(前回からの続き)
財務大臣が、中国の当局による過剰な市場介入を普通の国ではありえない、と驚いて見せながら、同国に対していっそうの市場透明化を求めるという、金融取引の先進国として当然の指摘をしておきながら、一方で他の大臣が中国のファンダメンタルズは揺らいでいない、とか、中銀総裁が同国は政策手段を持っているのに市場は悲観的になり過ぎ、と、前者とは逆のニュアンスのコメントを発して中国の現状をポジティブに捉えたり、その市場対策を評価したりする―――先日のG20(主要20か国・地域財務相・中銀総裁会議)で聞かれたこの一見、矛盾するかのような中国観に安倍政権・黒田日銀の政策的スタンスがよく表れているように感じます。
前者の麻生大臣の発言内容は、ある意味で安倍政権の対中強硬姿勢の反映とでも解釈できそう。というのも、こちらの記事とか本稿前段でも書いているように、そこにはマーケットの透明性向上、つまり金融自由化を通じて、資本流出および人民元の弱体化を促すことで、台頭著しい中国をけん制しよう、という含意がある(?)ように思えるからです。
まあ中国当局がこのあたりになかなか応じようとしないのは、それだけ(資本逃避や人民元の対ドル・円レート下落を食い止める)自信がないことの表れでしょう。この金融取引の垣根撤廃というハードルを乗り越えなければ、人民元が晴れて円などと並ぶハードカレンシーとかSDR通貨になり上がることは難しいはずですが・・・
話を戻して後者(甘利経済再生担当相・黒田日銀総裁の見方)のほうは・・・「カブノミクス」(株のみ)とでも表現できる「アベノミクス」唯一の(?)取り柄である株高を保つための方便のように聞こえます。つまり、胸の内では中国はヤバイことが分かっているが、そんな懸念の思いをこの国の経済閣僚や中銀幹部がポロッとつぶやいたら、ただでさえ中国経済の減速感を理由に売られている日本株が(外国人投資家によって)さらに売り込まれ、カブノミクスの資産効果が激減するうえ、舌禍を招いた責任を問われてしまうかも・・・だから本心では右翼として(?)中国のドタバタぶりを小気味よく思いながらも(?)、これ以上の株価の下げを食い止めたいばかりに口では特段の問題なし!と左翼となって(?)中国のやり方を擁護するようなことを言わざるを得ない、といった感じ・・・
中国をあれほど嫌っておきながら、コケそうになったら大丈夫、なんて必死にかばってみせる・・・右翼に叱られようが何だろうが(?)、すべては株のため―――このあたり、いかにアベノミクスが、はかなく危うい「リスクオン」に依存しているかを痛感させられるところです。で、その「リスクオン」が間もなく終わる・・・(って、とっくに終わっている?)