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ワシントン条約には抵触しませんよ!? By朱雀

2008年01月14日 23時18分24秒 | TRPG関連
さあ、今日も元気にデモンパラサイトだ。
いつの間にか第11クールに突入ですよ奥さん。
ちなみに今回は131話の裏で同時進行していたお話です。



天見「こっちから行くと近道なんだぴょん♪」
R.o.P十二神将が1人・天見はそんなことを呟きながら、いつものようにセラフィム小坂支部屋上を通過した。
通過してからふと気づく。今日もあの子は定位置であるはずの屋上にいなかったみたいだ。
天見「……まっ、私には大して関係のないことだぴょん」

…………それから数分後。

彼女は血相を変えてセラフィム小坂支部に飛び込んだ。
天見「一体『あれ』はどういうことだぴょんっ!?」
ジョー「え、えーと、一体君は何のことを言っているのかな?」
余りに突然な敵対(しているはずの)組織の一員の訪問にとまどいながらも、ジョーさんは冷静に対応する。
天見「何のことも何も、お宅のとかいう子が街で大繁殖してるぴょんっっ!!
ジョーさんのみならず、その場にいた全員が飲み物を吹き出した。


デモンパラサイト 小坂シリーズ第132話
「踊る大包囲網 ~芥 野久人を捕獲せよ!~」

事件解決に借り出された可哀相な人たち

紅 麗美(ファランクス 7/カラドボルグ 6)PL:ゴンタ
見た目は小学生、中身は高校生な自称『高貴な吸血鬼』。
専門は帝王学と『運命を操る』こと。
身長の低さが何かと仇になるのが微笑ましくも哀れ。

鈴木 恵理(ブリガンダイン 7)PL:mono
今日も静かに微笑む小坂警察九課所属の婦人警官。
事件が事件なだけに、警察とセラフィムの橋渡しを主に担当。
法とセラフィムの奔放な悪魔憑きの間で何かと板ばさみにされているのが何とも。

キャサリン=バネット(ファランクス 5)PL:k
斧を持つと豹変する横堀学園英語教師。
実は他人の言ってることをあまり聞いていないような気がするのは気のせいですかそうですか。
戦闘時は3ターン目以降なんて知りません。

日向 葵(ショーテル 6/モリオン 5)PL:東京
日常を芥の隣で過ごすヒマワリ少女。
芥の事を多少なりとも心配しているのは彼女だけです。
常におっとりしているせいか、彼女の主張は周囲の人になかなか届いてませんでした。

寿 虎千代(ドラグーン 4/ファランクス 3)PL:GHETTA
小坂では珍しい真っ当な不良少女。つまり不幸。
余りにも非常識な現実の前に、何度自発的に衝動第5段階を振りたくなったことか。
現実とはかくも厳しいものなのだよ。頑張れ。

アンナ=リシュール(クレイモア 4/カラドボルグ 3)PL:安綱
久しぶりにセラフィムから外に出た気がする小坂支部居候。
日向とほぼ同じ時間をセラフィムで過ごしていながら、芥への態度は120°ほど反対側。
ちなみに【幸運】とは事件への遭遇しやすさを表すステータスです。


事件解決に際し狩りまくられた可哀相な人(?)

芥 野久人(ショーテル 4)
セラフィム小坂支部が誇……れない植物悪魔憑き。
ポピーの原種のため、時たま怪しげな芳香を漂わせて周囲の人の意識にとろみをつけてます。
「だから、ボクは何もやってないってば~~~!!(本人談)」



……そんなわけで、主力陣が軒並み出払っていたせいで呼び出された面々。
責任者であるジョーさんとしては、事が事であるだけになるべく穏便かつ迅速かつ内密に事態を解決したいところです。
早速事件解決のために対策会議が開かれたわけですが――

虎千代「オレはそいつのことをよく知らないんだが、とりあえず見つけたらぶっ飛ばしゃいいのか?」
恵理「ぶっ飛ばす以前に、あんな危険なものはさっさと焼き払ってしまいましょう」
キャサリン「でも、下手に焼いたらよくない煙とか出てくるんじゃあ……」
麗美「いっそのこと凍らせるというのはどうかしら?」
アンナ「しかし、ついに彼も狩られる時がきちゃいましたか……」
日向「え、えーと、あれ?」

