本件賃貸借契約の経緯や当事者間の個別事情も総合的に斟酌する必要があるところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件土地の貸借は,昭和23年頃の使用貸借で始まったが,昭和38年頃,訴外亡Bが木造建物を新築した際,賃貸借契約に改められ,以後,昭和40年代後半から50年代前半の二度に亘る地価高騰期や平成初頭のインフレによる地価高騰期,その後の不況やデフレによる地価下落期等の大きな価格変動にも,期間の長短はあるものの当時1000円刻みによる賃料増加に止められ,訴外亡B生存中は比較的低額に抑えられてきたものの,被告が賃借人となった後は5ヶ月程で,直近の改定時期から1年後の大幅な増額改定要求を受けたこと,本件土地は市街地の住宅地域で最有効使用も住居等であること,本件現行賃料が,鑑定結果では,本件土地の経済的価値に基づく理論上の適正賃料とされる差額配分法による試算資料数値と大きく乖離していること等が認められ,鑑定資料の3方式による試算資料の加重平均による数値調整をするに当たっては,経済的価値に即応した性質の強い差額配分法を加重する必要性は認められるものの,現行賃料を基準要因の一つとする利回り法やスライド法による数値とも応分の均衡を保つ必要性も認められ,3方式の加重平均は2:1:1で算出した額が相当と認められることから ,適正な改定継続賃料 (100円以下切捨て) は,平成16年1月1日時点は月額金1万8000円,平成18年8月1日時点は月額金2万0000円であると認めることができる。

2  以上によれば,原告の被告に対する本訴請求は,主文認容の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。


                    名 古 屋 簡 易 裁 判 所

                              裁 判 官   渡 邊   直 紀

 


       別紙一
                        物 件 目 録
           土地
           名古屋市C区DE丁目所 在
           地 番 F番
           地 目 宅地
           地 積 104.16平方メートル

 


 

 

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