東京・台東借地借家人組合1

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【判例】 *共有不動産を使用する内縁の夫婦の一方が死亡した場合は

2011年10月26日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

 判  例

平成6年(オ)第1900号 平成10年2月26日最高裁第一小法廷判決


(要旨)
 共有不動産を共同で使用する内縁の夫婦の間では、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される

(内容)
件名 不当利得返還請求事件(最高裁判所平成6年(オ)第1900号平成10年2月26日第一小法廷判決、破棄差戻)
原審 福岡高等裁判所

 

主      文

 原判決中、上告人敗訴の部分を破棄する。
 前項の部分につき、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

 


理      由

 上告代理人保田行雄の上告理由について
 1 原審の確定した事実及び記録によれば、本件の事実関係の概要は次のとおりである。

(1) 上告人と岡部勇とは、昭和34年ころから内縁関係にあって、楽器指導盤の製造販売業を共同で営み、本件不動産を居住及び右事業のために共同で占有使用していた。

(2) 勇は昭和57年に死亡し、本件不動産に関する同人の権利は、同人の子である被上告人が相続により取得した。

(3) 上告人は、勇の死亡後、本件不動産を居住及び右事業のために単独で占有使用している。

(4) 上告人と被上告人との間では、本件不動産の所有権の帰属をめぐる訴訟が係属し、被上告人は本件不動産が勇の単独所有であったと主張し、上告人は勇との共有であったと主張して争っていたところ、右訴訟において、本件不動産は上告人と勇との共有財産であったことが認定され、上告人がその2分の1の持分を有することを確認する旨の判決が確定した。

 2 本件は、被上告人が上告人に対し、上告人が本件不動産を単独で使用することによりその賃料相当額の2分の1を法律上の原因なく利得しているとして、不当利得返還を求めるものであり、原審は、上告人の持分を超える使用による利益につき不当利得の成立を認めて、被上告人の請求を一部認容した。

 3 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 共有者は、共有物につき持分に応じた使用をすることができるにとどまり、他の共有者との協議を経ずに当然に共有物を単独で使用する権原を有するものではない。しかし、共有者間の合意により共有者の一人が共有物を単独で使用する旨を定めた場合には、右合意により単独使用を認められた共有者は、右合意が変更され、又は共有関係が解消されるまでの間は、共有物を単独で使用することができ、右使用による利益について他の共有者に対して不当利得返還義務を負わないものと解される。そして、内縁の夫婦がその共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当である。けだし、右のような両者の関係及び共有不動産の使用状況からすると、一方が死亡した場合に残された内縁の配偶者に共有不動産の全面的な使用権を与えて従前と同一の目的、態様の不動産の無償使用を継続させることが両者の通常の意思に合致するといえるからである。

 これを本件について見るに、内縁関係にあった上告人と勇とは、その共有する本件不動産を居住及び共同事業のために共同で使用してきたというのであるから、特段の事情のない限り、右両名の間において、その一方が死亡した後は他方が本件不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認するのが相当である。そうすると、右特段の事情の有無について審理を尽くさず、不当利得の成立を認めた原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、右部分につき、右特段の事情の有無について更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻すこととする。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


(裁判長裁判官・ 小野幹雄  裁判官・遠藤光男  裁判官・井嶋一友  裁判官・藤井正雄  裁判官・大出峻郎)

 

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