(前回からの続き)
6月のインフレ率が前年同月比で8.5%もの高水準となったイタリア。であれば、この鎮静化に向けて同国の中央銀行が金融引き締め(利上げ等)を、となるのが普通の国の方向性ですが、そう簡単にはいかないのがイタリアを含むEU加盟国のやっかいなところです。なぜならEUは「通貨金融統合(中銀が欧州中央銀行[ECB]で一本化)・財政不統合(財政は各国任せ)」だから、ECBが動くと、金融緩和/同引き締めの違いに関わらず、それが行き過ぎになる国と足りなさ過ぎになる国がどうしても出てきてしまうため、結果として多くの国にとっては自分にとって適当な金利水準を得られない―――一方では金利が低すぎ(インフレ傾向)で他方にとっては金利が高すぎ(デフレ傾向)となる―――ためです。
そこは、こちらの記事等でご紹介の、EU各国の国債価格を高い順に(金利の低い順に)並べた不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」が示すとおりです。常識的に見て、こんな(財政状態、すなわち経済力が)バラバラなところで一つの中央銀行が物価や金利を上手にコントロールできるワケがないし、やはりできていないわけです・・・
ご存じのように、ECBは先日、約11年ぶり(!)に0.5%の利上げを決定しました(具体的には預金ファシリティ金利をマイナス0.5%からゼロ%にして、2014年から続けてきたマイナス金利を終了させる、といったもの)。そのあたり、イタリアを含めたEU全体の高インフレに対処するには当然の動きに思えます・・・が、そうなると今度は、利上げにともなう金利の上昇(国債価格の下落)の負の影響が、上記不等式で下位にある国々に、同上位の国よりも大きく及んでしまうことになります。つまり、財政資金調達コストが、自分の経済力では賄いきれないくらいに高くなり過ぎてしまうということ・・・って、ここでいちばん注意するべきは、やはりイタリアでしょう。同国の経済規模はEUで3番目と大きいうえ、財政赤字水準もデカいですからね・・・
そのあたりは金融市場でも強く意識されているようで、イタリアの(長期)金利は直近で乱高下しています。6月(つまりECBの利上げ前)には一時4%を超え、何と(!?)あの?ギリシャの長期金利をも上回る(国債価格で、ギリシャ>イタリア)という、上記不等式の序列が逆転するという異常な局面が出現しました。ここはマーケットがイタリアをターゲットにECBを試す動きだったといえるでしょう・・・って、イタリアを支える気があるのかどうか、ということで。結局ECBはこれに負け(?)、その直後の理事会で、満期となった「パンデミック緊急購入プログラム」の再投資時に南欧諸国の国債を重点的に買い入れること等を決めました・・・って、ぶっちゃけイタリア救済にもっともフォーカスしているのでしょうECBは。
といった経緯もあって(?)、イタリアの長期金利は、ECB利上げ発表後はむしろ下がって、現時点(日本時間25日22:00)で3.4%前後です・・・って、あれ?ギリシャ(同3.1%前後)よりも依然として高い?ということは市場は、ECBの購入策は生ぬるい、もっとイタリア国債を買え!とせかしている?まあそうでしょうね、こんな高金利でイタリアが耐えていけるはずはないのですから・・・