(前回からの続き)
本稿では、ロシアのメドベージェフ前大統領が昨年末にツイートした「2023年の10大予想」について思うところを綴っています。
で、同予想では今年、ユーロとドルが準備通貨としての流通を終えることになる、としています。これについては、わたしも(年内かどうかはともかく、近い将来)そうなるだろう・・・というより、そうならざるを得まい、と考えています。前述、そして本ブログで何度も論じたように、両通貨そして欧州&アメリカともに「真性インフレ」(実質マイナス金利状態の永続[を甘受する以外にない状況])が現出している以上、ユーロもドルも通貨としての信認を失うのは時間の問題ですからね・・・
となると、では欧州やアメリカはどうなる?ですが、まず前者について同氏は・・・EUが分裂して大混乱に・・・って具体的には、共通通貨ユーロが利用されなくなり、やがてドイツが周辺諸国(ポーランド、チェコ、バルト三国等)とともに創設した「第四帝国」(The Fourth Reich)とフランスとの間で戦争が勃発する、等と予想しています・・・
う~ん・・・これ微妙(?)だな~。まずユーロが使用停止・・・に近いほどの危機に陥るのは上述のとおりなので同意。ですが、第四帝国~独仏戦争のところは、99%ない、と断言できますね。そこは、そのユーロの危機の本質が上記の(真性)インフレにあることから次のように考察できるところと思いますよ・・・
で、そのインフレですが・・・(こちらの記事等で書いた高~いハードルを超えなければならないが)ユーロ圏にあってドイツ(と一部の国々)だけは鎮圧できる可能性があります(?)。というのも、本ブログでは以前から書いているように、ユーロ圏では長期国債の価格が高い順(長期金利の低い順)に「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」が成り立つ中、この不等式で最上位のドイツは、ユーロよりも強い、すなわち実質金利の高い独自通貨(新マルクとか)への切り替えができる・・・かもしれないためです。であれば近い将来ドイツでは、インフレ解消を公約に掲げて支持を得て政権に就いた政治勢力が・・・マルク&「ブンデスバンク」(ドイツ連銀による独自の金融政策)を復活させて「Gexit」―――ユーロ圏からの離脱―――を果たすかも・・・(?)
・・・って、そこで最大の政治外交的な問題が、メドべージェフ氏も言及した「フランス」の扱いになるでしょう。こちらの記事でも述べたように、ドイツとフランスの枢軸こそ戦後欧州の平和と安定の絶対的な条件ですが、「Gexit」でドイツとフランス等諸国とが「袂を分かつ」ことになると、両国は再び対立関係に陥って・・・みたいな過去の暗い歴史の繰り返しに・・・
・・・とならないように、という決意が共通通貨ユーロの設立につながった、という面があるから、(希望的観測含みですが)ドイツはおそらくフランスを見捨てず、逆に抱き込んで現行のユーロ圏を脱しようとするのではないか、と考えるものです。そのあたりフランスは上記不等式でユーロ圏の真ん中あたりにあるから、ドイツにすれば、フランスと行動を共にすることで、単独の場合よりも(仏支援等の財政負担が増す、等により)インフレ率が上がるおそれはあるが、フランスとの友好関係が失われるよりはマシ、ということで・・・
このように、何だかんだで独仏両国は協調していく(べき)・・・だろう(?)から、両者の戦争はまずない、と予想します。もっとも、この(比較的・楽観的な)シナリオにおいても、ユーロ圏では独仏等とそれ以外の(イタリアなどの、もっと弱い)国々との分裂は避けがたい(?)など、欧州の混迷の度合いは深まるいっぽうですが・・・