なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

エルシニア感染症

2024年03月26日 | 消化器疾患

 3月25日(月)の夕方に消化器科医から「エルシニアって診たことありますか」と訊かれた。昨年診ていたのを思い出した。(2023年5月10日記載)

 患者さんは21歳女性で知的障害がある(自宅で生活)。当院の内分泌外来(大学病院からの応援医師)に甲状腺機能低下症で通院していた。

 3月18日に外来を受診して、14日夜からの発熱・下痢(水様便)・腹痛を訴えた。外来担当医から消化器科の外来に紹介となった。

 白血球13200・CRP15.0と炎症反応が上昇していた。3日間外来での点滴と抗菌薬点滴静注(セフメタゾール)を行ったが、症状が続いていた。

 症状が続いて、3月21日に入院治療となった。血液検査は白血球6300・CRP11.9と、改善傾向ではあった。腹部CTでは大腸全体に壁肥厚を認めたが、腹水などの異常はなかった。

 点滴と抗菌薬(セフトリアキソンに変更していた)点滴静注で翌日には解熱して(入院時も微熱)、腹部症状は治まってきた。食欲はまだ出ないらしい。

 便培養の結果は、病原性大腸菌血清型O18(ベロ毒素陰性)、Yersinia enterocolitica血清型08群が検出された。感受性検査ではペニシリンは耐性で、セフェム系第2世代以上は全部感受性があった(CMZは両者S≦4)。前者はLVFX耐性だった。当方が愛用しているFOMは両者S≦32。

 

 国立感染症研究所のホームページによると、エルシニア属は11菌種があり、ヒトに下痢などの食中毒症状を来すのは、Yersinia enterocoliticaYersinia pseudotuberculosis。(ヒトに病原性があるのはこの2者とYersinia pestisペスト菌)

 Yersinia enterocoliticaは、食中毒を来してきたのは血清型03だが、「1987年以降青森県を中心に東北地方各地で、病原性が強いとされる血清型08の菌株による散発事例が多く報告されている」。

 原因となる食品は肉、特に豚肉で、この菌は冷蔵庫内温度の4℃でも発育できるので注意を要する。

 

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