(前回からの続き)
アベノミクスは円安輸出攻勢にほかならない、なんて言うと、「けっしてそうではなく、アベノミクスとは年率2%のインフレを起こして経済を刺激する政策のことだ」といった声が返ってくるはずです。
たしかにそのとおり、安倍政権も黒田日銀もインフレ目標こそ掲げましたが、円安で輸出攻勢に打って出る、なんて言っていませんからね。まあ黒田総裁が当初しきりに「Jカーブ効果」を口にしていたことからも想像できるように、もちろんアベノミクス関係者は本音では円安の輸出促進効果に期待を寄せていたのは間違いないでしょう。前述のとおり、円安のメリットはそれくらいしかないのだから。でも、そんなことを大っぴらに発言したら、輸出先に当たる欧米諸国から「日本は通貨安を武器に貿易戦争を吹っ掛ける気か!?」と猛反発されてしまい、円安誘導ができなくなるので、表向きは黙っている・・・といったあたりでは?
で、そのインフレターゲットですが・・・過去記事「なぜアベノミクスのインフレは悪質なのか」「インフレ政策が日本で不適切な理由」などでたびたび指摘しているとおり、日本経済にとって「百害あって一利なし」と断言できるほどの悪性度MAX策。重複するので詳細は書きませんが、端的に言えばコレ、ガソリン代をつり上げると経済状態は良くなる、というに等しい。そんなことがこの国で起こり得ますか?以前からのたとえのとおり、善玉コレステロールが身体に良いと聞いた医者が、コレステロール全般が身体に良いと勘違いし、肥満体の人に、よりによって動脈硬化を引き起こす「悪玉コレステロール」が入った食品の摂取を勧めるようなもの。こんな〇〇医者なんて医学界にいるはずないでしょうが、日本の政治経済界、そしてマスコミ界には・・・
・・・円安を利した輸出振興は許されず、インフレターゲットもこのようにネガティブ・・・とくれば、やはりこれしかないでしょう。「カブノミクス」つまり「株のみ」、要するに、円安株高を促して高まった資産効果で景気回復を図る、というものです。「株が上がるから円安は良いことだ!」というわけ。
・・・これ、経済政策の在り方としてそもそもオカシイ。金融市場に働きかけて実体経済を浮揚させる、なんて、米や野菜や肉といった主食をとらないでサプリだけで大きくなろう!というのに近いでしょう。経済大国・日本がそんなことで力強く成長できるわけがない。でもまあ、円安効果はカブノミクス以外に見出せない、というのなら考えてみますか・・・
ここであらためて確認しておきたいのは、いまの日本で株高となるときに、どうして円安になるのか(あるいは、円安になると、どうして株高になるのか)、ということです。これはいうまでもなく「現在の日本株式市場で主役の外国人投資家が日本株を買うから」ということになります。ではなぜ外人たちが日本株を買うと円安になるのでしょう?それは彼ら彼女らが「円キャリートレード」をしているため。