一同、約1名を除いて芥を助ける気ゼロ。
というか、みなさん何の躊躇いもなく芥を滅殺するつもりでいます。
芥、愛されてるなあ(涙)

結局、まずは実際に芥が大繁殖しているのが目撃された場所に行ってみるのが先決だろうということで、恵理の運転する車に乗って一同目撃現場へ。
そこでは既に現場の警官が整理業務などを行っており、話を聞いてみたところ、昼頃に6歳ぐらいの、頭に植木鉢状の帽子をかぶった同じ顔の男の子がざっと30人ほど現れたらしく、その光景を目撃した付近の住民数名が、彼らの撒き散らした煙のようなものを吸い込んで病院に搬送されていた。
住民の1人が携帯電話で撮影した写真には、どこから見ても芥としか思えない姿の少年が、画面いっぱいに所狭しと写っていた。
しばらく付近を探索したところ、現場とは別の場所でおばちゃん達と戯れている芥数人を発見。即座に殴って捕獲し、警察の手に渡す虎千代ら。
ちなみに、繁殖した芥らは、本体の記憶を完全に継承しているわけではないらしく、セラフィムの面々の顔を見ても、取り立てて特別な反応は示さなかった。

虎千代「こんな調子でどこに行ったのかも分からねーこのガキを、あと20人以上捕まえなきゃならねーってのかよ……頭痛くなってきた」

大丈夫。GMもです。

その後、さらに5体ほどの芥を真田山山中の洞穴で焼き払った麗美らは、日も暮れてきたこともあり、一旦セラフィムに帰ろうとしていた。
その矢先、ジョーさんから彼女らの予想だにしていなかった連絡が入る。
なんでも、“本物の”芥が見つかったのだという。
さらに頭を抱えながらセラフィムへの帰還を急ぐ一同。

遡ること数時間前、芥は小坂支部裏にある空き地の片隅で目を覚ました。
今から2週間ほど前、ジョーさんらの強固な反対のお陰で初日の出を見に行くツアーに参加させてもらえず、セラフィムで新年を迎えることになった芥は、すっかり不貞腐れて「冬眠してくる」とだけ日向に言い残し、支部裏の空き地の片隅で本当に2週間ほどの冬眠を始めてしまったのである。
自分が眠っていた2週間に何があったかは判らないけれども、どうせ自分が借り出されなければならないような事件なんて起きてるはずないのだから、大して問題ないだろう――そんなことを考えつつ、芥はセラフィムのドアを開けた。
「ただいま~」
ジョーさんのみならず、その場にいた全員が飲み物を吹き出した。

……数時間後、セラフィムに戻ってきた面々に囲まれ、芥はただ事ではない空気を全身で感じ取っていた。
まずは我慢の限界を迎えた虎千代が動いた。
つかつかと無言のまま芥の前まで来ると、渾身の力をこめて上から拳を叩き込む。
虎千代「てめェが全ての元凶か!!」
「ちょっ(ごすっ)一体何のことだか(がすっ)さっぱりわからな…(どこっ)
虎千代「やかましい!!(めしゃっ)

……ややあって、ようやく芥の言い分が聞いてもらえるようになり、芥のこれまでの動向を知らされる虎千代ら。
どうやら街で大繁殖している芥は本物とは何の関係もないらしいということまでは一応わかったものの、かといって目の前にいる芥が本物なのかも疑わしいわけで、なおも数名が疑いの眼差しで芥を睨む。

「ボクが本物であると証明しろって言われても……う~ん(がさごそ)……あっ、こんなのなら持ってるけど」

そう言って芥が頭にかぶった植木鉢の中から取り出したのは、以前彼がこっそりくすねていた、食べかけのメビウス型のドーナツ(前田さん作・超危険物)だった。
一同「…………」
芥、自己証明と引き換えに自爆。
そして改めて一同の頭に去来する疑問。
じゃあ、『あいつら』は一体何なんだ?

