なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

胃痙攣ではない(急性心筋梗塞)

2015年07月06日 | Weblog

 60歳男性が内科クリニックから紹介されて受診した。先週の金曜日の午後に心窩部痛が出現して、そのクリニックを受診した。紹介状は、「受診時はブスコパンで少しよくなった。今日は痛みが治まっているが、胃痙攣だと思われるので、上部消化管内視鏡検査を依頼したい。」という内容だった。

 この患者さんは昨年秋に、そのクリニックから糖尿病の悪化で紹介された。HbA1cが11%で随時血糖は1000だった。高血糖高浸透圧症候群の診断で入院して、内科の若い先生が担当した。点滴とインスリン持続点滴から、インスリン強化療法を行って、血糖は改善した。その後はインスリンは中止して、経口血糖降下薬で外来通院となった。DPP4阻害薬+メトホルミンで、外来になってからもHbA1cは下がり続けて、HbA1cが5.8%になった。案外真面目に治療に取り組んだことになる。脂質異常症はスタチンで、高尿酸血症は内服なしで正常化した。

 今日外来を受診すると、血圧が90mmHgに低下していた。ふらふらするという。普段の血圧が120~130mmHgだから、血圧が低下している(心源性ショッックです)。金曜日は午後3時半ごろに、突然心窩部痛(肋骨弓のあたり)が出現した。冷汗もあった。クリニックを受診して、胃薬を処方されて帰宅したが、疼痛は翌日夜まで続いたそうだ。今日はまったく疼痛は感じないという。食欲がないことを気にしていた。自分で車を運転して来院していた。

 外来の診察室のベットに横になってもらって、心電図をとった。V1-3で右脚ブロック様の変化?を認めた。深いQから高いRになって、そこから鋭角に下がっているのでST上昇といいにくい形だった。V5-6は幅広いS波でいかにも右脚ブロック様だった。むしろaVRが普通にST上昇の形をしていた。昨年の入院時の心電図とは全く違う。Ⅱ・Ⅲ・aVFは鏡面像としてのST低下がある。循環器科医は今日一人が不在で、もう一人が再来を診ていた。昨年のと今日の心電図を見てもらって、(当院で緊急心カテができない体制なので)心臓センターのある病院へ搬送することになった。トロポニンTの陽性のみを確認して搬送となった。あとで検査結果が出て、CK(CK-MB)・AST・LDHが上昇して、BNP1200だった。酸素飽和度は室内気で94%で浮腫はなかった。

 昼に搬送先から当院の循環器科医に連絡が来て、今から心カテになるが、左LADの根本かLMTの病変が予想されると言っていたそうだ。危ない危ない。

 ところで、胃痙攣というのが本当にあるのかというと、多分ある。自分が高校生の時と研修医の時に緊張して突然心窩部痛が起きたことがあるから。10~15分くらい続いて消失した。その時は尿が出にくくなった記憶がある。今は緊張すると、心窩部違和感と胸が詰まった感じ(chest tightness)がする。小心者であることには変わりはない。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする