(前回からの続き)
これまで綴ってきたように、イタリアでは大手銀の一角モンテ・ディ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)が資金繰り倒産の瀬戸際にあるわけですが、イタリアでアブナイ銀行はモンテ・パスキだけではありません。繰り返しますがイタリアの金融機関は総額で3600億ユーロもの不良債権を抱えていると見積もられているわけですからね。したがって今後も同行に続いて経営危機に陥る銀行が出てくることは避けがたいでしょう(?)。
とりわけ厳重警戒(!)すべきは総資産額で同国第一位のウニクレディト。この銀行についても50億ユーロの巨額増資が検討されていることが明らかとなっています。それだけ資産の劣化が進み、自己資本が目減りしているということなのでしょう。ウニクレディトはモンテ・パスキとは違って「大きすぎてつぶせない」(too big to fail)銀行です。よってこの増資計画が失敗でもしたら、イタリアのみならず欧州ひいては世界の金融システムに甚大な影響を与えそうです。そのとき、モンテ・パスキですら持て余している伊当局に、単独でこのデカすぎる銀行を助けられるわけはない・・・
・・・ということで、どうやらイタリアの金融システムが機能不全に陥り、それが全欧州に金融恐慌を引き起こす可能性が非常に高くなっているみたい・・・で、その発火点が、モンテ・パスキの経営破綻―――てなことになるのではないか、と危惧する次第です。
そして当然、このイタリア危機は欧州にとどまらず新興国や・・・金融システミックリスクの本丸アメリカにまで伝播するでしょう(?)。なぜならイタリアそして欧州やアメリカの金融機関は密接な関係に・・・一例を挙げるとデリバティブズで一蓮托生の関係にあるから。モンテ・パスキなりウニクレディトなりが逝ってしまったら、CDS(Credit Default Swap)の大規模決済が発生し、それが欧州ばかりかアメリカの大手銀行に巨額の支払い履行という大ダメージを与えかねない・・・。だからこそ上述モンテ・パスキの50億ユーロ資本増強の引受先に米銀JPモルガン・チェースがなったのではないか・・・って、モンテ・パスキが破綻したら自分もヤバくなりますからね、CDS等をしこたま抱えているだけに・・・。もっともどうやらこの計画、うまくいきそうにない―――誰もおカネの出し手がいないことは前述のとおりですが・・・
いまのこの瞬間もイタリア、そして欧米を含む全世界の金融情勢は刻々と悪化していると思われます。主要国で唯一、これらとの関わりが希薄なわが国がすべきことは、以前から書いているように「君子危うきに近寄らず」の「巣ごもり」ですからね・・・
(「イタリア、世界的金融危機の発火点となるか」おわり)
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