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読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
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「羊をめぐる冒険(上)」村上春樹

2007-05-09 21:50:55 | 小説
今日は「羊をめぐる冒険(上)」(著:村上春樹)を読みました。
「風の歌を聴け」、「1973年のピンボール」に続く、三部作の最終章です。

-----内容-----
あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。
その後広告コピーの仕事を通して、耳専門のモデルをしている21才歳の女性が新しいガールフレンドとなった。
北海道に渡ったらしい<鼠>の手紙から、ある日羊をめぐる冒険行が始まる。

-----感想-----
今回は時間の流れが複雑でした。
あるときは1973年になり、またあるときは1977年となります。
途中からは1978年になり、この年が物語の中心のようです。
今回は特に、村上春樹さんの文章はきれいだなと感じました。
主人公の「僕」が使う独特の言い回しはますます切れを増しています
比喩表現を使うことが多いのですが、これがすごくうまい
スムーズに読めるので先の展開にどんどんひかれていきます

今回はひょんなきっかけから「羊をめぐる冒険」が始まります。
ある日、「僕」と「鼠」が共同経営する事務所に謎の男が現れます。
その男は、羊がたくさん写った写真を見せてきます。
この写真は「僕」が仕事で広告を作るのに使った写真です。
その羊の内の一頭が特別な羊であり、何としてもその羊を探し出せというのです。
男は極めて強大な権力を持っていて、その気になれば事務所を壊滅させることも出来ると脅しをかけてきます。
2ヶ月以内に羊を見つけることが出来なかったらお前は終わりだと言うのです。

上巻は「僕」とガールフレンドが北海道に到着したところで終わりました。
「僕」は「鼠」と顔を合わせることになるのか、そして羊を見つけることが出来るのか、今の段階では全く見えてきません。
「僕」は当初北海道に行く気はあまりなかったのですが、ガールフレンドの勧めで気持ちが変わりました。
このガールフレンド、次第に物語になくてはならない存在になってきました。
なのでガールフレンドが下巻で活躍するかもしれないと予想しています。

最後に、上巻の名台詞を一つ。
「正直に話すことと真実を話すこととはまた別の問題だ。正直さと真実の関係は船のへさきと船尾の関係に似ている。まず最初に正直さが現れ、最後には真実が現れる。その時間的な差異は船の規模に正比例する。巨大な事物の真実は現れにくい。我々が生涯を終えた後になってやっと現れるということもある。」

これは「謎の男」の発言です。
正直さと真実を別と考えているのが興味深いです。
正直に話すことと真実を話すことは同じだと思いますが、この男の中では違っているようです。
違いを考えてみたら、正直に話すというのは、問い詰められて仕方なく話すというようなことをイメージしました。
真実を話すというのは、自分から自発的に話すというイメージです。
みなさんも謎の男の言葉の意味をいろいろ想像してみてください

明日は下巻を読み始めようと思います。
それではまた

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「ナラタージュ」島本理生

2007-05-09 00:32:12 | 小説
今日も携帯から記事を書いてます。
電車での移動時間が長くなったので、その時間をブログに使おうかと。
しかし携帯だと絵文字が使えないので、文字だけで感情を表さないといけません。
頑張ってみます!

今回は小説のご紹介です。
「ナラタージュ」(著:島本理生)を読みました。
物語は、主人公・工藤泉が婚約者と夜道を歩くところから始まります。
仲の良い二人だが、工藤泉には二度と忘れることのないだろう、ある人への切ない気持ちが眠っている。
「きっと君は、この先、誰と一緒にいてもその人のことを思い出すだろう。だったら、君といるのが自分でもいいと思ったんだ」…婚約者ですら、その存在を受け入れるくらい、泉の心にはその人が強く存在しているのです…
物語は泉の過去・大学時代へ。
「ナラタージュ」…映画などで、主人公が回想の形で過去の出来事を振り返ること。
泉の心に残るその人は、過去にしかいない。

泉の高校時代の恩師・葉山先生。
卒業式の日、泉は葉山先生に想いを伝えようとした。しかし、できなかった。
大学1年の冬、突然葉山先生から電話がくる。
高校の演劇を一緒にやらないかというものだった。
泉は高校時代に演劇部で、その顧問が葉山先生だったのだ。
再び葉山先生への想いが甦る泉。
しかし葉山先生は、ある事件から恋愛自体を拒絶するようになっている。
泉もそのことを知ってはいるが、葉山先生への想いは止めようがない。

泉は海外赴任中の両親に会うためにドイツを訪れる。そこで泉は、卒業式の日伝えられなかった想いを伝えることを決意。
「いつまでも同じ場所にはいられない」この言葉が印象的でした。

しかしまたしても葉山先生に想いは届かなく、泉はしばらく距離を置くようになった。
その後しばらくは「小野くん」という大学生と付き合うことに。
が、この二人はギクシャクしがちで、相性はあまり良くなかった。
その後は怒濤のクライマックスへ!
葉山先生との最後の日が迫る。


-----感想-----
小説の中の時間が前後することが多かったです。
もともとが泉の過去の回想なのですが、その中でさらに高校時代、大学時代などがあります。
しかしどの回想でも、泉の中心には常に葉山先生がいました。
小野くんと付き合っている時でさえ、泉の中では葉山先生の存在の方が大きいのです。
小野くんはそのことで苦しみました。
結果として間違った行動に走ってしまったり…
いくら付き合っているからと言って、相手の携帯の着信を調べたり、手帳を勝手に読んだりするのはどうかと思います。
私は小野くんにかなりイライラしました(笑)
やってることが卑怯だ、葉山先生を見習えと何度思ったか。

泉の「いつまでも同じところにはいられない」という言葉にはハッとしました。
浜崎あゆみの名曲「A Song for ××」の歌詞と同じなのです。
そちらから引用したのかも知れませんね。

ついに最後まで二人が恋人になることはありませんでした。
小説の冒頭で婚約者が登場することから察しはつくかも知れませんね。
それにしてもクライマックスは切なかったです。
「それが、私が葉山先生に会った、本当に最後のときだった。」この文が一番切なかったです。
このときの別れ方が印象的でした。
最後の最後で、葉山先生が泉を必要としたような気がしました。

※映画「ナラタージュ」の感想記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。

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