(前回からの続き)
先述のとおり、アメリカでは「リーマン・ショック」(2008年)の反省に立ち(?)、銀行に対するさまざまな規制がこれまでに設けられてきました。そのためいまの米銀はヘッジファンドに代表される「シャドー・バンキング(影の銀行)」ほどはリスキーな投資等に手を染めていない、と考えられますが・・・じつはそうでもなく、あいかわらずキワドイことをやっているみたいです。まあ彼らはほとんど「Too Big to Fail」(大きすぎてつぶせない銀行)ですからね。何をしても許してもらえるし、助けてもらえるわけで・・・(?)
たとえばデリバティブです。ブルームバーグの報道によれば、米銀3位のシティグループは今年6月時点で62兆ドル(約6900兆円!)ものデリバティブ未決済契約高を抱えているとのこと。2009年同月の37兆ドルから69%も急増し、米銀最大手のJPモルガン・チェースの同契約高68兆ドルに迫っているそうです。しかも同行のこのデリバティブの92%以上が取引所で売買されていないので、金融当局もリスクの事前察知ができないそうな・・・。
このデリバティブ契約―――じつにコワイです。この先の株&債券の「双子のバブル」崩壊でどこかの国とか企業等がデフォルトしてこれらの決済がちょっぴり生じただけで彼ら米銀が1,2行、軽くすっ飛ぶほどの破壊力を見せつけそう・・・。何せシティの上記契約高の1%だけでも6000億ドル!米銀全体ではいったいどれくらいの「地雷」が仕込まれているのか、当局すら分からない・・・。
デリバティブだけではありません。米銀はリーマン・ショックの後も、凝りもせずに(?)ハイリスク・ハイリターンな投資を活発化させているようです。実際にこの9月、FRBは、米銀の資産勘定におけるレバレッジドローンの増加に対し、所定の基準を十分に履行していない銀行が多いことを指摘したうえで、それに対応した追加資本が必要になる可能性があることを警告しています。それはそうでしょう。資産バブルの収縮が始まれば、真っ先にこれらから不良資産化していくわけですから。よって、彼らには一刻も早く自己資本を増強してもらわないと本当にマズいことに・・・。
といった米銀に関する実情、および本稿でこれまで綴ってきた諸状況をふまえると、今回の前代未聞「双子のバブル」崩壊の衝撃波は次のように伝播するのではないか―――「三の丸」ヘッジファンド&新興国(ついでに中国?)、「二の丸」PIIGS国債&欧州金融界、そして「本丸」米金融システムの中枢・銀行群へ―――と予想するわけです。そのときは・・・米銀に兆ドル単位(!?)の巨額公的資金の投入が必須(!?)となりそうですが、日本と違って、アメリカにはそれができない・・・。唯一できることは、FRBによる際限のない中銀ファイナンス・・・。ということは、最終的に(日本を除く?)世界金融恐慌、さらにはユーロ&ドル危機(?)の発生は不可避・・・か!?