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声が枯れた。
おそらくこれほど大声を出し続けたのは、長い人生で初めてである。
そして、その瞬間は声を張り上げ過ぎてクラクラしちゃってもう何がなんだかわからない中、やってきた。
立ち上がりに2分で2点を奪われた。浮き足立っていた。落ち着け落ち着けとお互い言い合う姿が、すでにいつもとは違って見えた。スタンドを緑と青に染め上げた僕たちも、なんだかふわふわ宙に浮いているうちにやられてしまったのだ。
ただ、その2点のビハインドが早い時間だったのは幸いだった。たくさんの声が、拍手が、チャントが、ホームの雰囲気を作り出していた。いや、いつものホーム以上の団結だったのではないか。この圧倒的な応援に、ゴールポストも、クロスバーも味方についてくれた。
しかもまだ落ち着いたようには見えなかったものの、ドタバタしながら4分で2点を返してしまったのだ。
いける、いこう、いかなければならない。いくしかない。だって引き分けさえ許されないのだから。
後半が始まり8分、3度目の歓喜は湘南にやってきた。
こういうとき、決めるなぁ阿部ちゃん!でも、もう1点欲しい。1点では危ういのだ。何しろ向こうにはワンチャンスで僕たちを黙らせる飛び道具があるのだから。
DEADorALIVE、天国と地獄…いつものホイッスルを待つ時間の長さは同じでも、重さがまったく違った。なぜなら、それは降格してからの10年の歳月の先にある最後の残り時間だったからだ。
声を出さずにはいられなかった。歌わずにはいられなかった、手を叩かずにはいられなかった、体を揺らさずにはいられなかったのだ。そして、4分のアディショナルタイムに入る前から、涙が流れ始めた。何が何だかわからなくなった。クラクラしてきた。
もしもだ、もしも同点にされていたとしたら卒倒していたかもしれない(笑)。
ところが、最後の最後に落ち着いていたのは選手のほうだった。見事に落ち着き払っていた。危なげなく時間を使いながら、彼らは歓喜の時をシッカリと待っていたのだ。
なんということだろう。10年の歳月が、彼らを強く、たくましく成長させていた。
そんな姿を見て、また後から後から涙があふれてきた。彼らの10年は、僕たちの10年でもある。一緒に歩んできた彼らと、それを支えたたくさんの人たちと共に、遂にその時を迎えたのである。
涙で揺れるピッチで、主審のスラリと伸びた腕が天を差し、長いホイッスルと同時に今度は前に突き出される。何度も見てきたその仕草が、今日はとても美しく崇高にさえ映る。そして、すぐにかすんでいった。
泣きながら誰彼かまわずハイタッチした、抱き合った、そして勝利のダンスを踊った。
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ありがとう!
このクラブを愛してよかった。このクラブと共に歩いてきて本当によかった。
94年に一年遅れでJFLからJリーグに昇格した時なんて比べものにもならない素晴らしい瞬間だった。
この10年で、ベルマーレは大きく変貌を遂げた。消滅の危機をチャンスに変えて、サッカーだけでなく、ビーチバレー、トライアスロン、ソフトボール、フットサルと、総合スポーツクラブに成長した。そしてようやく、ようやくサッカーで新たなステージにステップアップすることができたのだ。
そう考えると、「復帰」ではないのかもしれない。「新規加入」といってもいい。歴史やDNAは確かに受け継いでいるが、もうあのころのベルマーレではないのだから。日本にも、ちっちゃいけれど、世界にだって誇っていいこんなクラブがあるのだ。
たまたま帰路の電車に乗り合わせた田子千尋さんと、がっちり握手を交わして別れた。
「来年のJ1開幕戦で会いましょう!」
僕たちの新しい10年が始まる。
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3500名も駆けつけたらしい。入場者数が5500だから…
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いちばん右のGK野澤選手。珍しくフィールドプレーヤーのユニフォームを着ている。背番号は22、一人体調不良で不参加の中村裕也選手のもの。GKユニの下に着ていたそうだ。泣かせますね。