アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

参院選・そんな「野党共闘」でいいのか

2019年07月23日 | 政治・選挙

     

 「政策論争深まらず 与党過半数 強力な野党不在勝因」
 22日付の琉球新報はこうした見出しで、参院選で自民・公明の与党が改選議席の過半数を獲得したのは「強力野党の不在と世論の関心の低さが大きな要因だ。年金、憲法、消費税の論戦は深まらず」と「解説」(共同配信)しました。

 確かに政策論争は深まりませんでした。それが48・80%という過去2番目の低投票率の1つの要因でもあるでしょう。ただし、選挙で政策論争が深まらないのは今回だけではありません。なぜ政策論争は深まらないのでしょうか。

 安倍晋三首相が予算委員会も開かず、都合の悪いことは隠ぺい、重要問題(日米軍事協力・貿易摩擦など)は先送りし、政策論争を避けて印象操作に終始していることが第1の要因であることは明らかです。
 しかしそれだけではありません。

 根本問題は、そもそも政党間で基本的な政策の違いがなくなっていることです。基本的な政策とは、国政の根本である日米安保体制(日米軍事同盟)、独占資本(大企業)支配に対する政策です。
 立憲民主も国民民主も日米安保体制を積極的に擁護しています。また両党とも労使協調の連合から支援を受けており、大企業と対決する姿勢はありません。
 日米安保支持・大企業擁護という根本で、自民党と公明、維新はもちろん、立憲民主、国民民主の間に基本的な政策の違いはないのです。政策論争が深まるわけがありません。

 そんな中で問われているのは日本共産党です。
 共産党はいまでも綱領上は、「日米安保条約廃棄」「自衛隊違憲」「大企業規制」の旗は降ろしていません。その立場で論戦を展開すれば政策論争はもっと深まったはずです。
 しかし、そうはなりませんでした。共産党が自ら政策論争を抑えたからです(政策論争力の衰退は別として)。とりわけ現下の重大問題である日米安保の深化=日米軍事一体化、自衛隊配備強化に対する批判・論戦は封印しました。なぜでしょうか。

 「野党共闘」のためです。立憲民主や国民民主と共闘して1人区で統一候補を立てる。そのために共産党候補を無所属候補にさえする。安保・自衛隊、大企業支配という基本問題で大きな違いがある立憲や国民と統一候補を立てるため、折り合わない政策は論戦も封印する。それがいまの「野党共闘」です。これでは政策論争が深まらないのは当然でしょう。

 本来、政党間の共闘は「政策協定」が前提であるはずです。しかし、今回の(過去の衆院、参院選も同様)「野党共闘」には「政策協定」がありませんでした。「安倍政権を打倒する」とか「立憲主義に立つ」などの抽象的スローガンは政策協定ではありません。

 例えば、「辺野古新基地」問題の根源である日米軍事同盟、沖縄への自衛隊配備増強反対、あるいは憲法原則に反する重大問題である朝鮮学校への差別解消など、具体的な政策を協議し、一致点で協定を結ぶ。それが本来の政党間共闘です。

 ところがいまの「野党共闘」は政策の一致ではなく、1人区で自民党に対抗するためには候補者を1本化する必要がある、ということから出発しています。これは本末転倒の小沢一郎的発想と言わねばなりません。

 これでは政策論争が深まらないばかりか、共産党は自らその存在意義を減滅させているようなものです。共産党は今回、大阪選挙区で有能な現職を失い、比例区で議席を減らしました(5から4へ)。共産党(党員・支持者)はその後退の意味、要因を真摯に分析し、政策協定なき「野党共闘」から脱却すべきです。

 一方、「1人区では野党が候補者を1本化しなければ自民党に対抗できない」という言い分にも一定の説得力があります。ではどうすればいいでしょうか。次回それを考えます。


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