東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

共同住宅が競売、落札した不動産会社から明渡請求 (埼玉・川口市)

2012年08月17日 | 建物明渡(借家)・立退料

 埼玉県川口市(旧鳩ヶ谷市)の共同住宅の4世帯は、長い人で10数年、短い人でも3年住んでいました。
 昨年8月、共同住宅を競売で落札した不動産会社から「共同住宅を6月に買い取ったの、明渡してほしい」と突然、4世帯に通知されました。通知書は、明渡期限を11月17日とし、立退きについての話合いの提案でしたが、共同住宅の差し押さえもされていました。この通知が玄関の隙間にはさんであった世帯もありました。

 4世帯は川口借地借家人組合に加入し、交渉してきました。加入した人の中の長期居住者は抵当権設定前に入居していました(註)。裁判所の手違いか、本人からの申立てもない中で、この落札した不動産業者との明渡についての話し合いの進展がない中、いきなり、不動産業者は裁判所に強制執行の手続きを行い、11月17日、30数人が執行官とともにトラック5台で共同住宅の差押えに来ました。前日、組合員が依頼した弁護士が差押え停止の仮処分を申請し、執行当日午前に差押え執行の一時停止を勝ち取りました。

 その後、4世帯の借家人は、裁判で借家権を争い、本年5月29日、賃貸借契約の継続が確認され、立退料の支払いが認められました。10数年居住していた借家人が当初の賃貸借契約書と家賃支払いの証拠資料を保存していたことが決め手になり、立退料の支払いとなりました。

 

全国借地借家人新聞より



以下の文章は、東京・台東借地借家人組合。

(註)
抵当権前設定登記前に、賃貸借建物に入居している場合
 買受人と賃借人との対抗関係は、賃借人に対抗力があり、賃借人は、賃料を支払って引き続き建物を借りることができる。
 また、敷金返還義務は、買受人に引き継がれ、退去の際、賃借人は、買受人(新所有者)に敷金を返還請求できる。

抵当権設定登記後に建物を借りた場合
 買受人は、賃借人に引渡し(明渡し)を請求できる。
 賃貸借が競売開始前である場合、賃借人は、買受人が競落後6か月間は、賃料相当の金員を支払って建物を使用できる(民法395条)。しかし、6か月過ぎたら明渡す必要がある。

 また、敷金返還義務は、買受人に引き継がれず、退去の際、賃借人は、元の貸主に敷金を返還請求することになる。元の貸主は、経済的に破綻し、支払いができずに競売なったのであるから、当然支払い能力は有りえない。敷金返還は絶望的であり、諦めるしか仕方がない。

 なお、経過措置により、改正民法施行時(平成16年4月1日)以前から(期間は3年以内の)建物の賃借人である場合は、短期賃借人として旧法と同様に保護される。


抵当不動産の短期賃貸借制度の廃止についての経過措置
 平成16年の改正施行(平成16年3月31日)前は、抵当権設定登記後に締結された賃貸借でも、抵当不動産の短期賃貸借〔通常の土地の賃貸借では5年、建物では3年〕で対抗要件〔賃借権の登記、または、建物では引渡し、土地では借地上の建物の登記〕を備えたものについては、抵当権者に対抗することができた(抵当不動産の短期賃貸借)。

 この規定は民法の改正によって廃止されたが、これには経過措置があり、平成16年4月1日の時点で対抗要件を備えている抵当不動産の短期賃貸借については、改正前の規定が適用され、原則として抵当権者にその賃借権を対抗することができる。

 短期賃貸借に関する経過措置
 「この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法602条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による」(「担保物権及び民事執行法の改善のための民法等の一部を改正する法律」附則第5条)

 

東京・台東借地借家人組合

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