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判例紹介
建物の管理会社による追い出し行為について不法行為責任を認めるとともに、賃貸借契約の解除を認める確定判決を得ていながら、公権力による明渡しを実行せず、原告の居住を黙認した上、個別に管理会社に滞納家賃の取立等を委任した家主にも、追い出し行為に関する責任が認められるとした事例(姫路簡裁平成21年12月22日判決)
【事案の概要】
A(借主)とB(貸主)は平成15年にアパートの賃貸借契約を締結、C社はBとの間で管理契約を締結し、賃借人に対する家賃等の集金等を委託していた。平成18年、Aの家賃滞納によりBは賃貸借契約を解除する訴えを起こし、同年末、契約解除を認める判決が確定するも、Aはその後も賃料を滞納しつつも本件建物に居住し続け、一方、家主Bは、賃料相当損害金を受領し続けていた。
平成20年6月、C社の社員DがA宅に赴き、張り紙を貼ったり、家賃督促のハガキを入れたり、ドアの鍵部分にカバーを掛けたりした。その後、Aが一部家賃を入金したことによりC社は鍵を開けた。平成21年4月末、DがA宅に赴き、張り紙を貼ったり、家賃督促のハガキを入れたり、同年5月、ドアの鍵部分にカバーを掛けたりした。また後日、DがA宅に赴き、ドアに「荷物は全て出しました」との張り紙を貼った。
【判旨】
Aに恒常的な賃料あるいは賃料相当損害金の不払が存在したとはいえ、上記取立行為は社会的行為として許されるものではなく、何ら言い訳のできない不法行為といえる。
家主Bは、本件賃貸借契約について、裁判所の確定判決により債務名義を得ているにもかかわらず、公権力による明渡しを実行せず、Aの居住を黙認した上、Aの滞納家賃の取立等のため、個別にC社にそれを委任し、その結果、C社の社員Dが、Aに対し不法行為(取立行為)を行ったのであるから、Bに不法行為責任が存することは明らかである。
【寸評】
管理会社による滞納家賃の取立行為(追い出し行為)が許容される限度を超えたために不法行為責任が認められた事例であるが、明け渡しを認める確定判決を得ておきながら実力行使による追出しを依頼した家主にも同様の責任を認めた(慰謝料額は36万5000円)。近時の悪質な滞納家賃の取立、追い出し行為に警鐘を鳴らす事例として紹介する。
(2010.06.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
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