なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

門脈ガス血症

2019年01月25日 | Weblog

 早朝に93歳男性が嘔吐・下痢で救急搬入された。午前7時前に当直の循環器科の若い先生から連絡がきた。胃腸炎で入院させていいですかというので、入院にしてもらった。

 病院に来て診察すると大変な病状だった。まず血圧が80mmHg前後(頻脈120/分)でショック状態だった。昨夜下痢便が出て、その後から何度も嘔吐していた。搬入後には血便も出ていた。意外に腹部は平坦・軟で圧痛ははっきりしない。認知症+脱水症でぼんやりはしていたが、簡単な会話はできる。

 白血球数28900と著明な上昇があり、Hbが普段の13g/dlから18g/dlと濃縮して、脱水状態だった。CTで腸管壁の浮腫を広範に認めた。腹水貯留もあり、何よりも肝左葉の門脈にガス像がある。

 症状からは何らかの感染性腸炎があり、腹水・門脈ガス血症を来したと考えられる、非閉塞性腸管虚血(壊死)もあるが、腹痛は訴えず、圧痛もないことから否定的か。

 点滴を続けて入れても血圧がなかなか上がってこない。ノルアドレナリンも少量使用して100mmHgくらいになった。けっこう補液を続けたが、尿は乏尿だった。利尿がつかないと一気に悪化する。

 家族には厳しい病状と伝えた。この方はCOPD(HOT導入)があり、肺炎による悪化時は、地域の基幹病院呼吸器内科に搬送したりしていた。家族が高次医療機関を希望する方たちだった。今回は基幹病院消化器内科に連絡してみた。若い先生が出て、その病態では点滴・抗菌薬・昇圧薬で経過をみるしかなく、搬送しても特別な治療はありませんと言われた。その通りだった。

 家族にその旨を伝えて、不満はあるかもしれないが、当院で治療することになった。患者さんを診ていると重症感が伝わってこないが、93歳でこの病状では良くなるという保障はとてもできない。

 

 

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