そして翌日も出没する芥そっくりの何か。
麗美たちがその後を尾行してみたところ、彼らはみな真田山のある場所に帰ってゆくようだった。
尾行した先では、芥らしきものたちが5体ほどで輪を作っており、その中心には1人の女性らしき影が立っていた。
???「あらあらあらあらまあまあ、また人間どもに暴力を振るわれたのね?ああ、なんて酷いことを……」
辛うじて聞き取れたその言葉に、麗美たちは互いに顔を見合わせ、思う。十中八九こいつが黒幕だ、と。
しかし、そんな彼女たちの存在に相手も気づいていたようで。
???「……おまけにこんなところにまで無粋に踏み込んでくるなんて。ねえ、そこに隠れているあなたたち。これ以上、私たちの愛の巣を荒らさせやしないわよ!!」
その人物の怒気のこもった発言に、全員が吹き出した(主にプレイヤーが)。

虎千代「……なあ、『あれ』殴り倒したら終わりだよな?今度こそ本当に終わりだよな?」
恵理「そうみたいですね。どうやら人間ですらないようですし、なにやらとんでもないことを口走ってたように聞こえたので、もう遠慮する必要はないでしょう」
日向「芥くんがいっぱい……いいなぁ(ぼそ)」
一同「……え?」
……まあ、そんなこんなで、最終戦闘が開始。

敵はショーテル9-1までの特殊能力を持つトリブルス・エンプレス(仮)と偽芥(カルトロップ・フュージョナー相当)×20。
偽芥は事前に《触手修復》を使用されており(《超軟体》所持のため「行動不能」にならない)、全員永続的にターン終了時にエナジー10点回復してくる上、《特殊能力継承》で《全力攻撃》を使用できるようになっており、彼らに行動を許してしまうと苦戦は必至。
しかし当然ながら、彼らに1ターンたりとも行動を許すつもりはないわけで。

麗美「(ころころ)《爆炎球》効果的成功!!」

はい。偽芥は1体残らず全員ぴったりエナジー0にされました。ちーん。
こうなってしまっては、あとは時間の問題。
それから2ターン後にはキャサリンの手で黒幕の女性も撃沈しておりましたとさ。

ちなみに黒幕の正体はなぜか芥に恋してしまった1匹のモグラ。
およそ半年前、杜預川河川敷で彼がヴィシャスと戦闘しているのを目撃し、その姿にときめいてしまったらしい。(第13話「愛の前に敵はない」参照)
それで、芥を模した存在を大量に作り出し、自分だけのパラダイスを作り上げていたものの、その一部が街中にたまたま降りてきてしまったというのが真相の様子。
イメージ的には女の子が同じキャラクターのぬいぐるみとかを大量に集めているのと同じようなものなんでしょうが。
いやはや蓼食う虫も好き好きと言うか何と言うか。

これで思い残す事は無い by k (131話:前半)

2008年01月14日 22時58分19秒 | TRPG関連
多分、自分がGMをやるシリアスなシナリオはこれが最後になる気がしたので、結構頑張りました。
スペシャルサンクス:GETTAさん

第120話の続編となっていますので、そちらからお読み下さい。

~開幕~
小坂付近某所。
無機質な部屋に拘束されている少女が一人。簡素な金属製のベッドの上に、両手両足と首を金属の輪と大型犬を繋いでおくために用いられるような非常に太い鎖で繋れている少女は、手術患者が着るような簡素な衣服を着用させられているように思える。しかし、それももう染み込んだ多量の血液とズタズタに切り裂かれてしまっている事で、本来の役割を果たしていないように見えた。部屋には彼女を中心に、彼女のものと思われる夥しい量の血痕や幾ばくかの肉片が散乱している。彼女の目には光は無く、ただ虚ろな目は虚空を見つめるだけである。
そして、彼女のいる部屋と強化ガラス板一枚を隔てた隣の部屋には、大量の計器類に囲まれ、モニターを眺めている某がいた。
「ふむ、これで一通りの計測は修了か。」
彼は項目に全て緑のランプが点灯しているのを確認した後、おそらく計測結果であろう、いくつかの数値やグラフが表示されている部分に目を移した。
「ほぅ、誕生からもう17年近く通常環境内で成長したというのに、肉体強度、抗体活性度、肉体修復力、体内物質濃度、代謝速度、どれも基準値をクリアしているとは、なかなか面白い。」
彼の視線はさらにデータを追って移動する。
「ふむ、じっくり検討してみなければ解らないが、これならば十分に条件はクリアしているだろう。早速本格的な実験の準備に取り掛からねばな。…いや、しかしそれにしても良いサンプルが手に入った。もう生きてはいないと思っていたが。…しかもこれは…。ふむ、私もなかなか運が良い。」
しかし、そこで彼は少し苦々しい顔になる。
「しかし、少々派手な手を使ってしまったのが悔やまれる。おそらくセラフィムの手が回ってくるのも時間の問題か…。だが、神童の手を借りるわけにもいくまい。今奴に関わると面倒な事が多すぎる。」
と、彼は何かに気付いたようで、薄い笑みを浮かべる。
「そうか、あの時は特に使い道も思いつかず捨て置いたが、折角の拾い物、使わねば損か。…まぁ、時間稼ぎくらいにはなるであろう。」
そう呟いて、彼は早足に部屋を去った。しかし、思わず独り言が口から漏れていた事に、彼は気付いてなかったであろう。そして、それを聞いている者がいた事にも。
「いやぁ、あんたも運が悪いっすねぇ…。せっかっく自由な生活を手に入れられていたというのに。…正直なんかしてあげられたらとは思うっすけど、…残念ながら今の俺にはどうしようもないっす」
某が去った後部屋に現れた一人の男、グリーンファントムは、しばし少女を見つめた後、部屋を去った。
彼がどんな顔で彼女を見ていたのかは、分からなかった。

デモンパラサイト小坂シリーズ第131話
『揺籃の謳 - Das Wiegenlied』

<登場人物・セラフィム>
文楽座 瑠璃(ウォーコイト・ドラグーン/ゴンタ)
激情の文楽座家長女。
ときに語調が荒くなるが、大切な人を思うが故である。

文楽座 瑪瑙(ファランクス・カラドボルグ/GETTA)
英断の文楽座家次女。
素直な思考と観点を持ち、その行動に迷いなどはない。

東郷 征斗(ドラグーン/東京)
情念の若きカリスマ。
冷静さを失わない言動とは裏腹に、熱き思いを秘めている。

日森 篤(クレイモア・バルディッシュ/朱雀)
天啓の現人神。
全てを見通す目でも見えないものがあるからこそ、行動する。

佐藤 唯(アルバレスト/mono)
恩讐の女性探偵。
失うことを知っているからこそ、出せる力がある。

海間 留衣(ブリガンダイン/安綱)
厚志の女子高生。
誰かの力になれるというのは、それだけで素晴らしい事である。

<登場人物・明けの明星>
近衛 りる(カラドボルグ・バルディッシュ)
特別児童擁護団体「明けの明星」に所属する少女。
エンブリオ計画の実験体である事が発覚。120話にてDr.某に捕らえられてしまった。

シュテファニア=エル=ヴァイゼンフェルト(モリオン)
特別児童擁護団体「明けの明星」の代表を務める独逸人女性(少女?)。通称ティファ。
かつてR.O.H.時代Dr.某と同じ研究班の一員だった過去を持ち、その時の後悔から悪魔憑きに関わった所為で孤児となった子供を支援する団体を結成した。
現在行方不明。

葉原 秋人(ウォーコイト・ショーテル・カラドボルグ)
特別児童擁護団体「明けの明星」に所属する青年。
現在行方不明。

<登場人物・その他>
グリーンファントム(バルディッシュ・ショーテル)
Dr.某の実験体、宝石シリーズの一人。実は動物。
一応任務はこなすものの、某に対して忠実というわけでも無い様である。

