「ハイ!ライスー!」
という、誠によく響き、誠によく通る大きな声と共に、僕たちのテーブルの上にご飯の盛られたお皿がグワ~ンと飛んできた。
ここの店主と思われるおじさんが、テーブル前方上空52cmあたりから「投げた」(M博士証言)んですね、「確かに見ました」(オレ証言)。
すんごいインパクトでしたよ。でもこの方、注文を取ったり、他のスタッフや厨房に指示を出したりと、実にテキパキとした目を見張る仕事ぶり。しかも、同時にお弁当の販売までこなしている。
この方の存在があるからこそ、後から後からやって来るお客さんをどんどんサバけるのだ。スゴイ!
スゴイけど、スゴイんだけど、声がやたらデッカイ。
そうですねぇ、醤油の一斗缶(古!)を耳元でガンガン叩かれている感じかな。響くんですよね。
その上やたらせわしなくて、とにかく早く食っちゃわないとヤバイんじゃないかという強迫観念にさいなまれることこの上ない。
しかし、しかしだ、僕の胃袋は、すぐにこの上ない満腹感に占拠されることになる。
ある筋(どの筋?)では、かなり名の知れたお店である。
その名前も『キッチン カロリー』。
闘いを挑む前から白旗あげて投降させていただきます的な、もうメチャクチャ魅力的なネーミングの洋食屋さんだ。明大近くなので、量的な達成感を目的とする若者たちをビンビン吸い寄せている。
大学生でもないのに、僕とM博士もビンビン吸い寄せられてしまったというわけだ。
頼んだのは、この店の看板メニューらしい『カロリー焼き』。の、ダブル! M博士は、ライスも大盛り!
目の前に運ばれてきた鉄板はジュージュー音を立て、なんとも香ばしい匂いをたたえているではないか。
もうダメだ~。写真を撮る僕を待てず、M博士はすでに戦闘を開始している。
「パスタが下に敷いてある」という事前情報だったが、肉の下に隠れていたパスタの量がハンパではかった。
ダブルにしたからなのか、「パスタの大盛りの上に肉が積んである」といったほうが正しい(先日格闘した
アレの品名との違和感にも似ている)。
思ったよりもさっぱりとしているので、どんどんイケる。ただ、ちょっと油断すると、ライスの存在を忘れてパスタに夢中になってしまっていることに気づく。これが、久々の炭水化物オンパレードの真髄だ。
ところが、量が量だけにだんだん味のほうも不明瞭になってきたぞ。
ふと見ると、M博士は早くも完食目前。僕の倍速だ。
「満腹中枢からシグナルが出る前に“飲む”のがコツ」だそうだ。
いつからか始まった僕たちのB級グルメツアーは、最近「大食い」というあらぬ方向へシフトし始めているのが気になる。
相変わらず頭上からなのに耳元で聞こえる声にせかされて、今日も早食い大食いをやっちまった。
トトBIGのキャリーオーバーは消滅したが、僕のカロリーは…。
(いやいやいや、今日もまた文字オーバー…)