なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

翌日に退院

2023年07月11日 | Weblog

 日曜日の当直だった先生は2人の患者さんを入院させて、月曜日には2人とも退院にしていた。

 一人は34歳女性で、下腹部痛だった。糖尿病で地域の基幹病院糖尿病科に通院している。持続型インスリンも使用していて、HbA1cは8~9%で推移しているそうだ。腹部所見は腹膜刺激症状はなく、発熱や炎症反応の上昇はなかった。

 痛みは間欠的だった。基幹病院からブスコパンの処方があり、同じ症状で他の病院を受診したこともある。ブスコパン注(鎮痙剤)で一時的には腹痛が軽快することを確認していた。(最近はやらないが、ブスコパン注が一時的効けば、腹膜炎らしさはなく、保存的にみれる)

 腹部CTで便が大量に貯留している。便が多すぎて読影しがたいが、遊離ガスや炎症像はなかった。その日浣腸をして排便があったが、症状が続いているので入院とした。

 翌月曜日の朝にも浣腸をして排便があり、症状は軽快した。その日のうちに退院となった。

 

 もう一人は94歳女性で、路上で倒れていると通行人が通報していた。救急隊到着時から会話は可能だった。搬入時、見当識障害が明らかにある。

 一人暮らしで病院に来た家族の話では「歩くのが好きで」ということだが、徘徊ということなのだろう。これまでは無事に家に帰っていたのだろう。夕方に搬入(当直時間帯に代わったばかり)されたが、その日は暑く、熱中症の影響もあったのかもしれない。

 頭部CTでは脳委縮のみで脳血管障害の所見はなかった。血液検査も異常はない。入院後にも心電図のモニターと点滴を外して廊下を歩行していた。翌月曜日には家族に迎えに来てもらって退院となった。

 

 いずれも重症疾患を扱う基幹病院より、当院向きの患者さんたちではあった。

 

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いつものお婆さんがいない

2023年07月10日 | Weblog

 先週金曜日の午後は救急当番をしていた。市内の救急隊から自宅で倒れている91歳女性の搬入依頼がきた。

 その女性は一人暮らしだった。ふだんは家から出て、朝夕の登下校する小学生に見送っていた。簡単な挨拶をしたり、手を振ったりしていたようだ。

 その日の朝はいつも通りだったが、夕方にはいなかった。不審に思った小学生が付近の大人に訴えた。近くの交番に連絡がいって、警察官がきた。呼びかけても返事がなかった。

 鍵がかかっていたので、窓ガラスを割って室内に入ると、居間でその女性が倒れていた。呼びかけると小声で返事はする。(かなりの難聴がある)その日は市内の気温は35℃あり、室内は相当暑かったそうだ。

 救急隊は右下肢の痛みのは気づいていたが、どちらかというと熱中症のような報告だった。右下肢をちょっとだけ上げるように伝えた。足の付け根をかなり痛がりますという。大腿骨近位部骨折があるようだ。

 午後4時過ぎだったので、細かな報告はなしにして、整形外科医が帰る前に急いで来てもらうことにした。バイタルは問題なく、会話も可能だったので、すぐにX線撮影を行った。

 右大腿骨転子部骨折があり、整形外科医に報告した。それから点滴・採血をした。本人に訊くと4日前に転んだというので、転倒の原因があるかも検査した。

 頭部CTは脳委縮のみで脳血管障害はなかった。胸腹部CT(大腿骨まで入れて)も撮影したが、肺炎もなく、骨折以外の異常はなかった。

 血液検査では筋原性酵素の上昇と脱水傾向はあったが、補液だけで改善しそうだった。整形外科で入院となった。

 

 現在整形外科の手術を再開する準備をしているが、まだ予定は経たない。今回も月曜日になってから地域の基幹病院整形外科に連絡して、手術日直前に転送ということになった。

 それにしても、小学生が気づかなかったら、あるいは気づいてもそのままにしていたら(大人に報告しなかったら)、熱中症で危なかった。

 

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誤嚥性肺炎

2023年07月09日 | Weblog

 飯塚病院呼吸器内科の吉松由貴先生が、誤嚥性肺炎の本を数冊出版されているので、購入している。誤嚥性肺炎に熱心に取り組んでいる若手の先生で、大学で基礎研究もされているそうだ。