雨傘 揶闇(???)
全てが謎に包まれている少女。
好奇心、ただそれだけが彼女を動かす。


~第一幕~
明けの明星が襲撃され、近衛りる、葉原秋人が行方不明。おそらく二人を捜す為であろう、それを追うように姿を消したシュテファニアエル=ヴァイゼンフェルト。
あの事件から、早くも2週間が経過していた。
セラフィムメンバーによる捜索は続けられていたが、進展はほとんど無い。集まった情報と言えば、りるが連れ去られたと思わしき時間帯に白髪の少女が目撃されている事くらいである。というのも、一般人に大きな被害が出たわけでもなく、直接セラフィムに被害の来ていない事件であるという事がセラフィムメンバーのモチベーションの低下に繋がっているのである。
そんな中、焦りを覚えたジョーさんは今一度、頼りになりそうなメンバーを集結させた。

セラフィムに集められたのは、文楽座姉妹と東郷、日森、唯、瑠衣である。
聞き込みなどは既に行ってみたが収穫はない。何か個人的な情報網はないかというジョーさんに対し、日森は千呪院に直接電話をしてみる。が、収穫は無し。と言うより逆に情報を与えてしまう事に。
しかし、当然と言うか何と言うか、この件にやはり千呪院はノータッチのようだ。
また、ジョーさんに今回の件に関して瑪瑙をどうするかと問われる瑠璃。そして瑠璃は全てを話す決断をする。

~幕間~
小坂付近某所。
シュテファ二アはオープンカフェのテラスに腰掛け、情報を整理していた。 
この2週間、彼女は嘗ての某の研究所を調べていた。
どうせ通常の方法でたやすく情報が手に入ってくるとは思っていない。それならば、自分のみが知りうる情報、すなわち嘗て某と肩を並べて研究していたからこそ知りうる情報をあたってみるしか無いと考えたのである。
しかし、結論から言えばそれは全くの空振りに終わっていた。なにせ、自分と某に親交があったのはもう数十年も前の話である。研究所のほとんどは場所が変わるなどして今はもうそこには無いのが現実であった。
そうはいっても、それしか手がかりになるものは無い。むしろ、某の行動パターンを良く知る自分であればこそ、りるの身が案じられた。それに、もし秋人も某の元なら、もうどうなっていてもおかしくは無い。
焦る気持ちを抑え立ち上がろうとした彼女は、いつの間にか正面に見知らぬ少女が腰掛けているのに気付いた。
確かに今は落ち着きを失い、疲労もあるが、それにしても自分が誰かの接近に気付かないなんて信じられなかった。しかし、目の前の少女はそんなティファの動揺に薄い笑みを浮かべているだけである。
「座っては如何です?」
余裕の表情の少女に対して何か言おうと試みて、しかし何も言えず、ティファは仕方なく腰を下ろした。
「始めまして、私、雨傘揶闇と申します。」
「…始めまして。」
若干笑みが引きつるのを感じながらティファは応じた。
「…ふふ、まぁ、お急ぎのようですし早速本題にいかせていただきましょうか。」
揶闇は一拍の間を置いて話し始める。
「あなたのお探しの子達、どこにいるか教えて差し上げましょうか?」
「知っているの!?」
思わず机に手を突いて立ち上がるティファに周囲の視線が集まる。
ティファは若干頬を赤らめながら再び腰を下ろした。
「どうして知っているの?…まさか貴方は某の仲間!?」
「いいえ、仲間ではないわ、敵でもないけれど…」
揶闇の余裕の表情は崩れない。ティファはそれが気に食わなかった。
「まぁ、いいわ。それで、それを私に信じろとでも…?」
「いいえ、信じるも信じないも貴方の勝手。お好きにどうぞ?」
そう言って揶闇は立ち上がる。その手からティファに一枚の紙が放られる。
「でも、そんな悠長な事は言ってられないでしょう?だって、あの子はあなたの…」
風にかき消された揶闇の声は周囲の誰にも聞き取られる事は無かったが、ただ一人、それを聞いたティファは驚きに目を見開いたまま去りゆく彼女の後姿を見送った。

