なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

夫が亡くなりました

2015年07月03日 | Weblog

 水曜日の内科再来に糖尿病の70歳女性が受診した。この方は10年前に隣町の病院からHbA1cが11%で紹介されてきた。入院治療はしたくないと外来で経口血糖降下薬で治療を開始した。1年経過して血糖は改善せず、しぶしぶ同意してインスリン導入のために入院した。

 混合製剤(30R)朝10単位夕6単位くらいの量で入院中は良好な血糖になった。退院すると、みるみる血糖は悪化した。肥満があり減量や食事療法の順守で血糖は改善するはずだが、それが難しい。糖尿病教育入院はいやということで、5年経過した。その間、「入院しませんか」「「できません(したくない)」ということを繰り返した。せめて外来でインスリン朝夕の2回打ちからインスリン強化療法への変更を提案したが、それもいやがった。

 そうこうしているうちに胸痛が出現するようになった。循環器科で心臓カテーテル検査を行うと3枝病変で石灰化も目立った。冠動脈バイパス手術が好ましいと判断された。いつも紹介している心臓センターのある病院ではなくて、夫がICD植え込み術を受けた別の循環器病センターを希望してそこで手術を受けた。その病院には糖尿病専門医がいて、混合製剤からインスリン強化療法に変更した。入院中の食事療法順守と強化療法で血糖コントロール良好となって退院した。その後、外来に通院しているうちにまた悪化した。食べてインスリンを相当量打つので、むしろ肥満が進んだ。

 糖尿病教育入院を勧めているうちに、今年の3月に気が付いたら整形外科病棟に大腿骨頸部骨折で入院していた。入院中は食事療法が守られるので、むしろ外来のインスリン量では低血糖が続いて、かなり減量した。入院中はHbA1cが6.1%と初めて見るような値だった。退院後、初めての外来でHbA1c7.5%になっていた。これまでのHbA1c8%台よりはいいが、やっぱり外来になると食事がなあと思った。

 ふだん元気な人だが、その日は元気がなかった。「運動する気にならないんです」という。事情を訊いてみると、入院中(整形外科手術後にリハビリ病棟にいたので3か月)、夫が亡くなったという。「どこが悪かったんですか」と訊くと、「自分で・・・」。自宅近くで縊首したそうだ。夫は2年前に別の病院で大腸癌の手術をして、その後に抗癌剤治療も受けていた。PET-CTで再発は認めなかったという話だが、詳しくはわからない。再発せず、治癒したかもしれないと思えばもったいない。

 自分が入院して不在の時のできごとなので、それを気にしていた。この方の家族は息子夫婦と孫で今時としては多い8人家族だった。自分が入院したことを気に病んでいるので、「大勢の家族と一緒に生活しているので、妻が入院して寂しい思いをしたという訳ではないと思いますよ(否定はできないが)。」と伝えた。

 今年別の患者さんから、「実は最近妻が亡くなりまして」という報告を聞いた。昨年は「息子が悪性リンパ腫で亡くなって」というのもあった。高齢の両親(80歳代後半から90歳以上)が亡くなったという話だと、「長生きされましたね」だが、配偶者や子供の話だと「残念でしたね」というしかない。

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糖尿病のコンサルト

2015年07月03日 | Weblog

 外科系の入院患者さんで、糖尿病の治療依頼が内科に来る。昨日は外科と整形外科から依頼があった。

 外科の患者さんは、S状結腸憩室炎で入院した38歳男性でBMI32のメタボ体型。母親が糖尿病で治療を受けているそうだ。内科クリニックに高血圧症と高脂血症(脂質異常症)で通院している。糖尿病も指摘されていたが、治療はちょっと待ってくださいと拒否していた。治療を開始すると糖尿病患者と確定してしまうのがいやなのか。糖尿病であることは治療の有無に関係ないのだが。

 HbA1cが9.0%だった。血清クレアチニンが1.2~1.3mg/dlなのが気になった。尿タンパクは陰性(微量アルブミンは検査が出てなかったので出しておこう)。通常ならメトホルミンで治療開始だが、無難にDPP4阻害薬(トラゼンタ5mg)で治療を開始した。減量による改善が見込まれる人だが、カロリー制限は難しそうだ。食生活はごはん(米飯)をいっぱい食べて、おかずは少ないという食べ方だった。糖質制限ならできそうなので、まずごはんを半分にしてみてはと提案した。憩室炎自体は軽快していて1週間の経過で退院になるので、、通院している内科クリニックに診療情報提供書を出して治療を継続してもらうことにした。

 整形外科の患者さんは54歳男性で、踵骨骨折で入院した。手術は終わっていて、抜糸後はリハビリになるが、3週間くらいの見込みらしい。この方は糖尿病と高血圧症ですでに内科クリニック(隣の隣の町)に通院していた。35歳から糖尿病の治療をしていて、体型はBMI21で肥満はない。通常の2型糖尿病でいいのか。昨年末に自衛隊を辞めてトラックドライバーに転職した。内服薬はトラゼンタ、グルファスト、メデット(メトホルミン)、ベイスンが出ていた。それまではトレシーバ7単位をしていたそうで(つまりBOTだった)、HbA1cが7.1%くらいだったという。転職してからインスリン注射をやめたのは低血糖を心配してのことらしい。グルファストの処方も、SU薬からの切り替え(低血糖を避ける目的で)なのかもしれない。今回入院時のHbA1cは10.2%と上昇していた。

 手術があるので、整形外科医は内服を中止してヒューマリンRのスライディングスケールにしていた。手術が終了して、HbA1cが良好な値なら普段の治療に戻すのだが、血糖コントロール不良なので内科に治療を依頼したのだった。とりあえず、内服薬を再開して、それで血糖がどの程度になるかみてから決めることにした。血糖が高い時のみヒューマリンRで補正することにした。仕事をしていると、超速効型インスリン毎食前は無理だという。来週からトレシーバを(7単位より少なめの4単位くらいから)戻すことになる。SU薬が入らなければ低血糖にはなりにくいと思うが、どうだろうか。

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