 著者おひとりで書かれた本(単著)の方が、最初のとっかかりとしては理解しやすいと思う。複数の著者の本だと、個々の項目は詳細だが、全体像がつかみにくい。

 下記の本が一番教科書的に記載された本で、ここから広げていくのがいいようだ。

 

 薬剤による誤嚥性肺炎の予防

 

 原疾患の治療薬 

 パーキンソン病・(重度の)逆流性食道炎・COPDなどは、原疾患に治療を工夫(強化)することで、誤嚥性肺炎の予防につながる。

 ワクチン

 肺炎球菌ワクチンは誤嚥性肺炎の予防効果がある。肺炎球菌が口腔内に定着していることが多いことによる。65歳以上の患者さんでは、23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV、ニューモバックス)の定期接種が推奨されている。(5年以上経過で再接種)

 慢性呼吸器疾患など肺炎に対して特にハイリスクの患者さんでは、先に13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13、プレベナー)を接種して、後にPPSV23を接種することで予防効果が高まる。

 アマンタジン(シンメトレル)

 パーキンソン病や脳梗塞後遺症の意欲低下に対して用いられる。サブスタンスPを介して肺炎の予防効果がある。活気や食欲、食事中の覚醒度が改善する。ミオクローヌスや意識レベルの低下なども報告あり。少量ずつから試すが、興奮・苛立ち・せん妄に注意する。

 イミダプリル(タナトリル)

 ACE阻害薬。サブスタンスP濃度を上昇し、咽喉頭の感覚が改善することで嚥下機能を改善する。脳卒中における誤嚥性肺炎の予防目的に投与を考慮してもよい(グレードC1、脳卒中治療ガイドライン)。誤嚥性肺炎を来しやすい患者さんに降圧薬を使うならイミダプリルを使ってみる。

 シロスタゾール(プレタール)

 サブスタンスPの濃度上昇により肺炎の頻度も1/5に軽減する。脳卒中ガイドラインでグレートC1。

 β遮断薬

 β遮断薬内服中の患者さんは肺炎の罹患率が低い。サブスタンスP濃度が上昇する。(COPDには逆行?)

 漢方薬

 半夏厚朴湯:サブスタンスPを介した嚥下改善作用。肺炎発症率と食事摂取量が改善。

 六君子湯:食道下部や胃の蠕動を改善して、胃食道逆流やそれに伴う合併症を予防。特に胃切除後の繰り返す誤嚥性肺炎で効果。

 マクロライド系抗菌薬

 エリスロマイシンやクラリスロマイシンの少量長期投与。慢性気道感染に対する予防効果や、モチリン作用を用いた胃食道逆流予防効果がある。非結核性抗酸菌症があると耐性化を招く。

 その他

 カプサイシン、黒コショウ、メンソールなどにもサブスタンスP濃度上昇から咽喉頭感覚や嚥下機能を改善させる効果がある。

 

誤嚥性肺炎の主治医力

 

 昨年、プレベナーとニューモバックスを接種した。気管支炎(か気管支肺炎)で喀痰培養を提出した時、インフルエンザ桿菌(BLNAR)が出ていたので、インフルエンザ桿菌のワクチンもした方がいいのかもしれない。

 

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関節リウマチ

2023年07月08日 | Weblog

 大学病院から専門医を派遣してもらって、リウマチ膠原病外来が隔週(月2回)で行われている。

 クリニックからの紹介もあるが、大学病院など高次医療機関に通院していた患者さんが地元の病院で診てもらえるというのはとても助かる。当方としては、リウマチ膠原病の診療がどのように行われているのか、時々カルテを見て、勉強させてもらっている。

 

 6月6日に87歳女性が数か月前から?続くという食欲不振・倦怠感で内科新患を受診して、担当医が入院としていた。市内の整形外科クリニックに関節リウマチで通院している。

 2017年に関節リウマチと診断されているので、高齢発症RAということになる。当初は専門医のいる医療機関に通院していたが、おそらく通院困難で市内のクリニックに回してもらったのだろう。発症後に、数種類のDMARDs、生物学的製剤が使用されてきていた。