~第二幕~
ジョーさんとの話の後、瑠璃は様子が気になり小恋亜の元へ。留衣と、電話を終えた日森が同行する。
現在明けの明星の施設は修復工事中なので、院の子供や職員は小坂のいくつかのマンションや公民館等に分かれて生活している。小恋亜は秋人の家に職員の女の人と2人で住んでいるらしい。
家に着くと丁度職員の人は買い物に出る所で、事情を話す瑠璃に喜んで留守を任せる。どうやらりると秋人が行方不明になってから小恋亜は塞ぎ込んでしまっているようなのだ。
塞ぎ込みやつれている小恋亜を叱り、諭す瑠璃。そして抑えた感情が決壊して泣き出す小恋亜。あまり何も食べていないようなので日森が自慢の腕を振るう事に。
そこで小恋亜から興味深い話を聞く。なんでも、職員の人が駅前商店街で秋人らしき人影を見たと言うのだ。その真相を確かめるべく、早速日森と留衣は職員の人に詳しい話を聞き、唯を加えて商店街で聞き込みを始める。
一方瑠璃は秋人のPCを調べる事に。厳重にロックがかかっていたのだが、謝りつつも尽く解除する瑠璃。そしてデータフォルダから履歴から何もかもを調べる。が、収穫は今ひとつ。と、思ったところでシークレットファイルを発見する瑠璃。神懸かった情報操作で中を覗くと、それは秋人の日記だった。
日記の内容は兎も角、その日記は「花園院事件(120話参照)」の起こった翌日から付けられているのだが、それ以来十数年、一日も欠かされる事無く付けられている。もちろん、何か事件やトラブルが起きた時もである。しかし、その日記が2週間前からは全く付けられていない。不審に思う瑠璃。
ともかくそれ以上の情報が得られそうにないと考えた瑠璃は、一応りるの部屋も軽く調べた後、まだ元気の無い小恋亜を連れて帰宅。小恋亜は茜と打ち解けて仲良くなり、幾分元気を取り戻した模様。
因みに、丹念に聞き込みを行った3人であったが、有力な情報は得られず。

~幕間~
その晩、瑪瑙にもう一人姉妹がいる事を、そして、あわよくばその子も交えて暮らしたいと願う事を告げる瑠璃。本人にしては一世一代の大告白であり、一応瑪瑙も理解してくれたようであったが、いかんせん酒の力に頼っては…。


後半へ続く。

これで思い残す事は無い by k (131話:後半)

2008年01月14日 22時58分18秒 | TRPG関連
~第三幕~
翌日、セラフィムの元に一本の電話が。それは秋人に渡してあったプリペイド携帯からのものであった。
すぐさま応答すると、掛けてきたのはどうやら秋人本人のようである。
今まで連絡もせず何処に行ってたのかと咎める瑠璃に、済まない、調査に専念していたという秋人。しかし彼が言うには、りるがさらわれたであろうDr.某の研究所の所在地がわかった、今回は失敗しない為にも皆の力を貸して欲しい、研究所まで案内するから、とりあえず一旦集まってくれないか?との事。
しかし、疑いを持つ瑠璃。連絡はしないくせに日記の更新は欠かさなかったのねとカマをかける瑠璃に、日課だからねと答える秋人。
その返答で秋人が偽者もしくは操られていると判断した瑠璃は、万が一の事を考えて瑪瑙を小恋亜の護衛に、唯に頼んでもらって9課の人たちに明けの明星関連の施設の警護にあたってもらい、自らは残りのメンバーと共に秋人の指定した場所へ。

一応日森が遠視して見るも、パッと見は一人でいるように見える。
周囲を警戒しつつ近づいた一同に朗らかに挨拶し話し始めた秋人を、しかし瑠璃は皆まで言わせずいきなり攻撃。そして戦闘開始。
物陰から現れたブラジオンアサシン4体と超暴走状態の秋人を相手に若干苦戦する一同であったが、撃破。秋人は気を失って倒れた。

