東京・台東借地借家人組合1

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【Q&A】 借主は中途解約することが出来るのか

2006年05月05日 | 契約・更新・特約

契約書には中途解約のことが
  何も書かれてはいないが解約は可能なのか

(問) まだ1年程契約期間が残っているが、経済的理由から廃業する。だが契約書には中途解約に関する条項が何も書かれていない。貸主は残存期間家賃を全額払えば中途解約に応じると答えたが、家賃を払わないと中途解約出来ないのか。


(答) 一般的な居住用借家契約書であれば、例えば国土交通省が推奨する「賃貸住宅標準契約書」では、「(借主)は甲(貸主)に対して少なくとも30日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。
2 前項の規定にかかわらず、乙は、解約申入れの日から30日分の賃料を甲に支払うことにより、解約申入れの日から起算して30日を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる
」と書かれている。大概の借家契約書に同趣旨のことが書き込まれている筈である。この特約期間を遵守すれば、いつでも契約期間内の中途解約は可能である。

 途解約を禁止する特約がある場合は借主の利益を一方的に害する特約として消費者契約法10条に違反し、特約は無効になる。それにより借主からの中途解約は認められる。

しかし中途解約について何も契約書に書かれていない場合はどうなるか。
 民法は、「期間の定めの無い契約」の場合、3か月の解約予告で契約は終了すると規定する(民法617条)。

 また期間の定めのある契約で解約権の留保がある場合にも3か月の予告期間で中途解約を認めている(民法618条)。

 しかし、借地借家法30条の強行規定では「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする」という規定がある。貸主の場合、3か月の予告期間での中途解約は、借地借家法26条1項に抵触するので特約は無効となる。貸主の場合は借地借家法26条1項により期間の満了の1年前から6月前までの間に解約の通知をしなければならない。従って、貸主の3か月の予告期間での解約は認められない。

 期間の定めがある場合、借主の場合は借地借家法30条の強行規定に反しないので、3か月の予告期間で中途解約はできる。

 しかし、特約が無い場合、中途解約は許されない。一方の当事者は他の当事者に契約違反がない限り、一方的に借家契約を終了させることが出来ない。勿論、当事者が合意すれば中途解約は可能である。

 最近は店舗が空いた場合、次の借り手が長期間決まらないことから貸主は契約の継続を望み、合意解約には応じない。その場合、契約期間が終了するまで契約は継続し、家賃の支払義務も当然終了しない。

 以上のことから期間の定めのある借家契約は、契約期間内では借主から解約の申入れが出来ないという結論になる。 

 相談者の場合、解約が出来ないとしたら解約のために契約違反をするしかない。借主の緊急避難策は、家賃の支払を遅滞して貸主からの契約解除を待つ方法である。だが、この方法では敷金や保証金の返還でトラブルになるのは確実だ。

 相談者の場合、解約が全く出来ないのか。
 定期借家契約は原則として契約の中途解約を認めていない。しかし借地借家法38条5項では200㎡未満の居住用に限られるが、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情がある場合は解約の申入れをすることができ、解約予告から1箇月で契約は終了すると規定されている。

 これは契約後の事情変更により契約の継続が困難になった場合にまで家賃の支払義務を負わせ続けるのは借主にとって過酷過ぎるということで契約上、特約が無くても強行規定で借主の中途解約を認めている。借主の中途解約権を保障した規定に反する特約で借主に不利なものは無効とされる(借地借家法38条6項)。

 従って、相談者の場合も当事者の予測困難な事情の変化によって借家契約を継続することが著しく困難になった場合に該当するので、「事情変更の法理」により解約が認められる可能性が高い。

 

 (参考例)
 
契約書に中途解約の予告期間と解約の制裁金が書かれている場合

 契約書に中途解約する場合は、6箇月前までに書面で通知するか、或は 6箇月分の賃料(予告期間の損料)を支払うという約定に従って貸主が6箇月分の損料(564万円)を借主の保証人に請求した。
 その支払で争われた裁判では、解約は双方の合意に基づくもので、損料支払はあくまで一方的な解約権行使を補償するものなのであるから、この件では損料の支払は不要という判断をした(東京地裁1993年6月14日判決)。家賃の6箇月分の約定損料を過大と判断した結果である。

 

 民法
 (期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
1 土地の賃貸借 1年
2 建物の賃貸借 3箇月
3 動産及び貸席の賃貸借 1日

 (期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第618条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。

 借地借家法
第26条  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

第38条
5  第1項の規定(定期借家)による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
6 前2項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。

 

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