 現在の処方は、メトトレキサート6mg/週、JAK阻害薬のトファシチニブ(ゼルヤンツ)10mg/日で、プレドニゾロン2mg/日も入っていた。それでもRFと抗CCP抗体が高値陽性で、炎症反応も陽性だった。

 担当医は関節リウマチに関して、リウマチ膠原病外来の先生に相談した。胸部CTで軽度だが間質性肺炎の変化があり、メトトレキサートはタクロリムスに変更して、トファシチニブも他のJAK阻害薬に変更する方針とあった。

 

 関節リウマチの患者さんは、メトトレキサートで安定している患者さんは診ることにしている。それ以上の生物学的製剤併用の場合は、専門医との併診(通常はこちらで診て、定期的に専門医も受診)なら診てもいいとは思っている。しかし可能なら、やはり専門医への通院が好ましい。

 

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出血性脳梗塞

2023年07月07日 | Weblog

 7月3日に記載したDOACのⅩa阻害薬でも脳塞栓症が再発して、抗凝固薬をダビガトランに変更された86歳男性のその後。

 6月27日に地域の基幹病院脳神経内科から回復期リハビリ病棟に転院してきた。指示通りダビガトランを継続して、リハビリを開始したが、認知力低下で指示が入らなかった。

 

 診療情報提供書に不穏はないとあったが、夜間せん妄があり、日中でも気に入らないと殴って来るそうだ。夜間だけでも良眠してもらうのにデジレル25mgを追加したが、午前中に眠気が残った。

 週末からグラマリール25mgを追加してみたが、7月3日月曜日は朝からずっと傾眠傾向だった。開眼して返答することもあり、カロリーメイトゼリーをちゃんと飲んだりもする。

 看護師さんからいわれて、グラマリールは中止したが、4日火曜日も傾眠状態は続いた。ちょっとこれはおかしいと、頭部CTを再検した。(MRIは動くので無理)

 結果は以前から脳梗塞(脳塞栓症)を繰り返している左側頭葉~頭頂葉にこれまでなかった梗塞巣を認めた。さらに1㎝弱の斑状の出血が4か所にある。両側小脳にもこれまでなかった梗塞巣が多発していた。

 検査をしているうちに時間外になってしまった。基幹病院に電話してみたが、紹介した医師は帰宅していなかった。点滴で経過をみて、翌5日の朝はベット上で開眼していた。呼びかけると「ハイ」と返事だけする、(失語症の悪化)

 脳神経内科医に電話で連絡して、また診てもらうことにした。救急搬送して、急性期が過ぎて落ち着いたら、またリハビリで戻してもらう。

(使う必要はないと言われたが、ダビガトラン(プラザキサ)の中和薬のイダルシズマブ=プリズバインドは当院にはない。)

 

 

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ワクチン接種後にコロナ罹患

2023年07月06日 | Weblog

 7月5日水曜日に糖尿病・高血圧症で通院している70歳男性が定期の受診をした。

 処方は2か月分なので前回は5月初めだった。カルテを見ると、5月31日に発熱外来を受診していた。5月30日に咳・鼻汁・発熱(39.0℃)があり、夜間に地域の基幹病院を受診して、アセトアミノフェンのみ処方されている。

 その日の発熱外来は、大学病院からバイトで来ている外科医だった。外科外来の受診者は少ないので、発熱外来・救急外来を担当してもらっている。コロナの抗原定性検査が陽性で、COVID-19と診断されていた。処方は対症療法だった。

 年齢でも(65歳以上)基礎疾患(糖尿病・高血圧症)でも経口抗ウイルス薬を処方できるので、当方だったら処方していたかもしれない。幸い数日で症状は軽快して、その後の受診はなかった。

 ただ、咳と痰が1か月以上経過しても続いているそうで、鎮咳剤と去痰剤を出してほしいと希望された。20年以上の喫煙歴があるが、50歳で禁煙していて、普段は呼吸器症状はない。コロナの後遺症というか症状遷延なのだった。(14日分処方した)

 

 これまでコロナのワクチンは5回接種していて、発症する4日前に6回目の接種(2価ワクチン)をしたばかりだったという。周囲や家族にコロナに罹患した人はいない。

 個人的にはワクチンの感染予防効果はなかったことになる(集団としてはあるはず)。重症化予防効果はあったといえるか。おそらくウイルス株がXBBで、オリジナル株(武漢株)とオミクロン株BA-5対応のワクチンの効果が、発症に関してはなかったということだろう。

