なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

気管支拡張症

2015年07月25日 | Weblog

 水曜日に呼吸器科外来の先生(外部からの応援)から連絡が来た。「気管支拡張症で通院している76歳女性が先週から咳・痰が増加して、微熱・食欲不振もある。レボフロキサシンを1週間投与して経過をみたが良くならないので入院させてほしい」というものだった。

 酸素飽和度は室内気で93~94%で普段とそれほど変わりはないそうだ。喀痰培養はその日に出したので(レボフロキサシン1週間内服後)、起炎菌が捕まるかどうかわからない。今年になって結核菌・非結核性抗酸菌の検査をして陰性だったという。「入院で診ますからどうぞ」、と返事をした。

 胸部X線だけではわかりにくいので、胸部CTも追加した。5月にも胸部CTを撮っていたので、やりすごかもしれないが、まあ胸部単純X線では本当にわからない。確かに気管支拡張像が広がっている。前回と変わりはないようだった。右中葉の気管支拡張像がかなりひどいものだ。5月の喀痰培養では、Haemophilus influenzaeが検出されていたが、菌量が少なくて感受性検査ができないとあった。この方は普段からクラリス200mg/日が処方されていて、呼吸器症状増悪時にはニューキノロンが追加されるということを繰り返していた。白血球数6000でCRP9.6(完全に陰性化はしない人)だった。2003年の胸部CTがクラウドから閲覧できるので比べてみた。右中葉のひどいところはその頃からあった。全体的な気管支拡張像はそれからかなり進展している。

 入院してからセフトリアキソンで治療を開始した。喘鳴はなく、喀痰のからむ音が聴取される。ホクナリンテープが処方されていたが、それは要るのか?心電図をとるとやや頻脈性の心房細動もあった。翌日は食欲はそれなりにあるので、500mlの点滴はしないで、そのままセフトリアキソンで経過をみることにした。 

 今日の治療指針によれば、非結核性抗酸菌症(NTM)やアレルギー性肺気管支アスペルギルス症(ABPA)など対処できる原因があればその治療を優先させるとある。慢性期の治療はマクロライド長期療法(ずっと投与されている)と去痰薬(ムソダイン・ムコソルバンは処方されていないので、とりあえず追加)。NTMの可能性はありそうで、もっと検査すべきだと思う。でもクラリスを休止しなければならないし、もしあっても既にクラリス耐性?。

 急性増悪時の治療は、感染症の併発によるので、外来治療なら肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスを考慮してニューキノロンを投与する(すでに投与済み)。入院を要する重症例や呼吸不全例では緑膿菌も想定して、ゾシン・メロペン・クラビット注を投与する。今回の入院では酸素吸入はしていないし、重症とは言えないので(途中で変更する余地あり)、セフトリアキソンで開始することは間違いではないか。本来は呼吸器科の常勤医のいる病院で管理する患者さんではある。

 呼吸器科の本を新たに購入しようかなと思って調べてみたが、気管支拡張症が記載してある本は意外にない。本格的な本なら記載があるのだろうが、それは持て余してしまいそうだ。

コメント
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