湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

午後の音

2010-07-09 18:06:37 | あんな話こんな話


「〇〇党の〇〇でございま~す」
選挙カーからの必死の連呼。

「警察署を名乗った振り込め詐欺の電話が現在多数かかっています」
町内に設置された市のスピーカーから注意を促すお知らせ。

そんな声に重なるように、豆腐屋さんの、あの懐かしいラッパの音が聞こえてきた。

「パ~プ~」

今にも泣き出しそうな空の下、殺伐とした電気的な声と好対照である。
のんきな、のどかな音に、思わず笑顔になってしまった。

子供のころ、夕暮れ時になると豆腐屋さんが自転車でやってきて「パ~プ~」とやった。すると、鍋やボールを手に近所の人が集まってくる。そんな懐かしい風景を思い出した。

外を見ると、自転車ではなくリヤカーだった。のぼりには『築地 野口屋』と記されている。しかも、若い女性が引いていた。
会社勤めのころ昼休みに散チャリをしていると、本郷の住宅地で若いお兄ちゃんが引いているところを時々見かけたものだ。1丁350円という豆腐などを積む、最近メディアでもよく取り上げられている引き売りである。いよいよこんな郊外にまでエリアを広げてきたようだ。

「お~い~し~い~あ~つ~あ~げ~…」

その女性が、突然甲高い大声を張り上げた。
パ~プ~まではのどかでよかったが、一転、悲鳴にも似たその叫びに空も驚いたのか、パラパラと遂に雨を落とし始めた。


写真は我が家の食卓。というのはウソで、先日訪れた国立歴史民族博物館で。団地ブームの頃のダイニングを再現している。

尚「パ~プ~」は「とーふー」のことで、いくらちゃんの声ではない。