 

 高齢者ではなく、基礎疾患もないと、パキロビッドやラゲブリオは処方できない。ソコーバは処方できるが、これまで処方したことはなかった。

 若年者や健康な中年だと、自然経過での回復が期待されるので抗ウイルス薬は必要ではない。ゾコーバは、発熱・咳・咽頭痛がひどい時に処方ということになっている。(併用禁忌薬のチェックを要する)

 薬局にはゾコーバが4人分来ていたそうだ(配布された)。使用する準備がされていなかったので(院内のコンピュータに入力されていない)、院外処方薬として処方できる手続きと、院内採用の手続きをとった。

 ソコーバは1錠(125mg)7000円くらいで、初日に1日3錠(375mg)内服、2日目から5日目に1日1錠(125mg)内服で、計7錠使用する。1回使用すると約5万円かかる(それの1割か3割負担)。

 病院の購入最小単位は4人分で20万円になる。とりあえず、配布された4人分は使用するが、それを使い切るまでは新たには購入しなくていいと薬局に伝えた。

 

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結腸憩室炎

2023年07月05日 | Weblog

 月曜日の午後に、前日からの右下腹部痛が続く34歳男性が内科新患を受診した。午後の外来は定期通院は診ていないが、新患は受け付けている。3月から新任で来られた先生が診察した。

 体温は37.5℃の微熱があった。歩くと右下腹部に響く。右下腹部に圧痛と反跳痛があった。(ごく軽度に筋性防御と記載していた)

 腹部CT(単純)で上行結腸に憩室が散在していて、結腸壁に肥厚と周囲脂肪織の炎症像を認めた。虫垂の腫脹はなかった。上行結腸の憩室炎と診断された。

 地域の基幹病院消化器内科に連絡して、先方の病院を受診していた。救急搬送ではなく、自宅の車で向かった。

 通常、憩室炎は当院で入院治療にしている。軽度だと患者さんの希望で外来治療にすることもある。

 そちらでまず治療して下さい、とはいわれなかったようだ。基幹病院では受診後にどうするのかわからないが、入院ベットの確保が難しい病院なので外来治療になるのかもしれない。

 それにしても、34歳の結腸憩室炎は年齢的にかなり若い方だと思う。20代の患者さんは診たことはないが、30代はこれまであっただろうか。

 

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酸化マグネシウムによる配合変化

2023年07月04日 | Weblog

 6月23日に施設に入所中の89歳女性が救急搬入された。昼食時にむせって嘔吐したそうだ。発熱と酸素飽和度の低下があり、施設としても誤嚥性肺炎と思っていた。

 認知症もあるが、ふだんは当院の脳神経内科外来にパーキンソン病で通院している。レボドパ含有製剤(ドパコール)が600mg分3で処方されている。施設ではさらに分けて分5で内服させていたらしい。

 パーキンソン薬としてモノアミン酸化酵素阻害薬(エフピー)も処方されていて、便秘症で酸化マグネシウム製剤も処方されていた。

 胸部X線ではわかりにくいが、胸部CTで右下葉背側に浸潤影があり、左下葉にも少しあった。誤嚥性肺炎として入院した。

 抗菌薬(ABPC/SBT)の点滴静注と補液(500mlを2本)を行って、誤嚥性肺炎は軽快してきた。嚥下訓練を行って、嚥下調整食3を出していたが、嚥下はあやしかった。

 日曜日に連絡が来て、酸素飽和度が低下して微熱があると報告された。誤嚥性肺炎再発として、入院時の治療を再開した。

 月曜日には酸素吸入2L/分で飽和度が97~100%だった。胸部X線ポータブルでは肺炎像がはっきり描出できないが、炎症反応が上昇していた。CTを撮影すれば下葉背側に浸潤影があるのだろう。また1週間治療継続として、嚥下障害の対応を決めることにした。

 

 病棟の看護師さんから口腔内に出血があると報告があった。嘔吐・吐血はないが、口腔内全体に黒褐色の吐物らしいものが付着していた。患者さん本人は腹痛・嘔気はないという。

