(前回からの続き)
前回ご紹介した上記のユーロ圏6か国の住宅価格推移ですが、直近(2017年第4四半期時点)の指数の大きさを順番に並べると下記のようになります(カッコ内が同指数:2015年第1四半期値を100)。
独(119.4)>蘭(117.7)>仏(108.0)>西(106.8)>伊(98.2)>ギリシャ(94.0)
先述のように、独、蘭、仏、西の4か国等の住宅価格はこの3年ほどでかなり上がっています。ドイツなどは上昇率が2割にも達し、資産バブルが発生している状態といえそうです。これ、明らかに2015年3月に欧州中央銀行(ECB)が開始した量的緩和策(QE)の「おかげ」でしょう。つまり長期金利が各国のファンダメンタルズを反映する水準以下に引き下げられ、ローン金利が低くなった結果、住宅投資が活発になったということだと考えられます。いっぽうでイタリアおよびギリシャでは同価格は引き続き下降中です。ということはこの2国にとっては上記「おかげ」が足りていない―――まだまだ金利が高い―――のでしょう・・・
その(長期)金利ですが、低いところは(10年物)国債価格が高くなり、高いところは低くなるわけです。この国債価格について上記6か国を(10年物)序列化した不等式が以下になります(カッコ内は3/9時点の長期金利値)。
独(0.64%)>蘭(0.68%)>仏(0.89%)>西(1.42%)>伊(2.00%)>ギリシャ(4.14%)
ここで注目は、トップのドイツから最下位のギリシャまで、この国債価格の序列と上の住宅価格上昇率の序列が一致すること。その意味することは上述のとおりで、不動産に代表される各種資産市場が熱を帯びるか冷え込むかは(長期)金利の動向次第、ということなのでしょう。これ、まあ当然ではありますが、両不等式における国々の順番がぴたりと一致するのは興味深いと思います。
さて、こうした各国バラバラな?経済状況下でECBは今後どのような金融政策を打つべきなのでしょうか。わが国のTVニュースを見ると、欧州では景気が過熱気味になっているのでECBはQEの幕引きに向かうだろう、なんて見方が多いような印象を個人的には受けます。でもそれってあくまでもドイツなど一部の国々の情勢に過ぎず、上記のようにフランスあたりから(国債価格・住宅上昇率が)「下」の国々はECBの支え(国債とか社債の買い入れ等)がないと厳しい状況に逆戻り―――長期金利が跳ね上がって資産デフレが深刻化し、金融危機がまたも勃発―――してしまいそうです。
もちろんそれによって困るのは南欧債務国だけではありません。ドイツなどの、上記不等式では上位にある国々の銀行はイタリアなどの国債やら社債をしこたま抱えているわけです。これらの価格が暴落(金利が暴騰)したら、その主要な所有者である独銀等もまた過小資本とか債務超過状態に陥ってしまい、結局はドイツ・・・の納税者が巨額の金融システム救済資金を拠出せざるを得なくなります。そうした事態はドイツ人だって回避したいところでしょう・・・
・・・このように考えてみると、ECBは・・・今後も「QEを続けるしかない」で決まり、であることが分かります(?)。