なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

上腸間膜動脈症候群の疑い

2023年07月01日 | Weblog

 水曜日の当直の時に、当院の診療圏ではない地域の救急隊から搬入依頼がきた。精神遅滞のある61歳男性の上腹部痛・嘔吐を訴えているという。

 6か所の医療機関に当たったが受け入れできないといわれたそうだ。通院している病院には2回連絡したが、絶対にとらないと言われましたという。

 当院も外科がないので、急性腹症の救急搬入だと最近はその半分が転送になっている。家族に事情を伝えて、搬入してもらうことにした。

 当市内にもあるが、障害者何人かで共同生活をしている。そこにお世話する人(団体)が関わっているという形態の生活をしているのだった。妻子はいないので、妹さんが病院に来ていた。

 痩せた方で(身長160cm・体重40kg)、普段は何かの作業をしているのだろう、かなり日焼けしていた。

 上腹部痛らしいが、腹膜刺激症状はないようだ。嘔吐を何度か繰り返しているが、食物はなく、胃液だった。前日から食事摂取量が低下して、その日は全く食べていないという。

 37.2℃の微熱があるが、血液検査で炎症反応は陰性だった(1日以上は経過している)。血清クレアチニンが1.3mg/dl(試験紙をもちいる簡易検査)で造影できなくはない。

 まず腹部単純CTで確認したが、痩せているせいもあり、わかりにくい。造影CTも追加した。

 少なくとも腹腔内遊離ガスはない。肝胆膵も異常がない。腸管に造影不良域はなく、絞扼性腸閉塞でもないようだ。胃から十二指腸水平脚まで空気がたまっていて、特に十二指腸が目立つ。

 上腸間膜動脈症候群(大動脈と上腸間膜動脈で十二指腸水平脚が圧迫)も考えた。通常は胃から水平脚まで消化液が体調に貯留している像になるが、嘔吐を繰り返すと消化液がなくなるだろう。除外診断なので、なんともいえないが。

 とりあえず緊急の外科対応は必要ないので、当院入院で経過をみることにした。翌木曜日には症状は軽減していた。その日は水分と栄養剤のみで経過をみた。金曜日からは食事を開始して経過をみることにした。

 放射線科医の読影レポートは、こちらが上腸間膜症候群疑いと伝えたこともあり、その疑いありとなっていた。それ以外には症状を説明する異常所見はなかった。

 普段の生活がわからないが、今どきの症状として熱中症に陥って回復できなくなった可能性も考えた。CKは正常域だったし、違うような気はするが。

 

 血清クレアチニンは点滴後の再検でも同程度だった。通院している病院から降圧薬2種類以外に利尿薬2種類も処方されていたが、心不全には見えない。慢性腎臓病(CKD)は以前からあるようだ(腎硬化症?)。

 

 

コメント (1)
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