 食道炎かびらん性胃炎・胃潰瘍からの出血があるのだろうと思われた。内視鏡はやりにくいので、PPI静注で経過をみることにした。

 

 報告してきた看護師さんが、入院時に薬局から配合変化の注意があったことを思い出した。レボドパ製剤と酸化マグネシウムの配合変化だった。

 確認すると、レボドパは酸化マグネシウムによって黒褐色に変色して、血中濃度が低下するのだった。レボドパ製剤の内服回数が多く、同時内服を避けようがないので、普段通りの内服にしていた。

 消化管内ではこれまでも配合変化が起こって変色していたのだろう。今回は口腔に両薬剤が残っていたので、口腔内で変化が起きたということだった。

 パーキンソン病では通常レボドパ製剤は必須なので、便秘の治療に酸化マグネシウムは使用せず、新規の便秘薬を用いる方がいいようだ。

 

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DOAC内服でも脳梗塞再発

2023年07月03日 | Weblog

 火曜日に地域の基幹病院脳神経内科から86歳男性が転院してきた。心房細動があり、脳塞栓症を来していた。

 4月22日、5月2日にそれぞれ言語障害を来して、入院していた。軽快退院を繰り返していた。記載はないが、直接経口抗凝固薬(DOAC)のうちのXa阻害薬を使用していたそうだ。

 今回は5月27日に左大脳に多発性梗塞を来して、言語障害(失語)が悪化している。家族からリハビリ転院の希望があったのでよろしくという内容の診療情報提供書だった。

 Xa阻害薬を使用しての再発なので、抗トロンビン薬のダビガトランに変更したとあった。1回150mg2回なので、86歳としては過量(70歳以上)になる。

 出血しやすい薬と家族に説明されたそうだ。PPIの併用はなかったので、こちらで追加した。また経過をみて、110mgを2回に減量することにした。心エコーの所見についての記載がなかったので、こちらで行うことにした。

 

 入院中不穏はなかったとあったが、転院してくると夜間不穏があった。脳委縮がかなり目立ち、リハビリの指示が上手く入らない。とりあえず夜間だけは寝てほしいので、トラゾドン(デジレル)を開始した。

 妻と娘2人と同居しているが、日中は高齢の妻ひとりになる。転院の時点で、家族にはリハビリでの改善は難しい見込みで、施設入所の手配をした方がいいと伝えた。

 ダビガトランだから再発がなくなるとはいえないので、入院中の脳梗塞(脳塞栓症)再発の可能性もあると伝えた(逆に出血性病変が起きる可能性も)。

 

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誤嚥性肺炎

2023年07月02日 | Weblog

 誤嚥性肺炎(広義)は、明らかな嘔吐の英ソード後に出現する化学性肺臓炎と、不顕性誤嚥(明らか嘔吐がない)からの誤嚥性肺炎(狭義)に分けられる。

 前者は必ずしも抗菌薬は必要としないので、1日経過をみて解熱するような場合はそのまま抗菌薬なしで軽快することになっている。が、通常は抗菌薬を投与することになるだろう。

 

 日曜日の当直の時に、施設入所中の101歳男性が誤嚥性肺炎で救急搬入された。その日の昼食にむせって、嘔吐したという。午後は軽快みていたが、午後4時ごろに発熱してまた嘔吐した。

 救急搬入された時にも嘔吐(食物と胆汁)したが、救急車で揺られてきたためかもしれない。

 普段は特に治療は受けていない(当然投薬もない)ということだったが、心電図で心房細動を認めて、両下腿~足に浮腫を認めた。心房細動・心不全なのだった。

 胸部CTで右上葉下葉の背側に浸潤影を認めて、左肺下葉背側にも軽度に浸潤影があった。

 酸素飽和度が90%未満で搬送時から酸素吸入が開始されていた。酸素2L/分で90~95%と呼吸状態(とカニューラの付け方)で変動する。

 3日後には解熱してきた。嚥下評価・訓練で嚥下できそうですというST評価だったが、ご本人があまり食べたがらず、食食事摂取はあまり進まない。

 治療後の胸部X線で浸潤影がいったん広がったが、その後は軽減してきた。

 

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