~幕間~
「それでは搬送は任せる。私は先に行って実験の準備に取り掛かる。くれぐれも失敗の無いように。」
「わかったっす。」
答えるグリーンファントムを見もせず、某は去る。よっぽど実験に興味を奪われているのだろう。
某が去った後、彼は、硬質の布に包まれ、その周りを太い金属製のベルトで何重にも巻かれた有様の少女に目を向ける。
「毎度の事ながら、嫌な仕事っす。」
ポツリと漏らした彼に寄る影が一つ。
「おぅ!グリーンファントムじゃねぇか。どうしたんだ、シケた面しやがって。…ああ、すまねぇ。シケた面はいつもの事だったか!」
「ああ、ルチルさんじゃないっすか。お久ぶりっす、帰ってたんですねぇ。」
「おう、今丁度任務を終えたところだ。…てめぇはこれからか?」
「まぁ、そんなところっす。」
本当に、いつも以上にシケた面をしているグリーンファントムに、ルチルはかける言葉が見つからなかった。
なぜなら、多分、彼女も彼と同じ事を思っていた。

~第四幕~
セラフィムに戻って意識を回復させた秋人を問い詰めるも、この2週間の間の事は何も覚えていないとの事。
だが、念を入れて警備にあたらせたところは音沙汰無かった為、どうやら秋人の役割は時間稼ぎの様に思われた。
こうなれば一刻も早くりるの居場所を突き止めないとと焦る一同だったが、現実問題調査は振り出しに戻ってしまっている。どうするか、と悩む一同のもとに一本の電話が。
電話の主は千呪院。何でも、小坂から少し東に行った辺りの山間部にあるDr.某の研究施設に動きがあったらしい、と、先ほどの情報のお礼のつもりか教えてくる。しかし、所詮は敵勢力の幹部の言う事。どこまで本当か怪しいと思う一同であったが、それしか手がかりが無いのが現状である。しかたなく、操られた後遺症で思うように動けない秋人はセラフィムに残して、山間部へ向かう。

~幕間~
グリーンファントムは目的の実験場へ、りるを搬送していた。
ヘリの荷台には少女が乗せられている。
「ふぅ、めんどうっすね。…ってうおぁ!」
研究所が見えてきた、と思ったとき眩い光線がヘリを貫いた。反応している暇も無かった。ヘリは真っ直ぐに墜落し、大破する。
「いったいなんなんすかぁ!」
慌てて飛び出したグリーンファントム。正面を見ると、10メートル程先に一人の少女が立っていた。年の頃13、14の外人の少女は、明けの明星の代表、シュテファ二ア=エル=ヴァイゼンフェルトだ。確か某の元同僚と記憶していたが、これ程の実力の持ち主だとは思わなかった。
「…りるちゃんは返して頂きます。」
「あ~、そうしたいのはやまやまっすが…」
そのとき無音でヘリの荷台から飛び出して来る者があった。銀の髪の少女、アゲートである。アゲートの右腕は刃物のように変質しており、さらにその左腕にはりると思しき簀巻きが抱えられている。
「まぁ、そういう事っす。ここは素直に引いて…」
そうグリーンファントムが言うとほぼ同時に一条の光線がアゲートを襲う。すかさず回避するアゲートだったが、そのときには既に飛翔したティファが寸前に迫っている。回避しきれず衝突した二人は錐揉み降下し、そのまま地面でもつれ合う。
アゲートの手からりるが離れる。りるは地面を転がり、そして誰かの足に当たって止まった。
「ふむ、やはり年老いると嘗てのような力はだせないものだな、シュテファニア=エル=ヴァイゼンフェルト。」
それは、某であった。
「しかし、君はあのときから年齢とは似合わないほど若く美しかったが、さらに若返ったのではないか?道理で気付かないはずだ。一体どういう仕組みになっているのかね。面白い、下らない。」
「某…」
ティファの表情が歪む。
「兎も角、君も来たまえ。…君とてこの状況は分かっているだろう…?それとも、大事なこの娘を傷つけられても良いのかね?」
その言葉にティファは某を強くにらみつける。
「…どちらにせよ、その子は貴方の実験台にされてしまうのでしょう?…なら、いっそ私が…!」
「ほう、君がそんな事を言うとは、面白い、馬鹿馬鹿しい。…では是非やってもらおうか。」
そういって某はティファに向けてりるを差し出す。ティファの右手に光が集まる。が、しかし、それは急速に力を弱める。
「…ごめんなさい、りる。やはり私にあなたは…」
ためらったティファに、後ろから接近したアゲートが一撃。昏倒させる。
「やはり、そんなものか。…しかし、これだけ派手にやられてしまってはセラフィムの者に見つかるのも時間の問題か。…ふむ、どうするか…」
研究所の方向へ運ばれてゆくりるとティファ。その様子を一匹の黒猫が見ていた。

