(前回からの続き)
報道によると英国ではインフレが想定以上に進んでいることが確認されました。昨年12月の消費者物価指数は対前年同月で1.6%上昇と、11月の1.2%からさらに上がりました。食料品とエネルギーを除くコアインフレ率そして小売物価数はそれぞれ2014年8月、同7月以降では最大の上昇率を記録しました。輸入物価指数は16.9%も上昇し、2011年7月以来の伸び幅となったとのことです・・・
英国でこのようにインフレが加速している理由は、昨年6月の「Brexit」(英国のEUからの離脱)決定により、英国が最大の交易相手であるEU諸国との経済優遇関係を失うのではないかとの見方から引き起こされたポンド安にともなうものといえます。実際にポンドはBrexit直前(昨年6月22日)から現時点(3月29日現在)までの間に対ドルで15.2%、対ユーロで11.6%も下落しました。わずか9か月間でこれほどドル・ユーロに対して自国通貨が安くなれば、上記のように英国で輸入インフレが激化するのは至極当然でしょう。
「アベノミクス」すなわち通貨安インフレ万歳一色に染まった昨今の日本では不思議に思われる方が少なくないかとは思いますが(?)、この種の急激なインフレ、世界的には国民生活にネガティブな影響を与えるものと捉えられています。まあ常識的にはそうでしょう、モノの価格がどんどん上がって喜ぶ人はそうはいないでしょうから・・・(って、この国にいるとそんなのは自分くらいで、ひょっとしたらガソリン代は高いほうがうれしい人のほうが圧倒的多数派なのでは・・・なんて感じさせられる今日この頃ですが・・・)
で、英国民もこの通貨安にともなう物価高を苦痛に感じているはずです。なかでもスコットランド住民はなおさらでしょう。もともと同住民の多くはEUに残りたいと思っていたにもかかわらず、自分たちが帰属する英国はBrexitを決めてしまったうえ、これにともなう英国通貨の下落で起こった急速な輸入インフレで日常生活が脅かされるわけですから。であれば彼ら彼女らの多数が「このまま英国に居続けて大丈夫なのだろうか・・・」と不安な気持ちを募らせるのはもっともです・・・
ご存知のように、そしてこちらの記事等でも綴ったとおり、すでにスコットランドは2014年に英国からの離脱を問う住民投票を実施し、その結果は「英国残留」となっています。でも・・・あれから状況が一変しました。その大変化の一つ目は前述のBrexit。そして二つ目は今回書いたポンド安・・・というか、それにともなって巻き起こったインフレでスコットランド住民がイヤでも感じさせられるポンドの今後に対する不安感の高まり、といったところです。この二つはスコットランドの人々に「もう一度、住民投票をしよう!」という気にさせる大きなインパクトを持つものといえるでしょう。