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マンション備付けのガス給湯器が故障
家主が修繕を拒否した場合の対策
(問) 私は2DKのマンションを借りている。マンションに入居時から備え付けのガス給湯器が故障した。家主に何度も修理の依頼をしたが、黙殺された。家主に修理をさせ、その費用を支払わせる方法はないものか。
(答) 民法606条は賃貸人の修繕義務を定めている。即ち「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要なる修繕をする義務を負う」と規定されている。賃貸物の保存のための修繕義務は家主にあることが明確に規定されている。
家主がこの法律の規定する義務を免れるためには、予め契約で「ガス給湯器の修繕は借家人の負担とする」との特約(特約とは法律の定めに反する約定)を結ぶ必要がある。
しかし特約が認められるには「賃貸借契約書の条項に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」(最高裁2005年12月16日判決)と特約の成立に厳しい制限加えている。特約があるからといって無条件で認められる訳ではない。相談者の場合は修繕特約がないので修繕義務は家主にある。
①民法615条で賃借物に修繕が必要な場合は賃借人が遅滞なく賃貸人にその旨を通知する義務があると「賃借人の通知義務」を規定している。
②同じく民法608条では「賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる」と「賃借人による費用の償還請求」が規定されている。
従って、これらに基づいて以下、家主の費用負担で修繕をさせる方法である。
先ず配達証明付内容証明郵便で家主に対して修繕請求をする。以下がその内容である。
「ガス給湯器が故障し、現在使用不能です(註)。業者の修理見積では*万円ということです(なお、修理不能の場合は新品と交換になる。その場合は交換工事費込みで*万円です(註2))。本書到達後10日以内に修理して下さい。もし期日までに修理して戴けない場合は、当方が業者に依頼して修理します。立替払いした修理費用は後日請求しますのでお支払い下さい。万一お支払いがない場合は、月々の家賃と修理費用を相殺することをご承知措き下さい」という趣旨のものである。
この通知を出しても、家主が修理を履行しない場合は、その内容の通りに実行する。修理費用が月額家賃分以上になる場合は、数回に分割して立替払いした修理費用を全額回収する。
ここで、内容証明郵便を出す段取りを省略して、修繕費を家賃から差し引くと家賃の一部不払いとして契約解除の原因にされる恐れがあるので注意が必要だ。
借家の修繕問題の解決法には別の方法もある。それは、家主は完全な物を貸す義務があるから、ガス給湯器の故障という不完全な度合いに応じて家賃を減額して支払う。ガス給湯器が直った時点で家賃を元に戻す方法である。しかし、これではいつ家主が修繕するか分からず、前者の方が現実的である。
(註1) 後日、家主から言い掛かりや難癖をつけられないように故障しているガス給湯器の状態を写真撮影して置く。また部品交換など修理の状況、或いは、商品の交換工事の状況を写真に撮って置くと家主とのトラブルを回避できる。
(註2) ①家主との代金トラブルを回避するためにも修理業者は出来る限り製造メーカーのサービス・ステーションに依頼する。
②見積費が発生した場合は勿論のことで修理代金と一緒に費用回収する。写真代、配達証明付内容証明郵便代金等修理修繕に関係したすべての代金は総て回収する。
③ガス給湯器が故障して、入浴できずに銭湯を使用した場合は、その代金を請求する。近くに銭湯がなく交通費を使って通った場合はその交通費も請求できる。
東京・台東借地借家人組合
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