~第五幕~
山岳部付近に来ていたセラフィムの一同は、一条の光を目にする。あわてて行ってみるとそこには墜落したヘリと足跡が。
足跡を追うと、一軒の古びた建物があった。周囲を警戒しつつ侵入した建物内部床には大きな扉。どうやら地下施設らしい。
と、その時どこからか声がかかる。見ると、窓辺に一匹の黒猫が。雨傘揶闇である。
「ふふ、本当に人間って面白いわね。…ああ、急いだ方が良さそうよ。取り返しのつかなくなる前に。」
意味深な言葉を残して去る揶闇であったが、追う訳にもいかず、仕方なく先を急ぐ一同。思い扉を開け、階段を下ってゆく。
だが、しんがりの唯が階段を下りきったその時、閉まり始める扉。その隙間から一瞬、白髪の少女が伺えた。しかしもう間に合わない、と誰もが思ったが“超疾走”を使用した瑪瑙が飛び出す。そして大きな音を立てて閉まる扉。
瑠璃は事前に瑪瑙に渡していた人形を通じて、追うな、と瑪瑙を諌めるが、無視してアゲートを追ってゆく瑪瑙。
仕方なく一同は奥を目指し進む。

研究所の最奥部は少し開けた空間になっており、そこにいたのはDr.某とティファ。
瑠璃が呼びかけるも、反応の無いティファ。どうやら操られている様だ。
そして二人の後ろには頑丈そうな扉が。その向こうにりるがいる事は容易に想像できた。
「少々お遊びに付き合ってもらおう。」
そう言って攻撃してくる某の姿をした人形。
“捕食融合”で強大なエネミーを取り込み強化された某人形と、超暴走状態から“連続攻撃”と“光線連射”を組み合わせた4回攻撃に、すべて“全力攻撃”をのせてくるティファ。さらに飛行し、行動値と回避力も高く、範囲回復も持ち合わせている。
苦戦する事は明らかだったが、しかし、“致命的失敗”を繰り返してしまうティファ。おそらく彼女は操られている事に抗っているのだろう。もしかしたら瑠璃の声が届いていたのかもしれない。そして、瑠璃の渾身の一撃で背後の壁ごと吹き飛ばされるティファ。

その時、破られた壁の向こうから現れる人影が。それはりるであった。どうやらヘリが墜落した際に拘束が緩んでいたらしい。
倒れているティファを見て、どうしてそこまでするのかと問うりる。ヘリの所での事も聞いていたが、私なんかの為にそこまでする理由がわからない、と。
しかし、それに答えたのは某であった。
「何だ、知らなかったのかね。彼女は君の母親だよ。」
そこで意味深な笑みを浮かべる某。
「人間とは複雑に見えても、本当は解り易い生き物だ。やはり、我が子が一番かわいい。…件の事件の時とて、他の子を犠牲にして我が子を助けたのではないかね?」
その言葉に、「そんなはずはない」と憤る瑠璃。そして、一瞬呆然とするも、某への怒りをあらわにするりる。
しかし、そんな二人はよそに某は去る。りるは追おうとしたが、瑠璃が身体を張って止めた。

因みに、“超疾走”を使用するアゲートを“超疾走”を使って追っていた瑪瑙は、遭えなく衝動限界を向かえ取り逃がしてしまっていた。

~終幕~
とりあえず、無事事件は解決された。
りるの心には深いトラウマが刻まれてしまったかと思われたが、彼女は表面上は何も無かったかのように振舞っている。
しかし、同じ様な体験にあった事のある瑠璃は彼女の心中を察したようだった。
去り際、背を向けたまま「ありがとう」と小さな声で言うりる。
セラフィムと明けの明星の完全協力体制も整い、万事はうまくいったかに思えた。

ただ、某に対する復習心が、彼女に深く根付いたのは確かだった。

ねこねこファンディスク4

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