アメリカの中間選挙は、上院で共和党が多数派を維持し、下院は民主党が8年ぶりに多数派を奪還、トランプ大統領に痛手、さて今後のトランプ政権は…というのが日本のメディアの主な論調ですが、米中間選挙はほかの視点から見るべきではないでしょうか。
今回の中間選挙の大きな特徴は、①投票者が初めて1億人を超え、投票率が前回より約10㌽上昇した投票率の高さ②民主党から多くの女性候補が当選した過去最高となった女性議員の選出③それらの背景になった「ブルーウエイブ」といわれる社会主義的主張も含む新たな政治運動―でしょう。これらはいずれも重要で、今後の展開が注目されます。
しかしそれでも、今回の選挙でアメリカの政治・世界戦略に基本的な変化があるとは思えません。なぜならそもそも共和党と民主党の間に政策上の基本的な相違はないからです。
アメリカの核・世界戦略、覇権主義は共和・民主両党の政権によって進められてきました。広島など日本の一部でもてはやされているオバマ前大統領が核開発を進めてきたことは周知の事実です。
TPPはじめとする「グローバリズム」もアメリカ利益第一主義という点で「トランプイズム」と基本的に変わるところはありません。
アメリカの政治・世界戦略が変わらない根源は、2大政党制にあります。民主党と共和党の完全な2大政党制の中では、新たな政治潮流(政党)が芽を出し成長する余地はありません。「ブルーウエイブ」の波に乗って当選したオカシオコルテス候補らに代表される、サンダース上院議員に近い人々の活動は注目されますが、彼らも民主党の枠から出ることはできません。
私たちにとって重要なのは、こうしたアメリカの2大政党制が日本の政治と無関係ではないことです。
日本の基本的な選挙制度である小選挙区制度(定数1)は、アメリカ的2大政党制を志向するために導入されたものです。それを推進したのが、小沢一郎現自由党党首(当時自民党幹事長)であったことは周知の事実です。
小選挙区制は日本の政治・政界に何をもたらしているでしょうか。
第1に、「第3政党」以下の「少数政党」は台頭の余地がなく、したがって「少数意見」、「少数政党」を支持する有権者の意思は政治から基本的に排除されています。
第2に、選挙は2大政党の争いになるため政党間で政治理念・政策を度外視した離合集散・数合わせが横行し、「政策・組織協定」抜きの「選挙共闘」がすすみます。
第3に、「政権交代」が自己目的化し、結果、仮に「政権交代」が起きても政治の基本的変化・転換はなく、政治不信・無関心を助長します。
以上の3点は、まさに今日(数十年来)の日本の政治・政界の縮図ではないでしょうか。
政治理念・政策抜きの「政権交代」がどんな結果をもたらしたかは、民主党政権の醜態が示した通りです。
「自民・公明」の与党に対し、立憲民主党をはじめ野党はとにかく「結束」だとして数合わせの「選挙共闘」を目指しています。
この流れに日本共産党も自らすすんで加わり、「政策・組織協定」なき「選挙共闘」をすすめています。その結果、日米安保条約(日米軍事同盟)、自衛隊(日本軍隊)、天皇制という政治・国家体制の根幹にかかわる問題で、共産党自身の政策を歪めています。
それはすなわち、日米安保(軍事同盟)・自衛隊・天皇制反対という「少数意見」を政治に反映させる政党が存在しないことを意味します。
こうした政治・政党の腐敗・退廃の根源が、2大政党制を志向する小選挙区制にほかなりません。
たとえ今は「少数意見」でも、それが真理であり人々の幸福につながるものであれば、やがて必ず「多数派」になります。それが歴史の進歩ではないでしょうか。
少数意見を抹殺する小選挙区制は廃止し、全国1区の比例代表制に転換すべきです。そして少数者の意見、少数政党の政策が反映する「政策・組織協定」に基づいた連立政権を目指すべきです。
それが、米中間選挙を反面教師として私たちがくみとるべき教訓ではないでしょうか。