(前回からの続き)
これまで論じたようなことから、もし産油国が自前の石油にリンクした仮想通貨のマーケットへの導入および流通に成功したら、米ドルの「石油交換券」としての役割は低下し、アメリカは危機的な状況に追い込まれると思われます・・・がこれ、あくまでも想像上の話です。実際にうまくいくのかどうかについては何とも微妙といった感じでしょう。
このあたり、ベネズエラの「ペトロ」(Petro)を例に上げて考えてみます。本稿一回目で書いたように、同国がこのタイミングでその発行に踏み切ったのは、まあ長期的には先述の狙いがあるのでしょうが、短期的には・・・ぶっちゃけ「ドル」を集めたいからにほかなりません(?)。なぜならベネズエラは巨額ドル借金(約1300億ドル?)の支払いにこの瞬間も追われまくっているからです。さらにペトロ1億単位の発行で同国が得られる予定のドルは総額50億ドル程度に過ぎません(って、楽観的過ぎる印象・・・)。ということは、同国はドル欲しさにペトロをもう1億単位、さらに2億単位などと、次々に振り出していく可能性が高そう・・・
・・・と考えてみると、ペトロもまたドルと同じく(?)、単位当たりの価値低下が止まらないおカネすなわちインフレ通貨に堕ちてしまいそうです(?)。つまり、当初の1ペトロ=ベネズエラ産原油1バーレル(=60ドル:おおむね現在の原油1バーレル価格)を守れずに同0.9バーレル、0.8バーレル・・・となっていくという意味です。こうなってしまってはペトロの信認は定まらず、ドルを脅かす仮想通貨にはとてもなれそうにない、ということに・・・
そもそも今般の1ペトロ60ドルという価格設定自体が高過ぎでしょう(?)。その不確実性を差し引けば6割ディスカウント価格(24ドル?)くらいがせいぜいなのではないでしょうか。となると上記50億ドルの調達は困難で、やはり同国はこの後、ペトロの大量発行に乗り出すしかなさそうです、1ペトロで原油1バーレルの交換が履行できないくらいに・・・(?)
さらにいえば今後、原油価格は安くなる、少なくとも高くなることはそうはないと予想されるところも石油リンク型仮想通貨の将来を不透明なものにします。世界各地の既存油田に加え、北米大陸を中心にシェール資源の開発が進むいっぽう、再生可能エネルギーとか電気自動車等の普及といった脱石油につながる動きもいっそう加速しています。こうした需給両面での大変化をふまえると、石油の価値はこの先、少しずつ下がっていくと考えるのが自然でしょう(?)。となると当然、当該通貨の価値もこれに比例して低下し、その発行国の購買力もまた落ちていくわけで・・・
とどめは・・・ドル=石油交換券の地位絶対死守を目論むアメリカの石油リンク型通貨つぶしに向けたアクションです。現在アメリカはベネズエラに対して厳しい経済制裁を科していますが、その本当の目的はこれによってマドゥロ現政権が進めるアメリカやドルの脅威となる取り組みを破綻させようといったあたりでしょう(?)。もちろんそんな本音は口には出せませんので、表向きの理由としては同政権の非民主性を糾弾するため、などということにして・・・