湘南ライナー日記 SHONAN LINER NOTES

会社帰りの湘南ライナーの中で書いていた日記を継続中

やさしいやすい

2009-11-20 23:07:06 | B食の道


「いらっしゃーーーぃ」
誰かがドアを開ける度に、店主が独特のフレーズで迎える。
テレビと調理音だけが聞こえる店内。お客は一言で注文を伝えると、誰もが黙って置いてあるマンガ本に目を落としている。「いらっしゃーーーぃ」は、それを決して邪魔することのない、やさしく静かな声だ。
新橋の『キッチン岡田』にやってきた。どうもキッチンという言葉に弱い(笑)。
新橋といっても、最寄り駅は地下鉄の内幸町駅で、日比谷通りより西側だから少しだけ落ち着いている。そんな一角のビルの1階の少し奥まったところ、ガラス扉の向こうにカウンター席が見える。
頼んだのは『A定食』(700円)。すぐに水とコンソメスープが出てきた。
しばらくすると、いかなり問われる。「どうします?」と。
「夜はライスがドライカレーになりますけど」
断る道理がない。
「じゃ、それで」
たぶん炊かれたピラフをフライパンでドライカレーにしている。炒めの最後に大きくフライパを上下させると、米粒が宙を舞う。ベテランの妙技である。そのとき発せられた「よっ!」という掛け声も、みんなを驚かせたりしないボリュームだ。
炒められたドライカレーとサラダが出てくる。このドライカレーが、なんともやさしい。ピリッとした強さは見当たらない。色合いも、味わいも、やさしさに満ち満ちている。決してキレイとはいえないお店だが、このステキな感じは何だろう。


そして、一呼吸遅れてでてきたメインディッシュは鉄板に載せられていた。厚めにスライスされているしょうが焼き、一口大に包丁を入れてある唐揚げ、太いエビフライに見えるのはエビ1尾が包まれているコロッケだ。さらに、もやし、ニンジン、茹で玉子が付け合わせ。
ちょっと濃い味付けのしょうが焼きも、色濃く揚がったエビコロッケも、それでいて尖った感じが一切しない。やっぱりどこかやさしい味なのだ。
思ったより一つ一つは大きくないのだが、トータルすると結構な量になる。これで700円とは!
写真をお願いしたとき返ってきた笑顔、背中に投げられる「ありがとうございまーーーす」の声。作り手の人となりが、そのまま料理にも出ているようであった。
新橋の喧騒を少しだけ離れたロケーションもよく似合う。


リターナブル箸です。