あの林哲司のバックアップで1980年にシティポップス作品を残す「大宮京子&オレンジ」の元リーダー、三浦年一による1983年作。45回転5曲入りの12インチという変わった体裁でリリースされており、ミニアルバムと言うよりは今で言うところのマキシシングル的な作品です。ちなみにタイトルにはIと付いていますが、あいにくII以降がリリースされているという話は聞いたことがないので、セールス的にはそれほど振るわなかったのでしょう。三浦年一なるシンガーのその後についても良く分かりません。ただこの12インチを聴く限り、角松敏生やオメガトライブあたりに通じるオーシャン系J-AORとして内容的にも充実しており、本人の作曲力や歌唱力も水準以上なので、個人的にはこの一枚だけで消えってしまったのが悔やまれます。さて、そんな不遇な本作ではありますが、何気に一部のJ-AOR愛好家からはカルト的人気があり、中古市場でも一定以上の価格で取引されていたりするので知らないと言う方は要注目。実は演奏と編曲でAB'sが全面参加しており、シンガー三浦年一の作品というよりはむしろ松下誠在籍時の全盛期AB's関連作品として、その筋では注目を浴びているようです。なかでもとりわけ人気があるのがB-1のFriday Night。アレンジを務めるのはバンドの中心人物である芳野藤丸や松下誠ではなくベーシストの渡辺直樹ですが、これがライトメロウな跳ね系ミディアムで、爽快感のあるJ-AORとして非常に秀逸な作品に仕上がっています。正直この1曲のためだけに買ってしまっても損はないくらいですが、その他の曲でも芳野藤丸がアレンジを務めるB-2のWedding Bellや、松下誠がアレンジを施したA-2のTokyo Flightはこの手の80年代J-AORとしては水準が高く、トータルとしてコストパフォーマンスが高い一枚と言っていいでしょう。discomateなるマイナーレーベルからリリースされており、前述のようにセールス的にも振るわなかった作品のため、あまりどこにでもあるという類のレコードではありませんが、興味のある方は是非探してみてください。あいにく運命のいたずらによって角松敏生や杉山清貴にはなれなかったシンガーの作品ですが、このまま埋もれさせてしまうには少しばかりもったいないかと。。。
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